見送り船から見送りダイブ!感動の別れに“ジーン”とする。【旅レポ】

tanoshimasan

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小笠原名物!感動のお見送り

おがさわら丸のお見送り、小笠原太鼓が打ち鳴らされる
おがさわら丸のお見送り、小笠原太鼓が打ち鳴らされる

定期船が週に1~2往復の小笠原では、1度訪れると最低でも3泊するのが普通である。3泊もすれば、島で出会った人たちとも仲良くなっているわけで、船が島を出港する日にはちょっと名残惜しい。船が島を離れる時、きっと誰もがジーンとなっているはずだ。

何より注目すべきは、定期船・おがさわら丸が出港したあと!

おがさわら丸が出港、見送り船に乗る人はここから大急ぎ!

おがさわら丸が出港、見送り船に乗る人はここから大急ぎ!

大きなおがさわら丸に対し、島からたくさんの船が追いかけてくるのだ。これはそれぞれ島のツアー業者で、その船に乗った島民や観光客が、

「また来いよ!」

「いってらっしゃい!」

と、お見送りをしてくれるのである。大声を出す別れなんて、都会じゃきっと恥ずかしいはず。それなのに、この島では絵になるばかりか、ちょっと感動してしまう。これほど盛大なお見送りは、内地から1,000kmも離れた小笠原だからこそ、だ。

「思った以上に高い!怖い!」・・・で、腹を打ちつけた

見送り船に乗り、おがさわら丸を追う!

見送り船に乗り、おがさわら丸を追う!

僕が小笠原に初めて行くと決めたとき、小笠原に詳しい友人が

「小笠原に行くなら絶対2航海がいいよ」

と、熱く勧められた。2航海とは、島を出港する船を一度見送り、次に来た船で帰ること。そう、つまりこの「見送り船」に一度乗ることができるのだ!

1航海で3泊だが、2航海になると9泊になる。つまり、9泊がかりの滞在で初めて「見送る側」になれる、まさに長期滞在特典と言えるだろう!

そうして、初めて見送り船に乗った2007年の3月、僕は完全に舞い上がっていた。

見送り船は、おがさわら丸をある程度追いかけると、最後に船の上から海に飛び込む「見送りダイブ」というパフォーマンスが恒例だった。泳ぎに自信のない人は船から見ているだけだったが、僕は人並み以上に泳げる自信があったので、海に飛び込むこと自体は平気だった。

ただこの船が問題だった。実はけっこう高いのだ!5~6mはあるんじゃないか。

おがさわら丸に乗って帰るお客さんの前で、高いところから飛び込んで「いってらっしゃい!」と叫ぶ。ただそれだけのことなのに、高いところが苦手な僕はそればかりが気になり、完全に舞い上がっていた。

実はけっこう高い!

実はけっこう高い!

しかし、小笠原の島民や常連客は馴れた様子で次々飛び込んでいく。ちょっとオシャレな人は、回転したりヒネリを入れたり、鮮やかな技を決めていた。こうしてあっという間に僕の番が回ってきた。

おがさわら丸の乗客は、この珍しい光景を撮るべくカメラを構えている。500人近い乗客の注目の的だ。しかし、どうすれば良いかわからない。高い!でも、ここで躊躇するなんてカッコ悪い!僕の次に飛ぶ人が待っている。どうする?飛べ!飛べええええ!!!

―――――。

意を決した僕は、勢い任せに海へ飛び込み、へっぴり腰のまま見事に腹を打ちつけた。

上達した「見送りダイブ」!友達との別れの日、事件は待っていた。

飛び込んだあとは離ればなれに

飛び込んだあとは離ればなれに

初めて訪れた小笠原にすっかりハマってしまった僕は、その1年後の6月、父島の宿のスタッフとして長期滞在を決めた。

朝は洗濯に掃除、昼は調理にお客さんの対応と、それなりに忙しい日々。もちろん、おがさわら丸の出港日には「見送り船」だ。

すっかり馴れてしまった僕は、少々の高さは平気になったばかりか、「見送りダイブ」の際は、ワザを決められるまでに成長していた。前飛込みや宙返りくらいならお手の物で、正直、調子に乗っていたかも知れない。

この「見送り船」の最大の魅力はなんと言ってもその余韻だった。お互い船に乗って手を振っているのに、飛び込んだあとは離ればなれになる。もう二度と会わない人も多いだろう。だからこそ、この一瞬。ワザが上手に決まれば、

「おっ、あそこで飛び込んだ奴、上手かったね!」

となる(はずな)のだ。その余韻を楽しむのが、僕は好きだった。

ダイブ!

ダイブ!

そして、9月のある日、宿に来たお客さんの何人かと仲良くなった。7、8月は繁忙期で忙しかっただけに、お客さんと仲良くなれるというのは久しぶりだ。そのお客さんが、帰っていく。ここはキメるしかない。

一緒に写真を撮り、アドレスを交換。「またご飯でも行こう」と約束した。

おがさわら丸が出港した。「見送り船」もあとに続く。この日は天気が良く、海の青さが映えていた。近くではクジラがブロウ(潮吹き)をしている。小笠原の魅力の際立った風景と言っても過言ではないだろう。

僕は入念にストレッチを繰り返す。イメージトレーニングも完璧だ。

「いってらっしゃい!」

最後にみんなで叫んだ。さぁ飛び込むぞ!

―――――ガッ。

僕は船の先に足の指をぶつけ、そのままワザをキメる余裕もなく、海へ落下してしまった。きっと、かなりブサイクな落ち方だっただろう。そのまま、おがさわら丸は行ってしまった。



乗客が感動の別れにジーンとしているころ、僕は足の指を打ちつけてジーンとしていたのだ。ちょっとカッコが悪すぎる!

あの日仲良くなった友達とは、今も仲良くさせてもらっている。ただ、彼らの目に、あの日の僕の姿がどのように映っていたのか、気になって仕方がない。

見送り船の風景はやっぱり感動!
見送り船の風景はやっぱり感動!

おがさわら丸のお見送り@父島

見送り船に乗るには2航海以上が必須!

この記事に関する参考記事はこちら

 小笠原海運公式ホームページ
www.ogasawarakaiun.co.jp  

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