長野と新潟の県境に位置する日本百名山の雨飾山(あまかざりやま)。その美しい響きの山名は、日本百名山の著者・深田久弥をも魅了している。現代においてもこの山の名に惹かれて登る登山者も少なくないという。
山名の由来は、山頂に祭壇を祭り雨乞いを祈願したことから来ているという説や、双耳峰の2つの頂の名称から来ているなどの説があり、はっきりとはしていない。
雨飾山について、深田久弥はその著書で「久恋の山」と述べている。3度目の挑戦でやっと憧れの山に登ることができたからだと、日本百名山には書かれている。
今回、その上信越の名峰を登ってきた。
雨飾山を訪れたのは8月13日。登り口は長野と新潟にそれぞれ1ヵ所ずつの計2ヵ所あり、長野県側の雨飾高原キャンプ場の登山口から登る。
その日の天気は山名が示しているかのように山頂付近が雲に覆われ、いつ雨が落ちてきても不思議ではないものであった。
雨飾山登山レポート
雨飾高原キャンプ場の登山口には50台ほど停められる駐車場がある。トイレが設置されており、登山届の用紙なども用意されている。
登山道はここから始まる。せめて雨だけは降らないことを祈り、いざ出発!
標識には山頂まで3時間半と書かれているが、登山地図によっては4時間との記載もある。歩く速さは人それぞれで一概には言えないものの、後者の時間で考えていた方がいいかもしれない。
登山口から歩き始めてしばらくは、所々に木道が設置されている平坦な道をゆく。小さな水の流れもあり、目を凝らして見ると魚も泳いでいた。
登山口から30分ほどの場所からいよいよ登りとなる。樹林帯の中の道を歩き、高度を徐々にあげていく。
1時間ほど歩くと、遠くに荒菅沢の雪渓が見えてきた。山の上は相変わらず厚い雲に覆われている。
ちなみに、この付近でばったりとカモシカに遭遇。カメラを向けようとしたらあっという間に森へ逃げ込んでしまった。残念。
荒菅沢の雪渓。真夏だというのに、まだ多くの雪が残っていた。近づくにつれ空気が冷たくなってくる。
沢の対岸に渡る必要があるのだが、渡渉ルートを少し迷った。白馬岳の雪渓などではコース上にペイントをしているがここはない。恐らく雪解けが進むにつれ、安全なルートが日々変わるためにあえてつけていないのかもしれない。
残雪が比較的しっかりとしていそうな場所を見つけて渡る。下の雪が抜けないか少し緊張。
ときおり雪の上をひんやりとした風が吹き抜けて気持ちがよい。まるで天然クーラーだ。
荒菅沢からは先は比較的急な上り坂となる。しかし、この辺りから高い樹木が減り、展望もよくなる。
雨飾山には難所と呼ばれる場所はないが、あえて一番険しいポイントをあげるとすれば、荒菅沢と山頂直下付近に広がる笹平との間にある、上の写真の場所だろう。
付近には木製のはしごが架けられた場所もある。信州の山のグレーディングによれば、雨飾山は中級者向けのCランクとなっているが、これは木製のはしごと雪渓の渡渉地点があるためだと思われる。
急坂を登りきると笹平に出る。笹平はちょっとした高原のような場所なのだが、ガスに覆われているために視界は10~20mほど。そのため、あたりの様子は全くわからない。
ほぼ平坦な笹平の登山道を15分ほど歩くと、再び急な坂道が現れる。山頂へと続く最後の登りだ。
その坂の上り始めの地点に、無数の高山植物の花(&咲いた後)がもやの中に咲き乱れており、幻想的であった。
最後の急登を15~20分ほど登ると、そこが雨飾山の山頂である。
しかし、この時は雲に覆われていたために眺望は全くなし。
お昼の弁当を食べながら、晴れることを期待をして待ち続ける。途中2、3度、ガスが薄くなり、一瞬だけ日本海が見えたがすぐに白い雲に閉ざされてしまった。
山頂には同じように眺望を期待して待つ登山者が他にもいたが、厚い雲に諦めて次々と山を下りていった。私は1時間半ほど粘った後、下山を開始した。
スタート地点の登山口を目指して、来た道を戻る。
しかし、山頂直下の急坂を下り笹平を歩いていると、ガスが薄れてきた。そして、急に視界がパァーと広がったかと思うと日本海が目に飛び込んできた。
突然のサプライズに驚き、そして喜びが爆発した。半ばあきらめかけていただけに、その光景はよりいっそう素晴らしいものに見えた。
少しのあいだ景色を楽しむと今度は山頂からの眺望を見てみたく、再び山の頂へ向かった。
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