ふんわりほわっと膨らんだパン。それを思いっきり頬張ると、ふっくらした生地からパンの香りがふわっと漏れる。この香りがまた次のひと口を誘う。そうこうしているうちにあっという間に食べ終わると、ふとまた我に返る。あーそうそう、今小笠原だったんだ。
ローカルベーカリー@入港日
25時間30分の船旅を経て小笠原にたどり着くと、時間はすでに11:30。今からチェックインを済ませて、昼食をとって、早速遊びに出かけなきゃ。
ローカルベーカリーは父島にあるパン屋さん。おがさわら丸が父島に着くや否や、このパン屋さんを目指す観光客が何人かいるのだ。店内に入ると、観光客同士、会話はしないが目でものを言う。「おー、ツウだね!」
店内に入ると、品ぞろえ豊富なパンがずらり。
「フィレオフィッシュパン、焼きそばパン、カツサンド・・・お昼はやっぱり惣菜パンで。」
「いやいや、ここのパンはクリームがひと味違うんだ。パッションフルーツ味、島レモン味、え?島バナナ味のクリームパンもあるんだ!」
「ウミガメパン、シェル貝パン、マッコウ(クジラ)パンだって。なにこれ、カワイイ!」
トングを片手にパンを物色する観光客。もちろん、混みやすい飲食店と違って手がるに食べられる点はメリットだ。しかし、それだけじゃない、何かがある。ただ品数が多いだけじゃなく、どのパンもどこか親しみやすい。
ローカルベーカリー@入港中
島で過ごすうち、仲良くなったお客さんとの島談義。あそこ行った、おおめここ行った、オススメはどこだと盛り上がるなか、遅かれ早かれローカルベーカリーの話題になる。
普通のパン屋さんにしては少し定休日が多いロカルベーカリー。おがさわら丸が停泊している2日間は基本的にお休みだ。それもあってか、1航海の観光客の中には、その存在を知らずに帰ってしまう人も多い。
そんなときこそ、(自称)ローカルベーカリーファンクラブ会員である僕の出番である。いかに美味しいパンなのか、いかに素敵なパンなのか、頼まれてもいないのに熱弁をふるうのだ。「島の食材使ってて」「国産小麦で」「無添加で」「品数豊富で」「かわいくて」・・・。
「へー!島のパン屋さんってなんかいいね!!」
こうなれば、しめたもんだ。
ローカルベーカリー@出港中
定期船おがさわら丸が東京へ向けて出港し、父島に残るのはロングステイ組ばかり。少し落ち着いた、少しのどかな父島になる。
民宿が密集している大村地区からは徒歩20分。坂道を登った先の清瀬地区にローカルベーカリーはある。清瀬地区には、島民が多く住む都営住宅があるものの、民宿のある地域からはちと遠い。ところが、小笠原では朝の散歩も苦にならない。徒歩20分?ちょうど良い運動じゃないか。
しかし、それでも人によっては遠い距離。原付か車でもあれば、かなり違うのは言うまでもない。「ローカル行くんだけど、車乗ってく?」とでも言えば、ヒーローである。
クリームパンは朝のデザートにパクッ!惣菜パンは山や海のお供にパクッ!余らせたパンは小腹がすいた時にトースターでチンッ!
もう小笠原ライフに欠かせない存在だ。
ローカルベーカリー@出港日
小笠原を離れる日。午前中の半日を遊べば、小笠原時間も終わる。14:00には出港し、そこからまた25時間30分の船旅だ。
船内の食事はやっぱりローカルベーカリーのパン。島を離れると、しばらく食べられないだろう。事前に電話をして好みのパンを指定する熱心なファンもいる。お土産にするには、日持ちしない。だからこそ、船の中で名残惜しむように噛みしめるのだ。船酔いしない程度に。島の食材を使ったパンはなるべく最後にとっておこう。
翌日のお昼。おがさわら丸は東京湾内に入り、波も穏やかになってくる。1500円以上は購入しただろうパンも残りわずか。気が早い人は下船準備を整え始める。昨日、青かった海は黒みがかり、爽やかなジャングルではなく工業地帯が見えてきた。
とっておいた、島レモンのパン、島マンゴーのパン、などなど。最後のパンをかじる。島の香りが広がる。あぁ、小笠原にいたんだなぁ。
下船したら、「また小笠原に行こう」と誓う。
ローカルベーカリー
●電話番号:04998-2-3145●営業時間:8:00~14:30(パンがある日は15:00~)●休み:定休日表による。(入港日、出港日、土・日は必ず営業)
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