大して美味しくはないけど、意外とウマイ「礼文島・圧縮弁当」【島グルメ】

tanoshimasan

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高山植物が美しく咲くことで知られる礼文島では、島を縦走する「愛とロマンの8時間コース」というトレッキングコースが有名だ。景色は山も海も楽しめ、しかも咲き誇る花々はとにかく美しい。島を訪れたなら、必ず体験して頂きたいコースである。

そしてもうひとつ、礼文島の名物として欠かせない存在なのが、桃岩荘ユースホステル。

歌って踊って旅人同士親睦を深めるという、昔ながらのスタイルを大切にし、船が来たら歌って踊ってお出迎え、船が行けば歌って踊ってお見送り。宿泊客でなくとも、必ず目にしてしまうだろう。

少し前時代的、そしていちいち豪快な彼らは、まさに「今を生きる70年代」。好き嫌いは分かれるが、ハマったら最後。不思議と元気になり、また訪れたくなる、そんな妙な魅力も秘めている。一部では“キチ●イユース”と呼ばれているが、もちろんそれは自他ともに認める笑い話だ。

お察しのとおり(?)、「愛とロマンの8時間コース」の名付け親もこの桃岩荘。男女の旅人同士、ともに8時間のトレッキングを乗り越えれば、いつしか愛が生まれているとかいないとか。そんなロマン溢れる淡い期待が込められているらしい。



今や礼文島では定番となったこのトレッキングコースだが、ただ、ひとつ問題点がある。

それは「けっこう疲れる」こと。

「愛とロマンの8時間コース」なんて言うものの、実際には10時間近くかかると心得ておくのが、礼文島ファンの常識。朝は早朝5時に出発するし、日本最北の島と言えど、夏はそこそこ気温も上がる。そんななか、本当に10時間近く、ほぼ初対面の旅人同士、集団でひたすら歩くのだ。想像してみてほしい……。

―――――前日夜、「愛とロマンの8時間コース」に関する簡単な説明会が開かれた。

「明日のお昼には桃岩名物の圧縮弁当を食べて頂きます」

桃岩荘のヘルパースタッフの兄ちゃんが言う。

「圧縮弁当?」

知らない人は当然聞く。

「四角いお弁当にご飯がぎゅうぎゅうに詰まってます」

「へぇ、美味しいんですか?」

「うーん、そうだなぁ。大して美味しくはないけど、意外とウマイかな!」

ヘルパースタッフの兄ちゃんはそう言ってニヤリ。なんだそりゃ!

翌朝、4時30分。すでに出来上がっている圧縮弁当を女性ヘルパーのお姉さんに渡される。プラスチックトレイの容器が包装紙でくるまれた状態。中は見えないが、手渡されるとズシッッと重量感。一体なんなんだ。―――――


そこそこ歩き、お昼どき。歩き始めて5~6時間。けっこう疲れた。脚もパンパン。あぁ、お腹が空いた!

圧縮弁当を取り出す。見てびっくり!米が米の形をしていないほど、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたご飯。そしてその上に、鮭のほぐし身、そぼろ、じゃこ、昆布の佃煮、梅干し、のり……以上。ご飯は1.2合分。500円。

箸が米につっかえるほどのボリューム。味はと言えば、ご飯の上にそれぞれの具の味。米がカタマリみたいになっていた、食べやすいとはいいにくい。

だけど……

程よく疲れているからか、空腹が最高の調味料だからか、景色が良いからか、旅人同士一緒だからか、なんだかんだと箸が進む。

「大して美味しくはないけど、意外とウマイかな!」

ヘルパースタッフの兄ちゃんの言葉を思い出す。……なるほど、これほどしっくりくる言葉はないかも知れない。ただ不思議と、元気が湧いた。

桃岩荘ユースホステル

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