男体山は栃木県・奥日光にある山で、標高は2486m。中禅寺湖畔にまるで腰をおろしているかのように、湖岸近くにそびえている。
男体山を初めて見たのは、小学校の修学旅行の時で、山の斜面にいくつも作られた砂防ダムが強く印象に残っていた。それから約10年後、学生時代に、再び奥日光を訪れると、その変化に富んだ美しい自然に魅せられて、以降、ほぼ毎年のように奥日光に行っている。
男体山は、奥日光の象徴的な山で、たいがいどこにいても、その重量感を感じさせる山容を見ることができる。なかでも、一番好きなのは、中禅寺湖の湖上から見る男体山だ。湖と山のバランスが絶妙で、湖面越しに見える男体山の姿は、実にどっしりとしており、堂々としている。
中禅寺湖でカヌーをするたびに、山頂へと続く尾根を湖面から眺めながら、あそこを登るのだろうかなどと、想像を膨らませ、いつか登りたいと思っていた山だった。
そして、2012年秋。紅葉の頃を見計らって、男体山に登るべく、奥日光に向かったのだった。
二荒山神社から山頂へ
男体山山頂へのルートは複数あるが、最もポピュラーな登山道は、中禅寺湖の岸近くにある日光二荒山神社中宮祠(にっこうふたらさんじんじゃちゅうぐうし)の登山口から登るものだろう。わたしもここから登った。
登山開始は8:00。季節は11月始め。神社の標高は1300m近くあるために、早朝はかなりの冷え込みだった。
まず最初に、本殿近くにある、登山の受付所に行く。登山数日前に知ったのだが、男体山は二荒山神社の私有地であり、入山料が必要とのことだった。そのため、入山料を払うために、受付所を訪れたのだ。
しかし、そこで初めて、男体山の登山可能期間の存在を知った。山登りが許されるのは、5月5日から10月25日までで、その年はすでに閉山したとのことだった。
そのことを聞き、「困ったな」と思っていると、受付の方は、自己責任という条件付きで、登山を認めてくれた。ほっとして、入山料を払い、氏名、住所等を帳面に書いた。ノートには、すでに今日の日付で、4人ほどの登山者の名前が書かれていた。
記帳を済ませると、神社本殿の脇にある、登山口から登り始める。
二荒山神社からの登山コースは、およそ9合目くらいまで、樹林帯のなかを歩く。
最初はなだらかな道なのだが、登るにつれて少しずつ急になってくる。
夏、緑が生い茂っていたであろう森も、この季節になると、色とりどりに美しく色づき、まるで厳しい冬が訪れる前に、最後の輝きを放っているかのようだった。
登山道の途中には、所々で視界が開けた場所があり、そこからは、黄葉した木々と中禅寺湖を眺めることができる。色鮮やかな秋の光景だった。
乾いた空気がひんやりと心地よく、この時はまだ、秋らしい、さわやかな登山だった。
<山登りのススメ Vol.13 ~男体山 後編~ へ続く>
日光二荒山神社中宮祠
Text & Photo:sKenji
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