戦争が廊下の奥に立ってゐた hometown_of 2018.03.02 3 7,799 0 標題は渡辺白泉の有名な俳句。思わずどきっとしてしまう。 薄暗い廊下を歩いていくとその先に突然か、あるいは仄暗い中から浮き上がるかのようにそれが見えてくる。見えてきたときにはもう後には戻れない。 渡辺白泉は昭和11年(1936年)、慶応大学を卒業する。二・二六事件が
なぜかよく聞く「息子のために雪かき」という話 hometown_of 2018.02.28 0 1,033 0 昼になっても雪が降り続け、何度も雪かきをして腰を痛めたという話を聞いて、とある山沿いの町の仮設住宅の雪かきを手伝った。 「今日一日で5回はやったな」自治会長さんは腰に手を当てながらそう言った。 だけど日が落ちてからも雪は降り続ける。駐車場の平面と駐車場から団
【振り返り・仮設住宅】7年という時のながさ hometown_of 2018.02.28 0 2,414 0 書いていいのか止めるべきか。でも書くことにした。 誰が7年という時間をあがなえるのか かれこれ3週間前のこと、陸前高田市でかつては二番目に大規模だった仮設住宅の集会所でお茶っこしていた時のこと。顔見知りの人たちばかりで、のんびりおしゃべりしていたのだが、珍しく
羅漢様さがしてあれば春にあひ(拙休) hometown_of 2018.02.28 1 794 0 あるいは除雪された雪の融け残り。あるいはありふれた道路の壁面から湧き出す氷のほとり。震災と何か関係があるのかどうかは分からない。それでもこの風土がつくりだしたとしか言いようのないホトケ様、ラカン様に出会うことが多いのだ。パッと目にしてハッとすることがしばし
墓標のように立つ境界標柱 hometown_of 2018.02.28 0 1,253 0 むかし、しばらく静岡県に住んでいたことがあった。伊豆半島の狩野川は、太平洋岸の川としては珍しく南から北に流れる川で、何より川から富士山を望めるというのが売りだった。 その狩野川の河川敷に「国土交通省」と記されたポールがこれでもかとばかりに建てられるようにな
誰かの臨終のまなざし hometown_of 2018.02.28 0 757 0 私の写真が下手クソな理由、あるいは言い訳 「おい、もう少しなんとかならんのかのう」 父の声が聞こえてくる。「よりにもよって、どげんして人に受けんような撮り方ばっかするじゃろうのう。わざとか。同じものを撮るにしたって、きっと他の人ならもちっとマシな撮り方をする
空家になった仮設住宅にも雪は降る hometown_of 2018.02.28 0 1,245 0 その日、集会室所として使われている26号室でイベントが行われている最中に、ドドドッと雪崩のような音がした。「やだねえ、どっかの家の屋根から雪が落ちたかね」そんな会話がほんの一瞬交わされた。 予想されたとおり屋根から雪が落ちたのは、26号からは通りを隔てた44号室
【振り返り・仮設住宅】間取り図(集会所・談話室) hometown_of 2018.02.26 0 7,395 0 引き続き、一般社団法人プレハブ建築協会のホームページの参考図面を引用しながら、応急仮設住宅の集会所・談話室について考える。 災害への取り組み一般社団法人プレハブ建築協会 集会所と談話室 集会所には図面のものの外にもいくつかのタイプがある。常駐スタッフがいる集
【振り返り・仮設住宅】間取り図(2DKタイプ) hometown_of 2018.02.26 1 19,710 0 「単身用 1DK」に続いて、一般社団法人プレハブ建築協会のホームページの参考図面を引用しながら、応急仮設住宅の暮らしについて紹介する。 災害への取り組み一般社団法人プレハブ建築協会 小家族用 2~3人用 2DK(約29.7㎡) 大雑把にいって1DKタイプは、6帖ほどのスペース2
【振り返り・仮設住宅】間取り図(1DKタイプ) hometown_of 2018.02.26 0 11,020 0 応急仮設住宅のことを書いているが、読んでくれる人のほとんどは仮設住宅を見たことがなかったり、中に入ったことがないだろうということに、今さらながら思い当たった。 仮設住宅の内部を撮った写真でもあればいいのだが、ストックした写真を引っくり返して探しても仮設の写
ネコヤナギは春を連れて hometown_of 2018.02.26 1 683 0 遠野のひな祭りに行くバス遠足の帰り道、トイレ休憩に立ち寄った道の駅で、そろそろ出発時間が迫る中、「やっぱり買って行こうか」とふたりのお母さんがネコヤナギを買ってきた。 ふわふわした産毛のようなネコヤナギの芽が、マイクロバスの車中を春めかした。 「わー、もう咲
【振り返り・仮設住宅】床下からまさか噴き上げる泉 hometown_of 2018.02.23 2 2,059 0 廃校となった小学校のグラウンドに建設された仮設住宅の床下から小川のようなものが流れ出ているのを知ったのは、昨年の雨上がりのある日のことだった。 住宅の方から側溝に向かってちょろちょろ流れる流れをたどると、仮設住宅の床下に、まるで泉が吹き出した跡のようなキレ
【振り返り・仮設住宅】木造仮設の憂鬱 hometown_of 2018.02.23 1 3,090 0 陸前高田市や大船渡市から約20kmにある住田町。この町は東日本大震災の直後、町独自の判断で仮設住宅の建設を決定した。 住田町は人口5000人規模の小さな自治体だが、林業に力を入れている町。沿岸部と内陸部をむすぶ街道筋の町として、陸前高田や大船渡との結びつきが深い町
【振り返り・仮設住宅】対応のバラツキと不公平感 hometown_of 2018.02.23 0 2,490 0 「もう少し早く来てればよかったのに」 サンマのつみれ汁とチャーハンの炊き出しの準備で、仮設住宅のお母さんたち5、6人と大量の野菜を刻みながらそんな話しになったのは、震災から9カ月ほど経過した2011年の初冬のこと。 女川の海辺から川沿いに数km遡ったところに、2つの仮
それでもさくら木を砕く hometown_of 2018.02.22 2 1,498 0 地元で桜並木として知られる川原で、ひとりの乱暴者が桜の枝を手斧で砕いている。これでもかこれでもかと、男は束にして積み上げられた桜の太い枝、細い枝を砕きながら、何やらしきりにつぶやいている。 久しぶりの晴天で、あらかたの雪はとけ、茶色い地面からは淡い緑色の芽
美味しいイチゴの食し方 hometown_of 2018.02.20 3 956 0 何度もおじゃましている仮設住宅の集会場で、お茶っこにイチゴが振る舞われた。野菜や果物が高騰している今日日、途方ももないプレゼントにみんなが目をまん丸くした。 しばらくの間、イチゴの名産地静岡県に暮らしていた経験があるわが身としては、美味しいイチゴをより美味
津波に襲われた高田病院と『津波てんでんこ』の山下文男 hometown_of 2018.02.18 2 2,599 0 2月16日に落成式を行った岩手県立高田病院の前庭に、ピンク色の御影石が設置されている。石に刻まれているのは「岩手県立高田病院」の文字。病院の前に病院名が記されてた表札があるのは何の不思議もないように思えるかもしれないが、これは表札ではない。表札であるなら外に
大船渡も大拍手! 羽生結弦の金、宇野昌磨の銀 hometown_of 2018.02.17 1 966 0 大船渡市盛町のショッピングセンターにイベント準備で行った。1時半からの予定だったが誰も作業を始めない。動こうとしない。 なぜなら、イベント会場となるエントランスホールに設置されたテレビに映っているのは、平昌五輪フィギュアスケート男子フリー。買い物に来た近所の
県立高田病院、復活へ hometown_of 2018.02.17 3 1,739 0 2018年2月16日・17日、新しく完成した岩手県立高田病院の見学会が行われた。 旧・高田病院は津波が直撃を受けた。『津波てんでんこ』で知られる山下文男もここで罹災。全身ずぶ濡れになりながらも救出された。しかし、高田松原の近くに位置していた旧・病院は、またたく間に4
この青い空から(2つの書評的なもの) hometown_of 2018.02.16 1 1,850 0 東京の私立大学を受けてきた受験生と話しをした。どうだった? と聞くと、まだ塾の情報サイトから世界史の正解しか出てないけど、70点はとれたとの返事。まぁまぁじゃんと返したら、正答をとれなかった問題のことを気にしている様子だった。 プトレマイオス朝の誰それで間違え
【振り返り・仮設住宅】解体される仮設住宅に見た厳しさ hometown_of 2018.02.09 4 5,981 0 震災からまる7年を迎えつつある今日、被災地では仮設住宅の集約や撤去が進んでいる。住民が退去した仮設住宅では、時をおかずに解体が進む。 この文章が仮設住宅について書いたものだという予備知識を抜きにして、下の写真を見て、この建築物がどのような用途のものだったか分
雪融けの下から出てきた言葉 hometown_of 2018.02.09 1 1,805 0 固い雪もやがては融ける 日本中が大寒波に襲われた先週から今週にかけて、東北の被災地にも大雪が積もった。住民が少なくなった仮設住宅では、高齢世帯が雪かきの主役として頑張らざるを得ず、たいへんな苦労があった。 それでも昨日・今日は比較的気温も高めで(といっても最
高い高い土の壁が消える hometown_of 2018.02.09 2 1,730 0 今年になってから久しぶりに一本松茶屋の駐車場に行って、何となく落ち着かない気分になった。 何かが変わった。 以前はこんな風じゃなかったような気がするのだが…。 変化に気づくのにしばらく時間を要した。カメラのファインダーを覗いてみて、ようやく何が変わったのかを了
釜石の復興のシンボルを築く hometown_of 2018.02.09 2 2,674 0 赤土の土手の切り欠きから見えた横断幕に記されていた言葉。それは—— 想いを一つに「釜石の復興のシンボル」を築く! 半年ほど前までは、ラグビーワールドカップという言葉はおろか、ラグビー競技場という施設名すら掲げられることのない、ややさみし気な造成工事現場だった場
震災遺構が正面に見える3カ所 hometown_of 2018.02.05 2 3,296 0 陸前高田のかさ上げされた仮設道路から海の方向を見ると、まっすぐな地平線にポコッと四角い建物が飛び出して見える。震災遺構としての保存が決まっているタピック45(旧・道の駅)の建物だった。 第一の場所 この場所は、1月末に付け替えが行われたばかりの国道340号線。市立