のつづき。
便の透明感には自信をもって病院へ出かけたが、看護師さんには「次にトイレに行ったらナースコールで呼んでください。色を見ますので」と言われた。持参した写真だけでOKをもらえるほどわたしの便は信用されていないのだ。
とはいえすぐに便は出ないので椅子に座っていると、大きな病院でちょいちょい出くわす光景が目の前にあった。「威張るじじい」だ。
看護師さんに向かって「受付の態度が悪い」とゴネていたのが1人。あと、付き添いのばあさんに受付も説明受けるのも支払いも全部まかせっきりで自分は何もできないクセに「いつまで待たせるんだ」「杖もってろ」「ハンカチはどこだ」「昨日の息子の態度は何だ」などと威張り散らす「じじいあるある」なじじいが2人。死ねばいいのに。
なんて決して思わない(こともない)が「自分は絶対にああならない」というのも思いあがりだ。
わが家はパワーバランス的にわたしが威張りようがないわけだが「おかしなことを言いだすじじい」にならないという保証はどこにもない。せめて「ああはなりたくない」というイメトレだけはしておいた。
用便チェック願います
ようやく便意がやってきたのでトイレへ。
個室に入り、尻応えのない水様便をシャーっと出して、さてウォシュレットで尻を…いや待てよ、看護師さんに便の色をチェックしてもらうんだから、ウォシュレットの水で薄まってはいけない。てことは尻が洗えない。
しょうがないから直にトイレットペーパーで拭いた。あ!でもこの紙を流せないんだ、どうしよう…軽くパニックになったわたしは尻を拭った紙を右手に握りしめたままパンツとズボンを履いてナースコールを押した。
看護師さんがすぐ来て「はい、透明ですね大丈夫ですね」とOKをくれたので、やっと紙を投げ入れて流せた。なにはともあれ便を目視で褒められる日が来るとは思わなかった。
穴あきー・イン・ザ・U(N)K
もともと予約の順番が後ろの方だったらしく、そのあともかなり長い間待っていた。
ようやく呼ばれて着替え。うわさに聞いた「穴あきパンツ」を渡された。
これは紙なのか、とにかくペラペラだから「こんなもん履いてもしょうがねえ」と思ったが「ノーパンでガウン」というのもスリルがありすぎる。今日のところは穴あきパンツを履いてあげて検査用のガウンを羽織り、点滴を装着。再び廊下で待つ。
「すみません、前の人の検査が長引いているみたいなんでもう少し待ってくださいね」
「大腸の内視鏡検査が長引く」って、現場で何が起きてんだよ…ああ大腸がよっぽど長いんだな、そういえば「大腸長い顔」だったわあのじいさん。なんて不安をごまかしながら時間を潰す。平日の午後に何もすることがないのはとても苦痛だ。
ところで、点滴をしたまま自力で移動というのが生まれて初めてなのでうまくいかない。トイレはさらに難しい。
どっちの手をどの順番でどう動かせばチューブが絡まず、針の角度に影響なくパンツをおろせるかいろいろ試した結果、自分の頭の悪さを思い知った。
恥ずかしいぐらいバカだったので、せいぜい慎重に、丁寧に、最後の一滴まで排泄した。
時は来た。それだけだ。
そんな状態のまま、なんとさらに1時間待ってようやく順番が回ってきた。
担当医師に自己紹介を受けると、看護師さんの「はい、眠くなる薬を入れまーす」の声。そこから、胃の内視鏡検査を受ける時に必ずやっている「何秒まで数えられるか」をカウントし始めた。
例によって何秒までいったか全く覚えていないまま眠りにつき、やがてぼんやりと目が覚めた。と同時に、ある感覚に襲われた。
(つづく)
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