ライブ音楽と映像と語りを組み合わせたコンサート形式の講演を行ったのは、認定特定非営利活動法人 地球のステージ 代表理事でステージ案内役の桑山紀彦さん。世界の紛争、貧困、災害の現場を伝える活動を続けている。
イスラエルの正義とパレスチナの正義。高い壁。石を投げる子どもたちに実弾で応える監視塔——。この日のステージは、パレスチナ・ヨルダン川西岸で従兄弟を銃撃された少女たちの心のケア、津波被害を受けたスリランカでのボランティア活動のなかでの葛藤と「私たちにできることは何か」という問いかけ、ミャンマーの貧しい少数民族の少女が学ぼうとする思いと支える家族といったテーマに、津波から7年目の被災地で震災を語り継ぐ遺族たちと日本航空機墜落事故の遺族とのつながり、さらにはアジア太平洋戦争中に戦闘機乗りとして特攻出撃を待った経験を持つ桑山さんの伯父の物語を織り交ぜたものだった。
ひとつひとつの物語が、桑山さんというひとりの人物によって紹介されていくことで、遠く離れた地域のことも、ひと世代前のこの国のことも、自分たちとつながっているのだと身体にしみ入ってくる。他人事なんかではない。
医師である桑山さんは、震災直後、認定NPO法人ロシナンテスの川原尚行さんと名取市で一緒に医療活動を行った人でもある。帝国陸軍の少年飛行兵として特攻隊の一員となった桑山さんの伯父の姿は、自分の父親の70数年前の姿に重なる。かさ上げされて真新しい建物がたつようになった震災被災地について「悲しみ」を語った言葉は、私の知る多くの人たちの声そのものだった。
いや、ここでそんな個人的なつながりを開陳することなんか、ほとんど意味をなさないだろう。私たちすべての人にとって、地球がステージであるということ。私たちすべての人が同じステージの上に立っているということ。「地球のステージ」という舞台は、そのことをストレートに伝えてくる。タイトルそのままに。
終演後、桑山さんにお礼の挨拶した。「伝えることは大切です。がんばりましょう」と差し出された手の厚みとぬくもりは忘れないだろう。
世界中の人たちは同じ時代を生きる仲間だ。津波の被災地と、たとえばパレスチナの難民キャンプはつながっている。つなげるのは、同じステージに立っている自分にほかならない。
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