山登りのススメ Vol.30 ~常念岳~

sKenji

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長野県・松本平の西へ目をやると、連なる北アルプスの山々のなかにひときわ目を引くピラミッド型の山がある。安曇野のシンボル、常念岳である。

日本百名山の著者・深田久弥は常念岳について次のように述べている。

松本に数年住みながら、一向山登りに興味を持たない男だったが、ただ常念だけは一度登ってみたかった、と洩らした友人がいた。
松本平から見た常念岳を知っている人にはその気持ちがわかるだろう。

それはわが友人だけではない。六十年も前にウェストンが言っている。
「松本附近から仰ぐすべての峰の中で、 常念岳の優雅な三角形ほど、見る者に印象を与えるものはない」と。

ウェストンもやはりその美しい金字塔に惹かれて登ったのだろう。

日本百名山(深田久弥)

日本百名山の常念岳についてかかこれまで北アルプスと言えば、穂高連峰や槍ヶ岳などの山ばかりに目がいき、常念岳を登ろうと考えたことはほとんどなかった。しかし、日本百名山を読んで以来、一度は登ってみたい山となった。今月上旬、北アルプスが色づく時期を見計らって登ってきた。

常念岳登山レポート

今回の登山ルートは、安曇野市の三股登山口を出発し、前常念岳を経由して常念岳を登った後、南に伸びる稜線を蝶ヶ岳まで歩き、そこからスタート地点の三股に下山するというコースを取った。

 常念岳地図(Yamakei Online / 山と渓谷社)
www.yamakei-online.com  

夜明け前、三股に到着する。しかし、乗用車が80台ほど停められるという駐車場はほぼ満車状態。ハイシーズンになると駐車場がいっぱいになり、道路脇の空きスペースに停める車も多い。

途中のコンビニで買ってきた朝食を食べ、山登りの準備を整えると出発。

登山口は駐車場からさらに1キロメートルほど奥に行った場所にある。まだ薄暗い林道を歩く。道の先には朝日に照らされた常念岳の姿が見える。

駐車場から15分ほど歩くと登山口に到着。

登山相談所(※下山時に撮影)

登山相談所(※下山時に撮影)

三股登山口には登山相談所の小屋があり、登山届の用紙と筆記具も用意されている。

登山口から歩き始めてすぐの所に小さな鉄製の橋がある。橋を渡った所が常念岳と蝶ヶ岳、それぞれの山頂へ続く登山道の分岐点となっている。標識が「常念岳」と示している方を行く。ここからが本格的な登りになる。

山道を登っていると、朝日が差し込んできた。真っ赤な朝の光を受けた樹木はまるで燃えているかのようで、ほんのひととき、森は荘厳な雰囲気に包まれる。

登山口から常念の山頂まではおよそ6時間の登りである。特に前常念までは急な登りが続く。途中には水場がないので多めに持っておいた方が良さそうである。

三股の登山口から樹林帯の山道を登ること約5時間。巨岩がちらばる威厳ある前常念岳が姿をあらわす。この辺りから視界が開けて、北アルプスらしい山岳風景を楽しむことができる。

前常念岳の頂上を目指していると、常念岳と蝶ヶ岳を結ぶ稜線の向こう側に雲がかかった山が見えた。

「槍ヶ岳だろうか・・・」。その山が気になった。雲に覆われた山をときおり確認しながら標高をあげていく。

そして、山が現れる!穂高連峰であった。

すると、15分ほど登ったころだろうか、ふと山の方を見ると山頂付近を残して山は姿をあらわしていた。思わずその姿に目がくぎ付けになった。氷河が削り取った大きなカールにゴツゴツとした岩峰群。重量感ある山の迫力に圧倒され、しばらくの間その場に立ちつくし、眺めていた。昔、南米パタゴニア地方で見た山々を思い出した。

巨石が散らばる急登を登りきると、そこは前常念岳の山頂。てっぺんに立つと眼下には安曇平や松本平が広がっていた。

後ろを振り返ると、そこには堂々とした常念岳の姿がある。常念の頂に続く緩やかな稜線を見ていると心が軽くなった。

常念岳の山頂へ向かう登山道からは、「表銀座」と呼ばれる登山者に人気の縦走コースが見えた。

目の前にある、展望がよく起伏の少ない歩きやすそうな縦走路を見ていると、予定を変更して歩きたくなってくる。歩きたい山がまたひとつ増えた。

前常念岳から50分ほど歩くと山頂へと続く登山道の分岐点に出る。ここまでくれば、山頂はもう目の前。

標高2,857メートル、常念岳に登頂!

松本平、上高地、穂高連峰など、山頂には360度の大パノラマがひろがっていた。穂高連峰はこれまでに幾度となく見てきたが、常念岳の山頂から見た時ほど、重厚感あるカッコいい穂高を見たことがなかった。

そして、穂高連峰と同じくらい見入ってしまったのが、槍ヶ岳。すっくと天を突く姿は見るものを惹きつけ、登頂意欲を駆り立てる。

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