海外旅行へ行く際、通常はダイレクトで目的地に向かいたいと思う。他国を経由して行く場合に乗継時間が10数時間もあったならうんざりしてしまう。
しかし、それがソウルならば話は違う。
先日、仁川国際空港でのトランジット(乗継)について紹介したが、ストップオーバー(途中降機)も大変魅力的で、あえてソウル経由のフライトを取りたくなってしまうほどである。
いったいソウルでのストップオーバーのどこがいいのか。2015年4月上旬に仁川国際空港で途中降機し、市内で韓国料理を食べてきた時のことを紹介したい。
至れり尽くせりの空港サービス
まずソウルでのストップオーバーで最初に感じた魅力は「入国手続きが簡素で早い」こと。
飛行機を降り、空港のターミナルビルに入ってから入国審査を終えるまでの時間は、空いていたせいもあるのかもしれないが15分程度だったと思う。素通りとはまでは言わないものの、感覚的にはそれに近いものがあった。
次に「質の高い観光情報を入手しやすい」。実は経由地であるソウルに関する情報はほとんど持っていなかった。
とりあえず市中心部にある「東大門(トンデムン)」へ行き、門を見てから近くの「広蔵市場」で韓国料理を食べる。そして東大門までは地下鉄で行ける。といった程度のことしか知らず、鉄道の具体的な乗り方などはよくわかっていなかった。
そのため、入国するとまず最初に空港ターミナルビル内にある観光案内所へ行ってみた。その際にありがたさを感じたのが、市内観光マップや鉄道路線図などの情報と日本語ガイドの存在だった。
地図は詳細で見やすく、路線図は一目で乗り換え駅などを把握できた。おまけに日本語で書かれたものもある。
一番助かったのは日本語を話すことができるガイドがいたことだ。電車の乗り方やソウルで晩御飯を食べたいがいったいどの程度お金があれば足りるのか。といった情報をとても懇切丁寧に教えてくれる。
これらのサービスだけ素晴らしいと思っていたのだが、さらにびっくりしたのが、「ソウル市内ツアー」である。
ツアーは空港からバスでソウル市内へ行き、世界遺産・昌徳宮などの主な観光名所を巡るという。そして、驚くべきことにこのツアーはなんと無料なのだ。観光スポットでの入場料は必要なものの、基本費用はかからない。しかもガイドまで付くという。
ツアーは乗継時間や興味に応じて、1~5時間程度のツアーが7つもある。仁川国際空港がアジアのハブ空港となったのが納得できるサービスである。
今回はツアー開始時間などの関係で参加できなかったが、機会があれば利用してみたいと思う。このようなサービスがあるならば、あえてソウル経由でしかも乗継時間の長いフライトを予約したいと思ってしまう。
ソウルの鉄道リポート
観光案内所で必要な情報を得ると、ATMで韓国通貨、ウオンを降ろして鉄道駅へと向かう。
仁川国際空港駅からソウル駅までは各駅電車で約50分(※直通列車は約40分)。そこから路線を乗り換えて5駅目にある東大門駅を目指す。
改札に行くとICカード型乗車券の販売機がある。韓国語の他に日本語で表示することもできる。
購入は日本語をタッチして表示を切り替え、あとは目的地の駅を選択するだけ。東大門駅に行くにはソウル駅で路線の乗り換えが必要であるが、乗車券は通しで買うことができる。
駅には名称の他に「123」といった固有の3ケタの数字があり、その番号から検索して購入することもできる。
表示された金額を投入するとICカード型乗車券がでてくる。
ICカードは購入時にデポジットを支払っている。補償金は使用後に販売機や窓口でカードを返却すれば戻ってくる。
駅は日本の地下鉄をよく似ている。ソウル中心部と結ぶ空港鉄道は2007年に開通したために新しい。
利用した駅を見た限りでは、全ての駅にホームドアが設置されているようであった。日本でも導入が進んでいるが普及率では韓国の方が進んでいる。
車内の電光掲示板には日本語も表示されるのでわかりやすく、海外の電車に乗っている感覚が薄い。
ソウル駅で地下鉄を乗り換えて東大門駅へ。駅名を表示している看板には日本語も記載されているのでわかりやすい。
空港駅から東大門駅までの所要時間はおよそ1時間強。
ソウルの電車は日本の地下鉄に似ている上に日本語表記もあり、とてもわかりやすく、安心して乗ることができた。
ソウル市内リポート
地下鉄駅を出ると目の前に東大門があった。ちなみにこれは通称であり、正式名称は興仁之門(フンインジムン)という。およそ600年前、ソウル市中心部を囲む様に城郭が造られ、大きな門が東西南北に1つずつ計4つ設けられた。東大門は東側に造られたもので、日本の重要文化財にあたる「宝物」に指定されている。
ソウル市内にある歴史的建造物の多くは日中しか見れないのに対し、東大門は24時間見学が可能であり、夜に到着した私にとってはうってつけの観光スポットであった。
門を見た後、今回のストップオーバーでの最大の目的である韓国料理を食べに「広蔵市場」へいく。
同市場は韓国で最初にできた市場で、土産物や衣料品、食料品などを売る店が数多く軒を連ねている。
ソウルでストップオーバーをすることになった際、韓国通の知り合いに「夜遅くまでやっていて、安くてうまい屋台はどこにある?」と尋ねて教えてもらったのがこの広蔵市場だったのだ。
市場には東大門から歩いて15分ほどで着く。通りを歩き、良さげな食堂を見つけて入ってみた。店主は片言の日本語を話す気さくなおじさんであった。かねてから食べてみたかった本場のビビンバを注文する♪
出てきたのはユッケビビンバ。
韓国と言えばキムチ。ということでまず最初に箸をつける。ほどよい酸味と濃厚な味にすぐに全部食べてしまった。すると店主の男性が「どうぞ」と新しいのを持ってきてくれた。
次にビビンバをしっかりとかき混ぜて食べる。あっという間にたいらげた後、しばらく話をして店を出た。
屋台が軒を連ねる通りをブラブラ歩いていると「麻薬のり巻き」と書かれた屋台があった。気になって見ていると美味しそうなトッポギが目に付いた。つられるように屋台のイスに腰を降ろしてトッポギを注文する。
食べ終わると今度は「麻薬のり巻き」が気になって仕方なかった。日本のテレビ番組でも取り上げられたと書かれた小さなボードが店にかけられている。
なんとも物騒な名前だがいったいどのような味がするのだろう。そんなことを考えながら見ていると店のおばちゃんが
「マヤクノリマキ。オイシイヨ」と日本語で言った。
腹はすでに十分満たされていたが、その言葉でつい注文してしまう。
日本ののり巻きとの大きな違いは、「からしソース」につけて食べるところ。ピリッとした味に「美味しい美味しい」と言いながらパクパクと食べいると、店のおばちゃんが「ほら、サービスだよ」といった具合にのり巻きを追加してくれた。増量サービスは一度では終わらず、残りが少なくなったところで二度目があった。
全て食べ終わると御礼を言って店を後にする。
東大門駅まで歩いたところで、空港へ戻ろうか思ったのだが、韓国ウォンがまだ残っている。
残しても仕方がないと思い、駅近くの食堂に入った。
メニューを見て余っているウォンで食べられるものは何かと探す。すると「タコのビビンバ」なるものがあった。美味しそうだ。最後の韓国料理は「タコのビビンバ」に決りだ。
食べ終わると終電に乗り遅れそうな時間だった。はちきれそうな腹を抱えるようにして急いで駅へ向かう。
来た時と同じ経路で空港へ戻り、ストップオーバーでのソウル観光は終わった。
がんばれ!日本の国際空港!
往路のトランジットといい、復路でのストップオーバーといい、実際にソウルの仁川国際空港を利用してみると、至れり尽くせりの質の高いサービスに感動に近いものを感じた。
また、空港だけではなく、市中心部へのアクセスの良さや韓国料理の誘惑もある。これなれば、誰もがソウルの空港を利用したくなる。アジアのハブ空港になるのは至極当然のように思えた。
一方、日本の国際空港を見てみると世界的に高いレベルにあるとは思うものの、利用する旅行者や航空会社にとっては、まだ仁川国際空港に一歩及ばない点があるように感じる。
しかし近年、危機感を持った成田などの国際空港は改善をしていると聞く。数年後、日本の空港もアジアのハブ空港として多くの旅行者を笑顔にしてくれる存在になってほしいと思う。
ソウル・東大門
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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