山登りのススメ Vol.31 ~両神山~

sKenji

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両神山・八丁尾根ルートにて
両神山・八丁尾根ルートにて

古くから山岳信仰の対象となってきた奥秩父の両神山。修験者が修行の場とする山の多くがそうであるように、両神山もまた険しく、そして、特異なその姿で多く人の目を引きつける山である。

両神山の山容について、深田久弥は著書・日本百名山で次のように述べている。

大よその山は、三角形であったり屋根形であったりしても、左右に稜線を引いて山の体裁を作っているものだが、両神山は異風である。それはギザギザした頂稜の一線を引いているが、左右はブッ切れている。あたかも巨大な四角い岩のブロックが空中に突き立っているような、一種怪異なさまを呈している。古くから名山として尊崇されているのも、この威圧的な山容からであろう。それはどんな山岳重畳の中にあっても、一目ですぐにそれとわかる強烈な個性を具えている。

日本百名山(深田久弥)

その奥秩父の名山を9月のシルバーウイークに登ってきた。

両神山登山レポート

両神山頂上(※剣ヶ峰)への主な登山ルートは3つある。

最も人気があるのは「日向大谷口ルート」である。鎖場が数か所あるものの、難易度は低いと言われている。コースの途中には石仏や神社などがあり、信仰の山であることを感じながら登ることのできるコースである。

「白井差新道ルート」は、日向大谷口ルートよりも標高が100m以上高い場所に登山口があり、3つのルートの中で最短コースとなっている。途中、危険な個所はなく、歩きやすいと登山道とされている。

「八丁尾根ルート」は上級者向けコースと言われている。3つのルートで最も高い所に登山口があるものの、アップダウンを繰り返すために、登り口と山頂との標高差以上にハードなコースである。途中には数多くの鎖場があり、死亡事故も発生している。

 両神山簡易マップ(※PDFの2ページ目に両神山の地図有)
www.pref.saitama.lg.jp  

当初は最もポピュラーな日向大谷口ルートで登るつもりだったのだが、登山数日前に調べてみると、日向大谷口の登山口に通じる道路が土砂崩れで通行止めになっているとのことであった。そこで、予定を変更し、八丁尾根ルートで登ることにする。

八丁尾根ルートの登山口は「八丁トンネル北側出口」と「上落合橋」の2ヶ所がある。2つは八丁峠で合流し、山頂へとつながっている。私は後者の登山口から登ることにする。

上落合橋の登山口には道路脇に車を10台ほど停めることのできるスペースがある。駐車スペースに至る林道は狭い上に落石も多いので、普段以上にスピードを控え目にするなど、運転に注意をした方が良い。

登山道は道路脇にある木のはしごを登ったところから始まる。

最初は沢沿いに作られた登山道を歩く。細い上に崩れやすそうな道なので注意が必要である。滑落事故も起きている。

10分ほど水の流れに沿って歩くと、そこから山の斜面に造られたつづら折りの登山道を登って行く。

登山口から1時間ほど歩くと八丁峠に着く。ここまでは特に危険な個所はない。

峠から先は八丁尾根の稜線上を歩くコースになる。

尾根上の登山道は、最初のうちは道幅もあり比較的歩きやすいのだが・・・

すぐに鎖場がでてくる。

その先は、山頂まで鎖場の連続となり、険しい道でのアップダウンを繰り返すことになる。

ちなみに鎖場で登ったり降りたりする際には基本、鎖を両手でつかまない。岩場では通常、両手両足のうち3本を岩にかけた状態にして、残りの1本を動かす「3点支持」で移動する。鎖があってもこれは同じで、状況によるものの、基本的には鎖を両手では持たずに片手は鎖、片手は岩にかけて登り降りする。

両手で体重をかけて持っていると鎖が振れた際に危険である。1人で登っている場合ならまだしも、他の登山者も同じ鎖をつかんでいると、急に振られることがよくある上に予想もつかない。また、鎖をまたいでいると、同様に鎖を振られた時に危険である。基本、鎖は補助的に使用するものと考えていた方が良い。

更に付け加えるならば、鎖場を登り降りする際には1本の鎖を2人で同時に使用しない。途中で鎖を岩に固定してる箇所があるならば、前の人が固定箇所を通過した後に登り始めることもあるものの、登っている人が滑落する可能性もあるので、よほど渋滞していない時以外は完全に移動し終わるのを待って、取りついた方が良い。

この日、早朝は曇っていたものの、時間が経つにつれて少しずつ雲の切れ間があらわれ始める。

西岳の山頂。山頂は狭いながらも座って休むことができるスペースがある。八丁峠から両神山の頂上の間には、食事を取れるような場所が少ない。西岳は少ない休憩ポイントのひとつである。

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