「硫黄島3島クルーズ」というイベントに参加してみた。(後編)【旅レポ】

tanoshimasan

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 「硫黄島3島クルーズ」というイベントに参加してみた。(前編)【旅レポ】
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「硫黄島3島クルーズ」に参加~船内レクチャーまでの様子はこちら!
以下の記事はその続きです!

「硫黄島3島クルーズ」というイベントに参加してみた。

北硫黄島、硫黄島、南硫黄島の3島を眺めに行くという、類まれなるこのツアー。一般の人々が生で硫黄島3島を見られる年に一度の機会である。夜19時に父島を出港し、船内レクチャーも受けて準備は万端!明朝5時には南硫黄島を通過するらしい。

バードウォッチャーでも無ければ、軍事マニアでもない僕。自分でもいったい何に期待していたのかよくわからないが、「硫黄島を見る!」というだけのことにテンションが上がってしまい、なかなか寝付けなかった。

21時を過ぎても就寝の気配がない客室
21時を過ぎても就寝の気配がない客室
みんな夜空を見ていた!
みんな夜空を見ていた!

朝起きてびっくり!デッキには三脚、三脚、三脚!!

朝起きると、すでにまわりには人がいなかった。

最初に見る南硫黄島は朝6時ごろ通過予定。時刻は5時20分ごろ。一瞬不安になったが、別に寝坊はしていない。

予め買っていたパンをかじりつつ、寝ぼけ眼でデッキに出てみると、一気に目が覚めた。

ズラーーーーーっと三脚、三脚、三脚!!

ふだんのおがさわら丸ではありえない光景なのだが、高そうなカメラがずらりと並んでいた。

船は左回りで島をまわる。だからデッキも、進行方向左側だけが大混雑していた。みんな三脚の場所取りで必死だったのだ。

「しまった。こういうことか・・・」

余裕を持って起きたつもりだったのに、完全に出遅れていた僕。しばらく割り込めそうな場所を探していたが、40歳前後の良い大人2人が場所取りをめぐって本気でケンカしていたので(笑)、大人しく後ろから眺めることにした。

そんな人間の必死さも知らず、優雅に飛ぶ海鳥(カツオドリ?)。海鳥も船に近づくだけで撮られまくりだ。

隙間からなんとか撮影。

いよいよ南硫黄島が近づいてきた。

周りは僕よりも年上と思われる人たちばかり。いかにも高そうな一眼レフカメラを構えているが、僕は2万円もしないコンパクトデジカメでの撮影である。単純に周りはお金持ちなのか、それともこのイベントにそれだけ本気ということなのか。

例えば海鳥が頭上を飛ぶと、みんなが望遠レンズを海鳥に向ける。僕も海鳥を追ってデジカメを向けるのだが、安いデジカメを使っている自分がなんだか浮いているようにも思えてしまった。

「大人って凄い」

大学生だった僕は、このタイミングでそんなことを考えた。

午前6時ごろ、南硫黄島付近を通過

南硫黄島を通過。

お椀をひっくり返したような形で、こうしてみると、ごく普通の島のようにも見える。

船はゆっくり進むので、色々な角度から写真を撮ってみたくなる。そうすると、みんな動き回るので、結果的には朝早くから場所取りをする意味も無かった気がした。

生態系を調査するため、南硫黄島に上陸したと言うガイドさんの話を聞いた。一見すると、どこにでもある普通の島に見えるが、普通の島のように砂浜もなく、上陸はかなり難しいらしい。ある程度の場所で船を停め、そこからボートに荷物を載せて岩場に上陸したそうだ。

南硫黄島で拾ったという石を触らせてもらった。島が活火山だったころに噴出された軽石だそうで、見た目以上にかなり軽い。潮の流れに乗って伊豆半島や三浦半島に漂着することもあるのだとか。

こういう知識は、知ったところでこれから人生の足しになるとは思えないのに、聞けば聞くほど面白いし、聞いてよかったと思えてしまう。

ただただ、「へぇー」である。

ガイドさんの話はとにかく生々しい。パッと見ただけではわからないが、南硫黄島は小笠原諸島、硫黄島3島の中ではもっとも高い標高だそうで、かなり急な崖になっているらしい。写真のとおり、山頂付近は常に雲ができているため、なかなか晴れず、急な雨も多かったのだそうだ。そんな不便な場所で、10数人が2週間近いキャンプを張ったと言うのだから、かなりタフな調査だったろうと想像できる。

戦場だった島・硫黄島

南硫黄島が見えなくなってきた9時すぎごろ、逆方向には硫黄島が見え始めていた。

まず、見えてきたのが摺鉢山(すりばちやま)。

普通、島と言えば島の中心部が最高峰(山)になっているものだが、硫黄島は島の最南端のこの摺鉢山がボコッと膨らんでいて最高峰になっている。海底火山から噴出した砕屑物が、局地的に積もって山になったと教えてもらった。離島でこういったものは、世界中を見わたしてもあまりないらしい。

遠目から見ると、南端の擂鉢山だけが膨らんでいると分かる

遠目から見ると、南端の擂鉢山だけが膨らんでいると分かる

ja.wikipedia.org

ひと口に地形と言っても、「いろいろな成り立ちがあるんだなぁ」と思わされる。本当に奥が深い。

名前からも想像出来るとおり、この島からはところどころ蒸気が噴出していて、そこから硫黄の香りが漂っている。ただ、それはあくまで島に上陸して初めてわかるものだと思っていた。

ところが、島からけっこう離れたこの海の上でも、そのニオイがかすかに伝わってきて驚いた。蒸気の近くには温泉も湧いているらしい。

硫黄島をぐるっとまわっていくうち、徐々に建物が見え始める。

自衛隊の航空基地でもあるこの島。知識としてそれを知っていても、「一般の人々が上陸できない島の上に建物がある」というのはなんだか別世界のような、不思議な光景だった。

訓練中の飛行機(「おそらく戦闘機」と聞いた)が離陸していく。

日ごろ、都会の空を飛んでいく飛行機のような悠長な音でなく、風をつんざくような“キーン”という高音。例えばもし、この国が有事になると、こんな音を当たり前のように聞くのだろうか。

いかにものどかで、広々とした景色。9月下旬でもまだまだ暑いこの日、「あの砂浜から海水浴でもすれば気持ち良いだろうな」なんて考えていた。

第二次世界大戦末期の1945年2月、米軍はまさにこの浜から上陸し、日本軍を攻め入ったと聞く。のどかな浜にしか見えないこの場所から、激戦が始まったのだそうだ。このときすでに日本は敗色濃厚だったと言うが、そんな状況下において、この島で米軍を迎え撃つことの恐怖は想像を絶してしまう。

硫黄島を前にして黙とうと献花を捧げることになった。

ふだんのおがさわら丸からは聞いたこともないような、長い長い汽笛が鳴る。それに合わせて花を海に投げ、黙とうをささげた。

この日はとにかく暑く、それでいて爽やかな日だった。遊ぶには絶好の一日だっただろうし、小笠原を訪れる人はおそらく90%以上、遊ぶことが目的だと思う。

そんな日だったからこそ、「硫黄島が激戦地だったという事実」が、重く伝わってきた気がする。現在も、基地の周辺は戦争のあとがそのまま残っているらしい。遺骨や不発弾なども、一部はそのままにされていると聞いた。

これについては未だにどう言って良いかわからないが、この島がこの場所にあることの意味を色々と考えさせられてしまう。

どこにどうやって住んだの?北硫黄島

船はそのまま北硫黄島まで北上。

時刻は12時30分をまわっていた。

朝に見た南硫黄島と同じく、とにかく急な傾斜の島。

「取り付く島も無いと言うか、取り付く岸が無い」とガイドさんが笑いながら話してくれた。

ところが、こんな島でも戦前は人が定住していたそうで、さらには石器時代の遺跡まで見つかっているという。

かつての住居の跡を撮った写真を見せてもらった。ガイドさんたちは、この島でのキャンプもかなり苦労したらしく、「ここに人が住めていたのが不思議だ」と言っていた。

先人たちはこの島に何を求めてやってきたのだろうか。そんなことを考えると、なんだか不思議な気持ちになる。

この写真のあたりに集落跡があるそうで、辛うじて人が住めていたのだそう。

ど、どうやって・・・?

北硫黄島には絶滅危惧種の動物も多いらしく、かなり学術的価値の高い島だと教えてくれた。戦後、ほとんど人が上陸することのない島なのに、動物の中には絶滅が危惧される種がいるというのは不思議な話に聞こえた。そこにどういった理由があるのかはわからないが、色々な要素を受けながら、島は生きているのだと感じた。

昨日の出港からちょうど24時間、父島へ到着

北硫黄島を抜けると、船は父島に戻るだけ。ごちゃごちゃしていたデッキも静かになった。

船の上から夕陽を眺めるのも、いつもと違う格別な気分。

太陽が沈むと、空が不思議な光りかたをしていた。

父島に到着。

お疲れ様でした。

色々と刺激的な一日だった。

ただ、この一日が自分にとって何の意味があったのか、正直それはよくわからない。

海鳥や、硫黄島の自衛隊基地の写真を可能な限りズームで撮りたいと思っていたわけでもない。

それでも、船を降りると、僕はどこか満足していた。

その他、デッキ・船内の様子

ふだん降りることのない貨物置場にも降りられた
ふだん降りることのない貨物置場にも降りられた
珍しい海鳥が現れるとワッと沸く
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硫黄島3島クルーズ限定グッズが売られた即席売店
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硫黄島に関するパネル展示(硫黄島に常駐する人々の生活が垣間見える)
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海上自衛隊が発行する新聞だそう。4コマ漫画まであるのがちょっと面白い!
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硫黄島に関するパネル展示(戦前の暮らしについて。野球が盛んだったらしい)
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硫黄島

北に北硫黄島、南に南硫黄島がある。今回のツアーでは、北硫黄島を2周、硫黄島を1周、南硫黄島を2周した。

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