知る人ぞ知る裏メニューがある。
小笠原諸島・父島にある『小笠原ユースホステル』。僕はこの宿で出される豪勢な食事が大好きだ。
改めて確認する。小笠原と言えば、船で片道25時間30分、都心から南に1,000kmの距離に位置する絶海の孤島。船は1週間で1往復のため、1度行ってしまえば、必然的に島で3泊する必要がある。つまり、島の宿に宿泊するお客さんは基本的に3連泊からそれ以上が基本なのだ。
とは言え、往復するだけで最低5日間の休日が必要な小笠原である。ほとんどの人は、この1往復、小笠原用語で言うところの「1航海」で帰ってしまうことだろう。
ところが、常連客に言わせれば、それは「もったいない!」らしい。
「ユースに泊まるなら“島カレー”を食べないと」
小笠原ユースホステルに泊まる場合、必ずどこかで誰かがそう言うのだ。
「島カレー?」
知らない人はそう聞き返す。それもそのはず、この島カレーは船の入港中には登場しないメニューなのだ。ではいつ登場するかというと、船が島を出港する日の夜。要するに、乗ってきた船を1度見送り、次以降の船で帰る長期滞在者しか食べられない。2航海(9泊10日)以上の滞在が条件となるのだ。
もちろん、普通のカレーではなく、パパイヤ、マンゴー、バナナ、島唐辛子、レモングラスといった島の食材が使われているもの。
日本人にはなじみのない、どこかアジアンテイストのただようラインナップだが、これがなんとも旨い。果物が出す甘みやコク、そしてそれを引き締める少量の激辛唐辛子がまた良いアクセントだ。さらには、溶けている食材も季節によりけり。それがまた、長期滞在者をも飽きさせないのである。
ハマったら最後、“おかわり者”が続出。
そして彼らは、次に訪れるお客さんへ
「ユースに泊まるなら“島カレー”を食べないと」
と言うのだ。
小笠原ユースホステル
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