これは、本州と小笠原諸島を結ぶ小笠原海運が年に1度だけ行うツアーで、小笠原諸島のさらに南に位置する硫黄島(いおうとう)を眺めようというツアーだそうだ。
硫黄島というと、映画『硫黄島からの手紙』でも知られているように、太平洋戦争における激戦地でもあった。戦前は住民もいたそうだが、今は自衛隊員や気象庁の職員など、ごく限られた人々が常駐するのみ。一般的には立ち入り禁止とされている島だ。もっとも、“立ち入り禁止”とは言うものの、関係者でもない限り、硫黄島まで行く手段は皆無に等しい。だからこそ、この年に一度の「硫黄島3島クルーズ」は、【一般の人々が硫黄島を見ることが出来る】貴重な機会なのだ。
ちなみに硫黄島3島とは、北硫黄島、硫黄島、南硫黄島の3島のこと。硫黄島ばかりが有名だけど、学術的には3島ともが貴重な存在。今回はこの3島を見るツアーになる。
【 注意 】
※ここで登場する“硫黄島”の正式な読み方は「いおうとう」。
映画がきっかけで誤解されがちだが「いおうじま」ではない。
※同名で、鹿児島県鹿児島郡三島村にある“硫黄島”は「いおうじま」。
硫黄島3島へ向けて出発
暗いなか、父島を離れていくおがさわら丸。おがさわら丸の出港は多くの人が集まってめちゃくちゃ賑わうことで有名である。しかし、この日は夜ということもあって、超が付く静けさ。硫黄島3島を目指し、ゆっくりと進んでいく。
乗船客の大半が「バズーカ!?」と、思ってしまうほどの大きな望遠レンズ、ウン十万円はしそうな一眼レフカメラを持っていて驚いた。ガイドさんに聞けば、例年参加者のほとんどがバードウォッチャーだそうで、硫黄島付近でしか見られない海鳥が目当てなのだとそうだ。
そのほか、迷彩服を着こなした軍事マニアっぽい人も何人かいた。
僕はと言うと「普通に生きていれば、死ぬまで見ることはないだろう硫黄島を見てみたくなった」というのが参加理由。ほとんどの人が見ることのないだろう光景を、僕は生で見る。この部分に妙な気持ち良さを覚えていたのだけど、どうやら、僕みたいな参加者はあまりいないらしい。
船内レクチャー
出港して1時間後の20時、船内レクチャーが行われた。
たとえば学校で、生物の授業を受けたとしても、何の興味もわかなかったのに、自分からお金を払ってツアーに参加している以上、「聴かなきゃ!」という意識になってしまう・・・。
そんな妙な義務感で参加したのだけれど、このレクチャーが想像以上に面白かった!
たとえば「海鳥の羽は羽毛が密生していて油を分泌するから潜っても平気」なんて話も、これから海鳥を見に行こうとしているだけに「へぇー!」と感心してしまう。
都心から南に1,000km、絶海の孤島・小笠原諸島では「日本国内に生息する海鳥の4割以上の種類が生息する」そうだ。さらに、その中でも「硫黄島3島付近でしか見られない海鳥が9種類いる」とのこと。
いやー、なるほど。バードウォッチャーが本気になるのも頷けます!
上で紹介したのはほんの一部。実際は「これでもか!」というほど、おもしろ知識満載のレクチャーだった。
ただ、このレクチャーを受けたからと言って、翌日僕が海鳥を見かけたとしても、細かな種類に関してはピンとこないだろうとも思った。どうも、僕にはバードウォッチャーとしてのセンスはなさそうだ。
それよりも、こうして研究というカタチで、硫黄島に参加しているガイドさんたちの様子が楽しそうでたまらなかった。硫黄島3島へボートで上陸し、命綱でがけを登り、少しでも平たいところを探してなんとかキャンプを張る・・・。典型的な「無人島サバイバル」で、精神的にも体力的にもかなりキツイだろうに、とても楽しそうだったのだ。
将来僕も、なんらかのカタチで、こういった特別な研究に参加できないかなぁと、ひそかに憧れていたりする。。
(後半へ続く!)
硫黄島
北に北硫黄島、南に南硫黄島がある。今回のツアーでは、北硫黄島を2周、硫黄島を1周、南硫黄島を2周した。
まだまだ「島記事」あります。
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