バードウォッチング
朝5時30分頃には目が覚めた。船内は消灯時間になると暗くなり、夜更かしするような理由もなくなるので素直に寝てしまう。もちろんその分早く起きるわけだが、当時お気楽大学生だった筆者には考えられないほどの早寝早起きだ。それが自然体で出来てしまうのだから、船の中でもいわゆる「島時間」が流れているのだろう。ところが、私の周りにいた集団の姿は既になく、2等客室にはツアー参加者がまばらに残っているだけだった。最初に見える南硫黄島の通過予定時刻は6時~。30分以上前にはデッキに出ているのだろうか。みんな気が早いなぁ・・・
驚きの声は「んぅぉっ・・・」
声にならない声が出た。「うわー!」でもなく、「おぉー!」「ほぇー!」でもなく、「んぅぉっ・・・」。それもそのはず、ズラーと並べられた三脚付きカメラの数、数、数・・・! 朝早く起きる、その理由は場所取りだったようだ。そこまで必死になるものだったのか。興味ひとつで参加したツアーだが、どれだけ価値があるツアーだったのかと痛感。
6時ちょっと手前、5時55分頃にはぼんやりしていた南硫黄島がはっきりと見えてきた。三脚だけ設置してカメラから離れていた人たちが、それぞれ自分のカメラの場所に戻ってくる。中には、スペースの奪い合いでなんとなく殺気立っている方々も。いやはや大の大人が・・・(笑)。そして、自分が気楽な参加者だと感じる。いや、私自身気楽に参加したつもりはなかったが、
「カメラだけで数百万かかっている」 なんて喋っている方々とは、おそらく会話の次元が違うだろう。
小笠原村海域、海鳥にとって貴重な場所
彼らはバードウォッチャーだったのだ! 彼らは撮影スペースを奪い合っていたが、正直なところ「島は逃げないし、良い画像が撮れたらは仲間内でシェアすればいいのに・・・」なんて思っていた。なるほど、これで合点がいった。飛来する海鳥を如何に最前列で撮るか、これは同じ船に乗っていても、人によって写真に差が付くのは間違いないだろう。それを彼らは争っていたのだ。
筆者は2万円弱のコンパクトデジカメです。なんかすみません。筆者は鳥はよく分からない。バードウォッチャーの方々を見ているだけで新鮮だったので、さながら「バードウォッチャーウォッチャー」と言ったところか。
せっかくなのでデジカメで海鳥を追ったり・・・。何の鳥かまではよくわからなかったが、バードウォッチャーやボランティアガイドさんに聞けば丁寧に答えて頂いた! 何かと貴重な硫黄島3島だが、海鳥もまた同じ。日本国内には約40種の海鳥の繁殖記録があるが、硫黄島3島を含む熱帯・亜熱帯性の小笠原村海域では17種、実に国内の海鳥の4割以上の繁殖が確認されているのだという。それほど貴重な海域だそうだ。これらもスライドやガイドさんを通じて船内・船外でレクチャーがあった。
どこで学ぶわけでもない、海鳥の生体と(硫黄島を含む)小笠原村の自然。「なるほど!」「へぇー」がいっぱいだった。ツウから素人まで楽しめる、貴重で粋なツアーである。(次ページに写真あり)
【旅レポ】硫黄島に行く。~硫黄3島クルーズ その2~ バードウォッチング 【旅レポ】硫黄島に行く。~硫黄3島クルーズ その3~ 硫黄島の今
※ 随時アップします。
◇参考ページ◇
(小笠原海運公式HP) ※ 2012年は7月9日便にて開催
■硫黄3島クルーズ写真集■
小笠原村海域でしか見ることが出来ない海鳥を追います。
南硫黄島です。一般の方々はこのツアーでしか、お目にかかれません。
コンパクトデジカメで撮った海鳥です。このあたりが限界か・・・
最初は競って場所取りをしていた人たちも、時間と共にそれぞれの場所へ。
通常の航海であれば物資や荷物が積まれて立入禁止になるスペース。イベント時なので特別開放です。
■海鳥について■海の上に住む、島と海を結ぶ鳥たちの総称。魚やオキアミ、イカを食し、生活している。陸鳥と違い夜行性が多く、泳ぐことももぐることも可能。羽毛が密生しており、油分が分泌されているため、防水。塩分と上手に付き合える体質のため、海水から水分を得る。逆に間水が飲めないなどの特徴がある。
船内レクチャーの様子です。
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