統計データから見る「東日本大震災の被害」と「東北の復興状況」

sKenji

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来月11日で東日本大震災から4年が経ちます。地震発生当初は被災地に関する様々な情報が報じられていたものの、ここ1、2年は以前ほど震災に関するニュースを見かけなくなりました。地震発生からもうすぐ4年が経過するにあたり、公表されているデータから、東日本大震災の被害と復興状況を見てみます。

東日本大震災の被害状況

東日本大震災の被害状況については、国の複数の機関から公表されています。下記は消防庁から発表されている最新の被害状況です。

■消防庁(平成26年9月1日公表)
○人的被害
 死者:19,074人
 行方不明者:2,633人
 負傷者:6,219人

○住家被害
 全壊:127,361棟
 半壊:273,268棟

 平成 23 年 ( 2011 年 ) 東北地方太平洋沖 地震 (東日本大震災) について ( 第 150 報):消防庁災害対策本部
www.fdma.go.jp  

警察庁では下記のように公表しています。亡くなった方の人数が消防庁と大きく異なるのは、警察庁が震災関連死を含めていないなど、集計する基準が異なっているためです。

■警察庁(平成27年1月9日公表資料)
○人的被害
 死者:15,889人
 行方不明者:2,594人
 負傷者:6,152人

○家屋被害
 全壊:127,531戸
 半壊:274,036戸

 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置:警察庁緊急災害警備本部
www.npa.go.jp  

東日本大震災からの復興状況

東北の復興状況について、復興庁などが公表している資料から「住まいの環境」、「災害廃棄物処理の状況」、「被災地の産業の現状」の3点に絞って統計情報を見てみます。

 復興の現状:復興庁
www.reconstruction.go.jp  
 復興の現状と課題(平成27年1月):復興庁
www.reconstruction.go.jp  

■住まいの環境について

○避難者数:239,341人(平成26年10月時点)
4年が経とうとしている現在も、住み慣れた土地を離れて暮らしている方が約24万人もいます。そのうち原発事故の影響などにより、福島県から避難された方は平成26年12月時点で約12万人となっています。避難先は民間住宅や公営住宅のほか、仮設住宅に住んでいる方が平成26年9月時点で89,327人います。

○住宅再建に関する進捗率(平成26年3月時点)
 ・高台移転による宅地造成:4%(※想定戸数:20,836戸)
 ・災害公営住宅(※1):8%(※想定戸数29,075戸。福島県は、全体計画が未策定のため進捗率は暫定値)

地震発生から3年以上たった時点でも、進捗率はかなり低いものとなっています。しかし現在、「高台移転による宅地造成」と「災害公営住宅」はそれぞれ約9割が着工、約8割が着手しており、平成28年3月の進捗率の見込みが49%と67%となっています。決して高い進捗率とは言えませんが、住宅再建はこれからやっと本格的に始まると言えるのかもしれません。

※1 災害公営住宅とは、公営住宅法に基づき県や市町村が整備し、自宅を失った被災者に安い家賃で恒久的に貸し出す住宅。東日本大震災では、国の復興交付金から建設費の8分の7がまかなわれる。維持・管理費は自治体の負担。入居に所得制限はないが、家賃は所得によって異なる。 (出典元:2013-09-20 朝日新聞 朝刊 3社会)

■災害廃棄物(がれき)処理の状況
東日本大震災では太平洋沿岸部を中心に13道県で災害廃棄物(※1)約2千万トン、津波堆積物(※2)約1千万トンが発生しています。ほとんどの道県では処理が完了しています。しかし、福島県では原発事故の影響により、処理の進捗率は災害廃棄物で74%(※3)、津波堆積物で48%(※3)となっています。

※1 災害廃棄物とは、地震や津波、洪水などの災害に伴って発生する廃棄物のこと。倒壊・破損した建物などのがれきや木くず、コンクリート魂、金属くずなど。(出典元:緑のgooより一部抜粋)

※2 津波堆積物とは、津波によって運ばれてきた砂や泥が陸上に堆積したもの。(出典元:デジタル大辞泉)

※3 環境省が公表している最新(平成26年3月末時点)の資料による

 東日本大震災における災害廃棄物処理について( 概要 ):(出典元:環境省)
kouikishori.env.go.jp  

■被災地の産業の現状について

復興庁が平成26年11月に公表した資料に、被災地の産業の現状についてのアンケート調査結果が記載されています。アンケートは、グループ補助金(※1)の交付先企業に震災前と現在の売上状況の比較をたずねたもので、下記のような結果でした。

○グループ補助金交付先アンケートでは、現在の売上げ状況が震災直前の水準以上まで回復していると回答した企業の割合は、40.3%。
○業種別に見ると、震災直前水準以上に売上げが回復しているという割合が最も高いのは建設業(71.5%)、次いで運送業(48.3%)。最も低いのは、水産・食品加工業(19.4%)、次いで卸小売・サービス業(31.8%)。

復興の現状(出典元:復興庁)

震災前と後との売上状況(出典元:復興庁)
震災前と後との売上状況(出典元:復興庁)

アンケート結果を見ると、復興事業に沸く建設業の状況は良好なものの、水産・食品加工業においては、多くの企業が震災前より売上が落ち込み、震災から3年以上たった時点でも5.2%の企業において売上げが1割以下となっています。

農業及び漁業について、農林水産省の公表資料に、震災前(平成22年)を100とした県別の「農産物販売収入、農業所得」及び「水産物販売収入、漁業所得」の水準を調査したものがありました。

農産物販売収入、農業所得の水準(出典元:農林水産省)
農産物販売収入、農業所得の水準(出典元:農林水産省)
水産物販売収入、漁業所得の水準(出典元:農林水産省)
水産物販売収入、漁業所得の水準(出典元:農林水産省)
 東日本大震災による津波被災地域における 農業・漁業経営体の経営状況について (平成25年結果)
www.maff.go.jp  

※1 グループ補助金とは、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業に応募し、認定を受けた事業者のグループに対して交付される補助金。

[補説]中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業は、東日本大震災で被災した中小企業などの施設・設備の復旧・整備を支援するための制度で、国と県が連携して補助を行う。 (出典元:デジタル大辞泉)

グラフにある農業所得とは、農産物販売収入から農業に係る現金支出を控除したものであり、補助金等の収入は含みません。また漁業所得とは、水産物販売収入(共同経営に従事して得られた労賃を含む。)から漁業に係る現金支出を控除したものであり、補助金等の収入は含みません。

農業所得及び漁業所得について見てみると震災の年は大きく落ち込み、その後おおむね回復してきてはいます。しかし、それでも震災前と比較すると大きく落ち込んでいることには変わりはないようです。特に福島県の農業所得は震災前の半分で、「水産物販売収入、漁業所得の水準」の記載がないのは調査対象から除外されているためです。

震災からもうすぐ4年が経過します。しかし、まだ復興にはほど遠い東北の現状が、統計データからも見えるのではないでしょうか。

参考WEBサイト

 復興庁
www.reconstruction.go.jp  
 農林水産省/ホーム
www.maff.go.jp  

紹介:sKenji

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