AED、高い設置率、低い使用率 ~AEDの使用手順について~

sKenji

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AEDは「Automated External Defibrillator」の略で、日本語に訳すと「自動体外式除細動器」と言います。異常な動きをしている心臓を、正常に戻すための機器です。以前は医師だけが使用を許されていたのですが、2004年7月に一般の人が使うことも認められました。許可されてから約10年が経ち、AEDの設置数は増えましたが、使用率は低いことが、NHKなどの世論調査でわかりました。下記、NHKが報じたAEDに関する世論調査などのニュースです。

心臓発作を起こした人に電気ショックを与えて心臓の動きを正常に戻す医療機器「AED」が一般の人でも使えるようになってことしで10年になりますが、利用が広がっていないことから、医師や救命士などのグループがAEDを積極的に使うよう呼びかけるプロジェクトを発足させました。
(中略)
心筋梗塞などの心臓発作が原因で亡くなる人は年間に7万人を超えていますが、近くにAEDがあるのに使われずに死亡するケースも起きています。
NHKとこのプロジェクトが共同で行った世論調査でも、AEDを使うことができると答えた人は3人に1人にとどまり、AEDを使えない理由については「使い方が分からない」が53%、「使うべき状態か分からない」が22%などとなっています。
(中略)
プロジェクトの実行委員長を務める三田村秀雄医師は「一般の人がAEDを使えば4割の方が助かることが分かっているので、人が目の前で倒れたらすぐに動いてもらえるようさまざまな角度から啓発していきたい」と話しています。

AED 積極的な使用呼びかけへ NHKニュース

 減らせ突然死 AED プロジェクト
aed-project.jp  

AEDの使用について

「AEDの使用はとても簡単で、音声メッセージで使用方法を説明してくれるので、使ったことがない方でも使用できます。使用をためらわないでください。」

以前、近所の消防本部で「上級救命講習」を受講した際に、消防士の方に言われた言葉です。

AEDを難しいものだと思われる方もいるかもしれません。しかし、AEDは使ったことがない人でも、使用できるように作られています。

以前、応急手当について書いたぽたるページで、AEDについても少し触れたのですが、今回、消防庁WEBサイトにある、AEDの使用方法が記載された資料に、わたしが上級救命講習を受講した際に、教えてもらったことを補足説明する形で、AEDの使用手順について、書きたいと思います。

 【ぽたるページ】救命講習受講レポート ~前編・応急手当~ - By sKenji - ぽたる
potaru.com

AEDの使用手順

---------------------------------------------------1.AEDの準備
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1.AEDの準備(出典元:総務省消防庁WEBサイト)
1.AEDの準備(出典元:総務省消防庁WEBサイト)

まずはAEDを確保する必要があります。

AEDの確保は、心肺蘇生実施者以外の人が行います。1人しかいない場合は、AEDを探すことよりも、基本、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を優先すべきと言われています。

公共スペースなどにあるAEDは、次のような標識で、設置を示している場合もあります。AEDの設置場所について、検索できるWEBサイトがあるので、職場や自宅付近のAED設置場所を事前に調べておくといいかと思います。

AEDの標識。基本的な標識です。他にもいくつか種類があります。(出典元:岡山県高梁市WEBサイト)
AEDの標識。基本的な標識です。他にもいくつか種類があります。(出典元:岡山県高梁市WEBサイト)
実際に設置されているAEDです。
実際に設置されているAEDです。

www.city.inagi.tokyo.jp

 AED設置場所検索
www.qqzaidan.jp  

---------------------------------------------------2.電源を入れる
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2.電源を入れる(出典元:総務省消防庁WEBサイト)
2.電源を入れる(出典元:総務省消防庁WEBサイト)

AEDの電源を入れて使用するタイミングですが、AEDが届き次第、速やかに使用します。

---------------------------------------------------3.電極パッドを貼る
---------------------------------------------------AEDの箱を開け、電源を入れた後は、AEDの中に、電気ショックなどを与えるための電極パッドが2枚入っていますので、それを傷病者の身体に貼ります。

3.電極パッドを貼る(出典元:総務省消防庁WEBサイト)
3.電極パッドを貼る(出典元:総務省消防庁WEBサイト)

AEDを使用する場合でも、胸骨圧迫は休むことなく続けます。電極パッドを貼り付ける際に、やむなく中断する場合は、素早く貼るようにします。人工呼吸を行っている間に付けることを、講習ではすすめていました。

ちなみに、電極パッドの粘着力は非常に強力です。2枚同時には剥がすとお互いがくっついてしまう可能性もあるので、一枚づつ剥がして、貼っていった方がいいです。

消防庁の資料では、電極パッドの貼る位置を「脇の5~8cm下」と細かく指定していますが、貼る場所に迷って時間がかかるくらいならば、だいたいの位置で構わないので、できるけ素早く貼った方がよいとのことでした。

2枚の電極パッドの間に心臓があればよく、「胸と背中」や「両脇腹」に貼ってもいいそうです。

メーカーによっては、それぞれの電極パッドに貼る位置が書かれているものもありますが、仮に間違って、右前胸部と左側胸部の電極パッドを逆に貼っても問題はありません。剥がさずにそのまま続けます。

■補足事項
・小児用の電極パッドが入っていない場合、小児にも、大人用の電極パッドを
 使用します。小児かどうか不明な場合は、大人用の電極パッドを使用します。
 小児とは、小学校入学前の子供を指します。
・電極パッドを張る部位が濡れていたら、水分をふき取ります。
・ペースメーカーが埋め込まれている場合は、ペースメーカーを避けて貼ります。
 ペースメーカー使用している方は、左右の鎖骨近くが盛り上がっているので、
 わかるそうです。
・ほとんどのAEDには、衣服を取り除くためのハサミと体毛処理用のカミソリが
 入っているので、必要に応じて使用します。

---------------------------------------------------4.電気ショックの要否を診断
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4.電気ショックの要否を診断(出典元:総務省消防庁WEBサイト)
4.電気ショックの要否を診断(出典元:総務省消防庁WEBサイト)

電極パッドは、電気ショックを与えるためだけにあるのではなく、心電図をとるためにもあります。

AEDは、電気ショックを行う前に、まず心電図をとり、電気ショックが必要かどうかを診断してくれます。

心電図を取り始める際には、音声メッセージが流れるので、指示があったら速やかに、全員、傷病者から離れて、傷病者の身体にふれないようにします。

仮に傷病者に触れていた場合、AEDはそのことを感知して、「傷病者に触れているので離れてください」といった旨の音声メッセージを流した後、再び、心電図をとり始めます。

このように、電気ショックが必要か否は、AEDが心電図を元に判断してくれるので、迷わずAEDを使用するべきです。

---------------------------------------------------5.電気ショックの実施
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5.電気ショック(出典元:総務省消防庁WEBサイト)
5.電気ショック(出典元:総務省消防庁WEBサイト)

電気ショックが必要な場合は、音声メッセージが流れます。全員、傷病者から離れていることを確認してから、電気ショックボタンを押します。

仮に、傷病者に触れた状態で電気ショックをかけると、触れていた人間の心臓が停止する恐れがあります。必ず、誰も傷病者に触れていないことを確認してから、電気ショックボタンを押します。

電気ショックの必要がない場合は、その旨を伝える音声メッセージが流れます。ただし、「心臓が動いているとは限らない」ので、胸骨圧迫は再開します。
なぜ、心臓が動いているとは限らないかについては、次項の「AEDについて」に記載します。

---------------------------------------------------6.電気ショック実施後
---------------------------------------------------電気ショックを行った後は、胸骨圧迫の再開を促すなどの音声メッセージが流れるので、それに従います。

状況によって、上記、1.~5.の手順を繰り返すことになりますが、すべてはAEDが音声メッセージで指示してくれます。

電極パッドは、電気ショックの有無や終了を問わず、救急隊に傷病者を引き渡すまで、つけっぱなしにしておきます。

AEDについて

AEDについて、上級救命講習で聞いた話をご紹介します。

AEDは、停止した心臓(心停止)を再び動かすための機器だと思われがちですが、正確には心臓を止めるためのものだそうです。

心停止とは、心臓が完全に停止した状態だけのことを言うのではなく、異常な動きにより、心臓が血液を十分に送り出すことができなくなった状態のことを言います。心停止の多くは、完全に心臓が停止しているのではなく、心室細動など、心臓が異常な動きをしている場合が多いそうです。

心臓は、電気ショックなどでその動きをいったん止められても、自然と再び動き出します。この時、異常な動きをしていた心臓が、正常な動きに戻ることがあるそうです。

この心臓の性質を利用して、電気ショックをかけて、心臓をいったん止め、正常な動きに戻すのがAEDです。

そのため、心臓が完全に停止している場合などは、AEDを使用しても効果がないので、AEDは電気ショックを行いません。

AEDが心電図を解析して、電気ショックの必要がない旨の指示をだしても、胸骨圧迫を続ける必要があるのはそのためです。

ためらわず、迷わず、素早いAEDの使用を

日本は、人口当たりのAED設置台数が、世界でもトップクラスのAED大国だそうです。それにもかかわらず、AEDを十分に活用できていないケースが多いようです。
冒頭部分で紹介した記事にも書かれているように、AEDの使用により、心停止した人のうち、約4割の方が助かるそうです。

AEDは、音声メッセージにより、するべきことを全て指示してくれます。大変わかり易いので、ためらわず、迷わずAEDを使用してください。

世論調査によると、「(AEDを)使うべき状態かわからない」という理由で、使用をためらっている方も多いようです。電気ショックをするかしないかは「AEDが判断してくれます」。心配はいりません。まずはAEDの箱を開けてみてください。

それでも、不安だという方もいるかもしれません。そのような方は、消防本部や赤十字などで、実機を使ったAED講習が開催されているので、受講されると自信を持って、AEDを使用できると思いますよ。

参考WEBサイト

 救命処置:消防庁公式WEBサイト
www.fdma.go.jp  
 AEDの使い方|AEDの基本情報|AEDライフ
www.aed-life.com  

Text:sKenji

最終更新:

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  • S

    saburouta

    長嶋茂雄さんのモノマネで知られるプリティ長嶋さんは、息子の少年野球を応援中に相手チームの子どもが打球を胸に受け心臓発作を起こし死亡してしまったことを目の当たりにしたそうです。『AEDがあったら助かったかもしれない』という思いからAEDを普及させるために千葉県市川市の議員になったそうです。AEDは知っているけど設置してある場所がわからない、使い方がわからないという人がほとんどだと思います。もっともっと普及されて当たり前のようにどこにでもあり、当たり前のように誰でも使うことができる世の中になるのが理想ではないでしょうか。助けられる命がもっと増えるはずです。

    • S

      sKenji

      プリティ長島さん、そのような話があったのですね。教えていただきありがとうございます。
      目の前で人が命を失いかけているのに、自分が何もできないでいるのは、たまらないものがありました。見知らぬ人でもそう思うのに、もし目の前で、家族や友人など知っている人の助かる命を助けることができなかったならば、本当に一生悔やむことになるかと思います。

    • O

      onagawa986

      私が働く職場にも2か月前に設置されました。AED講習を何名かで受講する予定です。AEDが収められている箱を開けるとブザーが鳴るようになっているらしく(盗難防止の意味もあるそう)今は触らないように遠くから怖々眺めていますが、この記事のおかげで何者か正体がハッキリしました!今は早く講習に行きたい気持ちです!

      • S

        sKenji

        コメントありがとうござます!
        私も救命講習を受講するまで、AEDは電気ショックをかけるものという程度しか知識がなく、箱を開けるのに抵抗を感じていました。受講のおかげで、今は以前とは異なり、AEDが身近に感じるようになっています。

        • S

          sKenji

          実際に使ってみると、AEDって、使い勝手などうまくできてるなあって感心しました。
          AEDの使用方法や、簡単な救命処置を高校の必修科目にするなど、もっと多くの人の身近なものになるといいのにと思ってしまいます。