前にもご紹介したように、自閉症は生まれつきの脳障害で、独特の感覚を持っています。普通の人ならなんでもないことでも、自閉っ子にはとても不快に感じることがあったりして、みんなと同じことができない場面がたくさんあります。
そのひとつが「髪の毛を切ること」。これもけっこう大変なんです。
わが家のこれまで
「髪の毛を触られるのがイヤ」「そもそも人に触られるのがイヤ」「ハサミの音が怖い」「バリカンの音が怖い」「じっとしているのが苦手」
どれも「自閉っ子あるある」的なよくあるパターンです。そこを無理やり散髪しようものならパニックになるのは確実。バリカンやハサミが顔の近くにある状態で突然暴れ出したりしたら大ケガをしてしまうでしょう。
うちの娘の場合、髪をとかすぐらいは大丈夫ですが、髪の一部をつまんだり、頭や髪に何らかの感触が続くことがダメ。髪の毛を結ぶことも帽子をかぶることも絶対にさせてくれません(おでこや耳を出すと超絶かわいいのに…)。
ただし「髪の一部をつまむ」ことに関しては数秒なら大丈夫なので、ママがお風呂の時に髪の毛を一部つまんでは「今だ!(チョキン!)」と勢いで切ってしまいます。
娘はハサミを怖がって動きが一瞬かたまります。だから今だ!(チョキン!)の数秒を何回も積み重ねることで、なんとか「おかっぱ」が仕上がります。
もちろんママはシロウト。それに娘がどうしても動いてしまったり途中で怒り出したりすることもあるので、平成30年の世の中を「すっごく昭和前半な髪形」で過ごしている日々もたくさんあります。顔立ちも昭和なのでわたしたち両親は「一生おかっぱでいいよね」と言ってます。
美容院に挑戦する理由
しかし、自閉っ子の散髪という作業はとても緊張を伴うため、ママにとって決して楽しいだけの時間ではありません。
それに、誰かのサポートなしでは生きてゆけない娘の面倒をわたしたち両親が見られる年月は限られています。いつかは「ママ以外の人にも髪を切らしてくれるように」なってもらわないと困ります。
そこで今回、思い切って「美容院に初挑戦」してみることにしました!
障害者支援施設へ出張散髪に行ったり、障害者OKをはっきり謳っている理容師さん・美容師さんも探せば見つかります。でもママが選んだのは「ママが切ってもらっている美容師さん」です。
美容院はわが家の真ん前。しかも美容師さんはママの妹の同級生で、わが家にも遊びに来たことがあります。娘がこの美容師さんを覚えていないとしても、娘は人を判断する時「わたしたち両親がその人とリラックスして話しているかどうか」みたいなところを感じ取っているようなので、その点はバッチリ。
そこでママからダメ元でお願いしてみたところ「障害児さんのカット、やってみたいです!」と言ってくれたのです。
新しい場所を警戒する娘
娘は奇声を発しますし、イスに座っていられません。それに何がきっかけでパニックになってしまうかもわかりません。なのでまず一度「店に入るだけ」を目的におじゃましたのが数週間前。
そして今回が2回目の訪問です。あわよくばカットまでこぎつけたいので、迷惑がかからないよう、他のお客さんがいない時間を打ち合わせてから入店しました。
最初は店に入りたがりませんでした。しかしここで無理はせず、入り口ドアを開けて放っておきます。ドアの外はちょっとしたバルコニースペースとエレベーター。娘が外に飛び出す心配はありません。ここも大きなポイントです。
しばらくはバルコニーを叩いたりなめたり(^-^;していたものの、やがてすることがなくなった娘はようやく店に入ってきました。まずはカウンターの上にある料金トレーを指でコンコンやったり、待合のソファーに乗ってみたり。
そこでママがさらに奥へ。美容院のイスに座ってくるくるまわり「ホラァ~くるくる!た~のし~いよ~♪」とアピールしますが、娘は誘いに乗ってきません。
そのあとわたしもイスに乗って誘ってみましたが、娘はワンステップ高くなっているイスのあるフロアまで上がってこようとしません。なんとなく「いやな予感」がしているようです(笑)。
斬新な「スタンド散髪」♪
そんなこんなで15分ほど。そこで美容師さんが決断します。
「立ったままカットしちゃいましょうか!」
まあ考えてみれば仮に娘がイスに座ったとしても10秒と持たないでしょう。しかもそこでケープをかぶせられたり、髪の毛を触られたりしたら即座に脱走を試みようとするのは確実です。
ということで娘はそのまま店の中をうろうろさせ、両腕だけはわたしがやんわりとつかまえます。そして動きが少ないタイミングで美容師さんが近づき、櫛で髪をサラリ!ハサミでチョキン!
美容師さんにとってもすごく新鮮な経験のようで(当たり前ですね)、見事なフットワークで動きを合わせながら「いいの?切るよ!ああ!切るよ!ああいいね!」なんていう感じでワタワタしながらも楽しそうに切ってくれています。
ハサミを持っていても安心感が違う
わたしたちシロウトは普段ハサミを持つことはありませんから、うっかりすると「ハサミと顔との距離感を誤る」ことでケガをさせてしまう可能性があります。でもプロである美容師さんにとっては櫛もハサミも「手の延長」。ハタから見ていてまったく怖さを感じません。すごく安心。しかも速い。しかも上手!
ママ以外の人に髪を切られるのは初めてのことなので娘は「む~わ~!」と文句を言っていますが、やっぱりハサミの気配を感じると動きが一瞬止まります。美容師さんがハサミを動かす時間はママの時と同じ一瞬一瞬の積み重ねでも、とても速くきれいに髪が整います。さすがです。
アフターフォロー付き(^-^)
時間にして10分も経っていないでしょう。あれだけの少ない手数でちゃんと形が整うのはやっぱりプロ。これなら娘がもうほんのちょっと慣れてくれるだけでもかなりかわいい髪形にしてもらえそうです。
カットが終わると娘はすぐにでも外へ出たそうにしていましたが、「悪いイメージのままこの店を出ないように」ということで、娘が怒りださない限りはしばらく店にいて、機嫌がよくなってから出ようということにしました。
アシスタントの美容師さんが気を利かせて有線放送を「みんなのうた」のチャンネルにしてくれたところ、たまたま娘の好きな曲がかかるというミラクルが!
娘は「あ、知ってる!」という感じで止まったあと、なぜかその歌とはまた別のみんなのうたを歌い出し、ニコニコ楽しそうにしています。
そして娘の機嫌がすっかり良くなったところで店を出ることに。美容師さんとハイタッチをして目の前のわが家へ戻りました。
そしてご飯をモリモリ食べて、お風呂になが~く入って、ごほうびのアイスを食べてすべて完了。美容院初挑戦は上出来でした。
といっても次回どうなるかはわからないのがウチの娘ですが、時間をかけてゆっくり慣れていけばそれでいいと思います。
いつか映画「レオン」に出てくるマチルダ(ナタリー・ポートマン)みたいにしたいなあ(#^^#)
最終更新:
cha_chan
髪を切る前、髪を切っている時、髪を切った後と表情がコロコロと変わっていて可愛いですね!手が不器用な自分にとって美容師さんのハサミ捌きは、いつもカッコいいなぁと思っています。レオン、自分が大好きな映画です。マチルダカット、似合いそうですね!
pamapama
言葉は話せなくてもほんとうにいろんな顔をするので見ていて飽きないです(*^^*)マチルダでは理想が高すぎますが、ときどき「不良」なのは似ています(;^^)
baikinman
大人の都合を優先して、ついつい無理矢理やらせてしまうこともありますが、もう少し子どもの気持ちを大切にして、言い分も聞かないといけないと、記事を読んで大いに反省しました。
pamapama
ウチの娘は言葉が話せないのでわたしたち両親が表情を読むしかないのですが、「まったく原因(理由)がわからない」ことも多いので苦労します。「バケラッタ」しか言わないO次郎の感情がぜんぶわかるオバケのQちゃんを目指します(*^^*)
akaheru
投稿拝見させていただきました!どんどん慣れていって、「あの美容院に行くとかわいくしてくれる!」というイメージをお子さんが持ってくれればいいですね。
なお、レオンの主人公の女の子の髪型・・・すごく似合いそうです。
pamapama
とりあえず美容院のバルコニー手すりの感触は気に入ったようなので、入り口前まで行くのは問題ないと思います(*^^*)あとは一度「美容師さんの本気のおかっぱ」を見てみたいですね!
jina
なんか、読んでてほっこりします。カットにチャレンジされたご両親も美容師さんも、みんながひとつのチームのようにゴールを目指すというか、ただ髪を切るだけを目的としてなくてその先を見てる、その思いがひとつになって最後のみんなのうたの奇跡が起きたのだと思います。ハイタッチでお店を出れてよかった!
pamapama
いやー実際楽しかったです!「(できたのに)元に戻っちゃった」ということもよくあるのですが、気長に楽しみながら頑張ります。たとえ「適当なおかっぱ」になっても味があってかわいいので(*^^*)