引き続き、一般社団法人プレハブ建築協会のホームページの参考図面を引用しながら、応急仮設住宅の集会所・談話室について考える。
集会所と談話室
集会所には図面のものの外にもいくつかのタイプがある。常駐スタッフがいる集会所には、事務所や和室と記されたスペースがあるが、常駐スタッフのいないところでは、事務所兼相談室の場所にやや広めのキッチンがあったり、倉庫になっていたりする。中にはお風呂付きの集会所もあった(あまり使われなかったようで、私が知っているところでは倉庫代わりになっていた)。談話室はやや規模の小さな集会所と考えていい。
前述のとおり、仮設住宅の一戸一戸は、お客さんを招くだけの広さが確保されていない。また、暑いから寒いからといってエアコンをフル稼働させてもいられない。だからこそ、集会所や談話室は貴重な空間だった。
自分の部屋に人を呼ぶことは難しくても、集会所や談話室なら集まっておしゃべりしたりお茶したりできる。震災前に住んでいた地域が異なっていても、ここで集まっているうちに新しいコミュニティーが育っていく。空調にかかる費用もあまり心配しなくていい。
ハードとしてはいいのだが
だから、集会所や談話室の存在はありがたい。ハードとしては、住民が集まれるだけの広さと空調設備、そして備品があればそれでいいと思う。問題はハードではなくソフトに関することだった。
集まれる機会が少ない。集まるにしても同じメンバーに偏ってしまう。イベントが多ければ多いで管理の問題が出てくる。
大船渡市のようにNPO団体に業務委託して、集会所に常駐スタッフを配していた自治体は先見の明があったと言うべきだ。集会所に行きさえすれば誰かがいる。おしゃべりの相手になってくれる。お茶っこもできる。集まろうと思えばいつでも集まれる。
しかし、集まるのがいつも同じメンバーという問題はそうはいかない。必ずしも大きな団地でなくても、どうしても仲良しグループのようなものができてしまう。「あの人がいるからイヤだ」という人も出てくる。お茶会、健康相談、料理の会、手芸の会など集会所のイベントメニューは多々あるが、男性が参加しやすいイベントは少ない。男性の参加を促すにしても、派閥的なグループを越えた集まりを実現する上でも、メニューの多彩さとイベントの開催頻度が重要になる。
イベントの半分くらいは、大学生やボランティア団体など外部からやってくる。外部の人たちとのつながりが多いか少ないかで、集会所の活気が変わってしまう。詰まるところ、集会所が機能しているかどうかは、最終的には自治会のありよう、もっと言うなら自治会長がどんな人かによるところが大きい。
ある仮設団地の集会所は、自治会長が代わったとたん、イベントの回数が激減した。会長職を長期間つとめていた人が退任して、勤めに出ている人に交代したからだ。日中、自治会長宅を訪ねてもほぼ留守だ。仕事が忙しくて集会所のイベントまで手が回らなくなったということらしい。
陸前高田市で仮設住宅の集約場所に予定されている滝の里仮設団地は、高台の工業団地の一角にある。造成工事が遅れている地域の住民が多く暮らしている。イベントには日中在宅している人の多くが参加する。高台にあるから雪も降る。風も冷たいが集会所の雰囲気はぽかぽかだ。その滝の里団地の集会所の入口には、ほぼ毎日がイベント予定で埋められたカレンダーが貼り出されている。自治会長さんは毎朝、小学生たちを坂の下まで送っていく。雪の日には雪かきしながら送っていく。
イベントのチラシを届けると、自治会長はチラシをポストに入れるのではなく、一軒一軒声をかけて回るのだそうだ。「これが務めですから」と。
そういう人がいるからこそ、集会所のカレンダーがイベントで埋まる。そういう人がいなければ集会所は活性化しない。しかし、見過ごしてはならないのは、滝の里団地に限らず、運営に力を注ぐ自治会長さんの多くは高齢であるということだ。(おそらく後期高齢者もいる)
年金と市からわずかな手当だけで自治会長の仕事を十全に行えるのは、仕事をリタイヤしているからに他ならない。勤め人ではとてもこうはいかない。しかし、それだからこそ、自治会運営の責任と負担が高齢者にかかってしまうという現実がある。
集会所や談話室は仮設住宅にあって貴重な施設、将来に向けてのコミュニティーづくりを進める上でも欠かせない施設だ。そんな場所がいつも施錠されているようではもったいない。しかし、集会所や談話室のドアを解錠するために、日々どんな務めがなされているのかは、あまりにも知られていない。
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