富士山の南に位置する愛鷹(あしたか)山塊は霊峰富士とその裾野に広がる街や海の展望の良さで知られている。
2年ほど前、富士山の眺めがいいことでも知られる沼津アルプスを縦走したことがあった。その際、富士の手前に気になる山が連なっていた。それが愛鷹山塊だった。
沼津アルプスからの眺めでも素晴らしいのに、あの山の頂に立ったならばいったいどのような富士山を見ることができるのだろう。その光景を想像して以来、いつかは登ってみたいと思っていた山であった。その愛鷹山塊を先日の9月12日、登ってきた。
黒岳・越前岳・呼子岳登山レポート
愛鷹山塊は最高峰の越前岳(1,504メートル)を始めとした呼子岳、鋸岳、位牌岳、愛鷹山、黒岳、前岳、袴腰岳、大岳などのピークから成りたっている。
愛鷹山と呼ぶ人の方が多いかもしれないが、同じ名前のピークがあることから愛鷹山塊と呼びたいと思う。
今回、歩いたルートは「山神社」の登山口からスタートして黒岳を経由し、越前岳の山頂へと登るものである。最高峰を踏んだ後は呼子岳を経由をして、割石峠から大沢へと下り、出発した山神社に戻ってきた。
スタート地点の山神社の登山口は、国道469号線の愛鷹登山口バス亭から細い林道へ入り、約1kmほど行った場所にある。近くには20台ほど停めることができる駐車場がある。
黒岳への登山口。鳥居をくぐって黒岳山頂を目指す。入口に「熊出没注意」と書かれている。念の為、クマよけの鈴などを持って行くのもいいかもしれない。
黒岳の山頂付近までは樹林帯のなかを歩く。
黒岳山頂で4人組パーティーに出会ったのだが、彼らは途中、少し迷ったと言っていた。赤いテープなどの登山道を示す目印をほとんど見かけなかったので、万が一、日没後にヘッドランプで下山をするような場合は迷うこともあるかもしれない。
登山口から40分ほど登ると愛鷹山荘が見えてくる。山神社へ下りる際、あたりがすでに暗くなり始めていたならば、山小屋に泊って翌朝の下山も考えたい。
山荘は無人の避難小屋で、近くには水場と簡易トイレがある。
水場は季節や時期によって枯れていることもあるそうなので、注意が必要である。
小屋から10分ほど登ると富士見峠の分岐点に出る。登ってきて左が越前岳、右が黒岳へと続く。
黒岳山頂からの富士山の眺めは一見の価値があるので、時間が許せばぜひ黒岳にもよっておきたいところ。
分岐点から黒岳の頂上までは約25分ほどの登り坂である。
山頂へ行く途中に黒岳展望広場がある。ここからの富士山の眺めもいい。
黒岳展望広場から見る富士山。
展望広場からさらに15分ほど行くと黒岳の山頂に着く。標高は約1,086m。山頂は広く、富士山と裾野市街を見ることができる。
ちなみに愛鷹山塊はおよそ40万年前に活発に活動していた火山である。黒岳は10万年ほど前、愛鷹山塊最後の噴火の際にできた溶岩ドームと言われている。
山頂にはベンチもある。ここで少し遅めの昼食♪
富士山を眺めながらのお昼は最高である。
昼食後、越前岳の山頂を目指す。途中の登山道は稜線上の縦走路だが木々に覆われているために展望はほとんど期待できない。
黒岳から越前岳に向かっていると途中、3ヶ所だけ眺望が開けた場所がある。
最初に現れるのが「鋸岳展望台」でその名の通り、ノコギリの歯のような鋸岳山頂付近の稜線を見ることができる。
次に現れるのが「北白ガレン」である。斜面の崩壊が激しく、規制のロープが張られている。
北白ガレンは愛鷹山塊の火山活動でできた大沢爆裂火口の跡とのことである。
そして最後にあるのが富士見台。山梨県の三ッ峠などと共に富士山の絶好の展望地として知られている場所である。
富士見台から見た富士山。昭和13年に発行されたという50銭紙幣の富士山の図案は、ここから撮影されたものである。
愛鷹山塊最高峰の越前岳(1504m)に到着。この日は山頂付近のみ雲がかかっていたが、晴れていれば富士市や駿河湾の眺めが素晴らしいという。
越前岳から呼子岳へと向かう。途中は林に覆われているために眺望はあまり望めない。
越前岳から1時間ほど歩くと呼子岳の山頂に着く。標高は1,310m。途中のコースは呼子岳の頂上手前に少し登りがあるものの、そのほかは下りである。
呼子岳から更に15分ほど下ると割石峠に出る。
ここから大沢へと標高を一気に下げる。
割石峠から山神社までは、沢沿いに作られたルートで歩いて楽しい区間である。特に夏は気持ちが良さそう。
ただし、割石峠と大沢の間は道を間違えやすい区間でもあるので要注意である。
越前岳山頂で、山神社からこのルートで登ってきた二人組の登山者が「途中、道を迷ってGPSを頼って登ってきた。なかったら無理だったと思う」と言っていた。
その時はいったい何に迷ったのだろうと思っていたのだが、恐らく上の写真のような沢の分岐に違いないと実際に歩きながら思った。
私は下りだったからよかったものの、登りの場合はどちらが正しいルートか迷っていた可能性があったと思う。
あくまでも参考までの話ではあるが、私が確認した限り、割石峠と大沢との区間でこのような迷いそうな沢の分岐が3ヶ所あった(※恐らく右の地形図で赤い円の箇所と思われる)。いずれの箇所も登ってきた場合は左側の沢が正しいルートとなる。
割石峠と大沢橋付近の区間には、石に塗られたペンキや木に結び付けられた赤いテープなどの目印が比較的丁寧につけられているので、間違った道を歩いていないか特に意識しながら歩いた方がいいと思う。
割石峠から大沢橋へ向かっている途中に1本の立派な杉の大木がある。根元には「大杉」と書かれた看板があるものの、なくても周囲の樹とは明らかなに異なる貫禄を感じる。
大沢に架かる橋、「大沢橋」。渓流に癒される。
大沢橋から25分ほど歩いた地点で沢を渡って対岸へ。
沢を渡ると舗装された道路となる。ここから10分ほど歩くとゴール地点の山神社に到着する。
今回は愛鷹山塊の北側に位置する越前山、呼子岳、黒岳を登ったが、南側の位牌岳や愛鷹山も眺望が素晴らしいと聞く。次はこれらの山にも登ってみたいと思う。
愛鷹山塊・越前岳
Text & Photo:sKenji
最終更新: