震災遺構が正面に見える3カ所

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陸前高田のかさ上げされた仮設道路から海の方向を見ると、まっすぐな地平線にポコッと四角い建物が飛び出して見える。震災遺構としての保存が決まっているタピック45(旧・道の駅)の建物だった。

第一の場所

この場所は、1月末に付け替えが行われたばかりの国道340号線。市立第一中学校の坂の下あたり。ここからタピックが正面に見えるとは、国道がかさ上げ部分に付け替えられるまで知らなかった。文末の地図では「1」の地点だ。

津波はこの写真の背後、国道が市役所の仮設庁舎がある丘へのぼっていく坂道の途中まで達した。かさ上げされて、まっすぐな地平線のように見える盛られた赤土とほぼ同じか、それより少し高いところまで津波は吞み込んだ。

つまり、赤土の地平線は、あの日の津波の水平線(おかしな表現だが)にだいたい合致する。ただし、それはかなり雑な言い方であることをお断りしなければならない。現実に起こった津波は、赤土の人工の地平線よりもさらに高かった。その、高さわずか1〜2メートルの違いの間で、命を失った人も多かったと考えられるからだ。逃げ切れずに最後に流された人たち。

盛り土された赤土の下には、かつての町がまるごと埋まっている。押し寄せた津波で破壊された町がまるごと、ということでもある。

タピック45は津波からの避難ビルとしても考慮して建設されたものだが、3.11では上部をわずかに残して水没した。建物の中は破壊された当初の姿をとどめている。

第二の場所

陸前高田では、かさ上げ工事の進展に合わせて、道路の付け替えが頻繁に繰り返されている。国道340号線から、新しい商業施設アバッセ方面に左折して仮設の市道を少し行くと、タピックが再び正面に見える。地図では「2」の地点。

この周辺は、昨年4月にオープンしたアバッセたかたを含む、新たな中心市街地なのだが、海側でも山側でもかさ上げと造成工事が進められているので、道路環境は悪い。奇跡の一本松周辺とは異なり、観光で訪れる人が歩く姿が見かけることなどほとんどない。

振り返った山側には、第一中学の仮設グラウンドがあって、砂埃の中でクラブ活動が行われていたりする。

かさ上げされたこの道路付近より海側では、大規模なかさ上げは行われず、復興記念公園などとして利用されることになっている。つまり、この道路沿線と海側との間には、東西方向に帯状に広がる急な傾斜地と高低差の大きな坂道が造られることになる。

逆に考えると、この道路沿いより山側は、商業施設や住宅などが再建される「生活の場」となるということだ。本設道路が完成すれば、この道は南幹線と呼ばれるらしい。南幹線に沿った海側にも宅地や商店は建てられるだろうが、この幹線沿線が生活の場とそうではないエリアを分ける境界ということになる。

第三の場所

道路が付け替えになって、改めて地図で確認してみたが、タピックを正面から望める場所は、上記の2カ所とタピック前の3カ所だけだった。その他のエリアは工事で一般の立ち入りができないからだ。

地図の「3」はタピックの建物前。海沿いに走る国道45号線でも、かさ上げ工事が行われているため、震災遺構であるタピックの敷地には現在立ち入りできない。この場所でのかさ上げは、地震による地盤沈下分を補うだけの0.5~1メートル程度のものに過ぎない。

ガードマンが「入っていいのはここまでだけですよ」というギリギリの縁石付近から、久しぶりにタピックの建物を見上げる。ビルの上部には、津波到達点の赤い印がはっきりと見える。津波当日には、この建物に上って3人が命を救われたという。

タピックを正面から望める「1」と「2」の写真をもう一度よく見てほしい。

そして確かめてほしい。津波到達点の印があるあたりが、かさ上げされた地平線から見えるかどうかを。

まとめ

かさ上げ工事にともなう道路の付け替えで、これまで見えなかった景色が見えるようになった。

第一中学校下の仮設国道からはるかに望めるようになった、海岸沿いの旧・道の駅タピック45は、津波がいかに広範囲に町を破壊したかを示している。

しかし、工事があまりにも広範囲かつ大規模であるため、被災後の陸前高田のランドマークのひとつとも言えるタピックを正面から望める場所は3カ所に過ぎない。

きわめて大雑把な見方を許してもらえるなら、盛り土によって人工的に造られた「地平線」は、3.11の津波の高さにほぼ匹敵する。

しかし、かさ上げ造成地からは、タピックの建物がよく見える。津波到達点を示す印までが見える。

陸前高田市の高田町沿岸部には、海の様子が見えなくなるほどの巨大な防潮堤が築かれ、内陸部にはきわめて大規模なかさ上げ造成が行われているが、いずれもその標高は2011年3月11日の津波高さよりも若干低い。同じ規模の津波に襲われた場合、かさ上げして造られた新しい市街地が、少なくとも浸水するのは間違いない。

付け加えると、海近くのランドマーク、さらに津波到達高さを示す指標ともなっている建物がまるごと見渡せることに不安を抱いている住民は少なくない。

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