静岡県の沼津市と長泉町の境にある「鮎壺(あゆつぼ)の滝」は、とても珍しい滝です。
いったい何が変わっているかと言うと、それはロケーション。なんとこの滝、市街地の中にあるのです。地元自治体のWEBサイトによると滝の落差は約10m。水量によって変化はありますが、幅約90mに渡る川の段差から大小数本の滝が落ちています。
最初に鮎壺の滝の存在を知ったのは、「izunoshippo200000」さんが書いたぽたるページ。なんでも、河口から直線距離にして5~7kmほどの所にある滝というのはとても珍しいものなのだそうです。
記事を読んで以来、いつか見に行こうと思い続けていました。そして、今年の夏、ちょうど近くを通りかかったので立ち寄ってみたのです。
住宅が密集しているこのような場所にいったいどのような滝があるのだろう。と思いながら歩いて行くと・・・
びっくりです!街のど真ん中であるにも関わらず、ドウドウと水が落ちる本格的な滝があるのです!
この時はちょうど雨の少ない季節で水の量が少なかったのかもしれませんが、それでも想像以上です。
もう少し近くによって見ると、勢いよく流れ落ちる滝を見ることができます。結構な水量です。
横から見ると荒々しい滝の姿がよくわかります。
上流はどのようになっているかというと、
住宅などの周りの景色がなければ、ごつごつとした岩肌や水の流れの速さはまるで山奥の渓流のような様です。
川の水は勢いよく落差約10mの滝口へと流れ込みます。まわりに立っている高層マンションとの組み合わせがなんとも不思議な光景です。
なぜ、山奥でもないこのような平坦に近い地形に滝ができたのか。とても気になります。
その答えが「伊豆半島ジオパーク」のWEBサイトにありました。
鮎壺の滝がある黄瀬(きせ)川は御殿場付近にその源を発し、狩野(かの)川へと注ぐ全長約30kmほどの川です。大昔、富士山は今よりも活発に火山活動を行っていました。およそ1万年ほど前に大きな噴火をした際、大量の溶岩が黄瀬川に沿って流れ下ります。鮎壺の滝は、流出した溶岩のちょうど先端部分にあたるそうです。
その先端部分の先にある下流域や流れ出した溶岩の下には、それ以前に火山灰などが積もってできた柔らかい愛鷹ローム層があります。鮎壺の滝の下流域にある愛鷹ローム層は、長い年月をかけて黄瀬川を流れる水によって削りとられていきましたが、硬い溶岩部分は残ります。こうして溶岩の先端部分にあたる場所で黄瀬川に落差ができ、鮎壺の滝となったそうです。
大昔に流れ出した溶岩流の先端の一部であると知って見ると、鮎壺の滝がより一層興味深いものに映ります。
自宅アパートから車でわずか20、30分。マンションや住宅などが建ち並ぶ市街地にこのような本格的な滝が存在することに驚きです。街中にも関わらず、迫力ある自然と大地の営みを感じることのできる貴重な鮎壺の滝。近くに来られた際にはぜひ立ち寄られてみてはいかがでしょうか。駐車場はないので、訪れる際には電車が便利ですよ。最寄駅は徒歩5分のJR御殿場線・下土狩駅です。
鮎壺の滝
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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