初めての日本アルプス
山にはそれぞれの魅力があり、優劣をつけることはできない。しかし、そうは言ってもやはり個人の好みというものはある。登山者に一番人気があるのは、おそらく日本アルプスだろう。
日本アルプスは、富山、岐阜、長野、新潟4県にまたがる飛騨山脈の北アルプス、長野県にある木曽山脈の中央アルプス、長野、山梨、静岡3県にまたがる赤石山脈の南アルプスの総称である。
山登りを始めると、遅かれ早かれ日本アルプスを登りたくなってくる。標高が高いために、最初は敷居の高さを感じてしまうかもしれないが、日本アルプスの難易度は千差万別であり、比較的容易に登れる山もある。
標高の低い山をいくつか登り、初めて日本アルプスに登ってみたいと思っている方におすすめの山が、仙丈ケ岳(せんじょうがたけ)だ。
仙丈ケ岳について
仙丈ケ岳は、長野県と山梨県にまたがる南アルプスを代表する山だ。標高は3,033m。その女性的な山容から「南アルプスの女王」とも言われている。
氷河に削られてできた「カール(※)」と呼ばれる地形が特徴的な山で、高山植物も多く「花の百名山」にも名を連ねている。
3,000m峰でありながら、北沢峠から日帰りで登って降りてくることができる。途中、危険な個所も無いために、初心者も登ることができる山と言われている。比較的容易に登ることができるにも関わらず、カールや高山植物など、アルプス特有の景観を十分に満喫できる。日本百名山の著書である深田久弥は、仙丈ケ岳について次のように述べている。
日本アルプスで好きな山は北では鹿島槍、南では仙丈である。何よりもその姿がよい。単純なピラミッドでもなければ鈍重な容量でもない。その姿に軽薄や遅鈍のないところが好きなのである。スッキリとして品がある。
深田久弥著:日本百名山
かの深田久弥に、南アルプスで一番好きな山と言わしめた、仙丈ケ岳。日本アルプスデビューにはうってつけの山である。
(※)カール:氷河期時の氷河によって削り取られて地形のこと。スプーンでえぐり取ったような地形。
登山コースについて
一般的な登山口は、北沢峠となる。人里から遠く離れた奥深い山であり、昔は、登山口までのアクセスが大変だったそうだが、今は北沢峠まで林道が通じており、日帰りでの登山が十分に可能となっている。
ただし、北沢峠はマイカー規制があるため、登山者は芦安(650台)、奈良田(100台)の無料駐車場に駐車し、路線バスまたはタクシーに乗り換える必要がある。
メインルートは、北沢峠から大滝ノ頭経由の尾根歩きコースになる。メインルートと並行するような形で、薮沢新道がある。登りもしくは下りのどちらを、薮沢新道を歩けば、メインルートとは、異なった景色を楽しむことができるだろう。
私の場合は、登りで薮沢新道を使う。薮沢新道は、沢に沿って作られている登山道であり、馬ノ背ヒュッテを経由して、仙丈ケ岳山頂へと続いている。
途中には危険な箇所もなく、道もはっきりしているために、安心して登山を楽しむことができる。夏場には、気持ちの良い、沢沿いコースとなることだろう。
馬ノ背ヒュッテから少し登ると、仙丈ケ岳と薮沢カールが見える。カールが大変美しく、これぞアルプスという景観を楽しむことができる。
薮沢カールには、仙丈小屋がある。とても美しいカールの中に建つ小屋で、日帰りで登れる山にも関わらず、あえて、仙丈小屋泊まりの1泊2日で登ってみたいと思ってしまうほど、美しいロケーションである。
仙丈小屋から山頂までは20分ほどの登りだ。登頂後、眺めのよい稜線上を歩いて、小仙丈ケ岳へと向かう。カールが大変美しく、日本アルプスの魅力を満喫できる区間である。
小仙丈ケ岳の後は、大滝頭を経由して北沢峠へ下山する。大滝頭からは、樹林帯の中の登山道となる。
標準的なコースタイムは約7時間。日帰りでも十分可能だが、初めての日本アルプス登山ならば、仙丈小屋泊まりの1泊2日で、のんびりと景色を楽しみながらの山登りもおすすめである。
一般的なコースタイム
「北沢峠」
→→→[徒歩:約10分]→→→
「大平山荘」
→→→[徒歩:約2時間30分]→→→
「馬ノ背ヒュッテ]
→→→[徒歩:約1時間30]→→→
「仙丈ケ岳山頂」
→→→[徒歩:約40分] →→→
「小仙丈ケ岳]
→→→[徒歩:約40分] →→→
「大滝ノ頭」
→→→[徒歩:約1時間20分] →→→
「北沢峠]
※ コースタイムは標準的な時間です。所要時間は人によって大きく変わります。
時間はあくまでも目安として、余裕をもった登山計画を立てて下さい。
仙丈ヶ岳
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
最終更新:
iRyota25
「北アルプスの白馬、南の仙丈」って呼ばれるくらい有名な「お花畑の山」。高山植物のことも教えてください! ぜひ!
sKenji
コメントありがとうございます。一部高山植物の名前記載しました。そのうち白馬についても書いてみたいと思います!