【振り返り・仮設住宅】木造仮設の憂鬱

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陸前高田市や大船渡市から約20kmにある住田町。この町は東日本大震災の直後、町独自の判断で仮設住宅の建設を決定した。

2016年に移築のために解体された仮設住宅
2016年に移築のために解体された仮設住宅

住田町は人口5000人規模の小さな自治体だが、林業に力を入れている町。沿岸部と内陸部をむすぶ街道筋の町として、陸前高田や大船渡との結びつきが深い町である。

住田町の仮設住宅建設計画は震災以前にさかのぼる。町の資源である林業を活かそうと、間伐材などを利用した木造プレハブで分解可能な仮設住宅を開発、全国に向けて売り込みを行おうとしていた矢先の震災だった。

スチール製の仮設住宅が大半である中、木造住宅の人気は高く、被災地から遠いロケーションながら全ての棟が埋まったという。

たしかに木のぬくもりが感じられる住宅は快適そうに思える。しかし、住民は「住んでみなければ分からないことがある」とも言う。そのひとつが結露である。

木には素材そのものに湿度を調整する効果があるから、結露は発生しにくいと思われがちだが、構造的な問題によるものか、あるいは土地や基礎の問題なのか、住田町の木製仮設住宅は湿度が高い。夏でも冬でも高い。書類や本などは湿気を吸ってふにゃふにゃになり、衣類にも壁面や天井にもカビが生えるという。

木造=快適というイメージから、沿岸部の観光施設に移設する2棟の解体を手伝ったことがあるが、壁材を剥がすと黒いカビが一面に生えていた。よく見ると白いカビもある。

床下の基礎部分は、とくに腐食が進んでいる。移築する建物は、新たにコンクリート基礎を打つことにしたと、譲り受けた人は話していた。

2017年に解体された別の棟の基礎部分
2017年に解体された別の棟の基礎部分

住田町の木造仮設は、被災した近隣自治体の人たちのために、県や国からの要請を待たずに町独自に建設したもの。つまり、元々の地域のつながり、助け合いを象徴するものだ。だから、批判的なことは言いにくい。しかし、予想をはるかに超えて7年もの間使っていると、木造だからこそのデメリットが生じてしまうのも事実。その現実は認識しておく必要がある。

外見はログハウスを思わせるもので、たしかに住みたくなる。しかし、住民が言うように「住んでみなければ分からないこと」はあるのだ。

人気の木造仮設の解体現場で、イメージだけからは判断できない問題があることを知った。

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