原発事故による風評被害について

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そもそも風評被害の根っこは何?

はじめに、風評被害とはどういう状態のことを指すのかを簡単に定義します。この場合の「風評」とは、噂やデマなど事実に基づかない情報です。「被害」は、こうした情報により、消費者に「不買」や「買い控え」の現象が起き、また海外からは「輸入禁止」措置が取られることによる生産者側の経済的打撃です。

風評被害の当事者の方々は、実際の原発事故の被災と、風評被害という被災のダブル被災となっているのが、今の現状です。

風評被害が起きている原因は何かということを見つめなければなりません。
まず、「風評」の対立軸に「真実、事実」があります。「真実、事実」が見えないほど「風評」が拡散します。不安心理が拡散のスピードをあげ、範囲を広げます。また、こうした「風評」は、メディアの報道量にも比例していきます。ネットでの情報伝達は、恐ろしいほど早くて広範囲です。

 安倍晋三首相は17日、東日本大震災で被災した福島県を訪問し、住民の健康管理に当たる医療機関や、風評被害に悩む農家などを視察した。首相はこの後、福島市内で記者団に「根拠のない風評を払拭(ふっしょく)していくため、正確な情報を分かりやすく提供し、国として全力を挙げて対応していく」と指摘。東京電力福島第1原発事故による住民の健康不安や、農業・観光産業への対策を強化する考えを強調した。(時事通信)

YAHOOニュース「正確な情報提供を」=風評被害対策に全力―安倍首相福島視察 (2014/05/17)

原発事故の風評被害対策は、正確な情報開示とPRです。ところが、こうした対策が、なかなか功を奏さないとすれば、そこには原因があります。正確で理解しやすい情報開示により国民の不安が払拭され、PR、キャンペーンによって気運を高めて購買意欲を向上させる。政府がやろうとしていることは、決して間違えていません。やろうとしていることは間違えていないのですが、やっていることが正しいのかを、国民が疑問視しているから、対策が刺さらないのです。

今回の原発事故は、津波による事故発生当初から、政府や東京電力を含む原発関連の団体・委員会や原発擁護派の学者や評論家(芸能人も含む)、すべてに国民が不信感を持ちました。

4年前にどのような情報開示がされていたか、どのような報道がされていたか、報道の特集番組などで、どれだけ「安全」という人がいたか。本当に安全だったのなら、今日風評すら立たないではないですか。

結局は、全く安全ではなかったために、実被害が生じ、今は安全と思われるものまで、信じてもらえなくなっているのです。ですから「不安心理」よりも「不信感」の方が圧倒的に根強いのです。この不信感を払拭する事こそが最重要過大なのに、あたかも風評がけしからんばかりにしか考えられないから、いつまでも収まりがつかないのです。本当にけしからんのは、「風評」ではなく国民や海外にまで「不信感」を植えつけた人たちです。

取材もできず、報道からしか情報が得られない国民目線の話をします。
事故当時の与党は民主党です。菅首相であり、状況を逐次伝えていたのは、枝野官房長官でした。東電からの情報が、かなり隠蔽された情報であったという印象を受けています。そもそも、原発を推進してきたのは、当時下野した自民党ですから、いざという時は、「原発村」は、民主党ではコントロール出来ないのかなという印象を受けました。それでも国民は信じたいのです。いくらなんでも、これだけの事態においては、企業の論理や利害は優先せず、正しい情報開示のもとに、東電を筆頭に原発村の方々と政府は一枚岩で対応していると。

簡単に裏切られちゃいました。避難指示のエリアは、日に日に広がります。メディアでは、原発擁護派の論者たちが、ことあるごとに過剰反応だとか、放射能は遠くまでいかないとか、誰も死んでないのに騒ぎすぎとか、ヘタすりゃただ放射能が漏れた以外に他の実害はないとか。そしてまた騙されちゃいました。特に気の毒なのは、避難対象地域の住民です。ここまで避難すれば安全、いやもう少し遠く、また少し遠くと。結局最初の指示では安全ではなかったのですよね。何故こんな事が起きるのか。政府が無能?東電が無能?原発擁護派が無能?

答えは全部無能です。特に東電含む原発擁護派は、無能で、無責任。厚顔無恥とはまさしくこのことです。政府はこうした人達からの報告を信じて(信じるしかなかったと思いますけど)行動するしか出来なかったことが無能と言わせていただく所以です。

ではそれまで意気消沈していた野党自民党はどうかといえば、ここぞとばかりに与党を攻め始めました。国民の最大の関心は、自民党の復活ではなく、原発事故に対する対処と震災復興のみなのに、国会では政権奪取が見え隠れします。

安倍首相、勘違いしては困りますよ。原発を推進し、こうした問題ある構造が築き上げられてきたのを容認してきたのは、あなた方自民党ですからね。国民から見ると、自民党が加害者で、民主党が政治的な被害者に映っている人もかなり多いと思いますよ。それでも自民党に期待したのは、利権も含めて絡み合ってきた仲間同士だろうから(だろうです、断定はしません。国民がそう思っているだろうという代弁です。)まだ、自民党の方がコントロールできるのではないかという期待があったと思います。

消費税問題、社会保障問題、外交問題等々、国会での野田首相と安倍代表との対決シーンを見ながら国民が思っていたのは、「そんなのいいから、福島、原発、震災復興、がれき処理」なんです。

原発の賛成、反対を論じると、原子力発電のお陰で日本の経済は・・・というすげ替えた話が登場するので、ここでは避けます。「風評被害」がテーマですから。

ところが、自民党に代わったところで、東電の隠蔽体質は変わりませんでした。

世界に向けて、一国の首相が「アンダー・コントロール!」と声高々に宣言したのにも関わらず、蓋を開けたらこの有り様。

2月26日 20時25分 

東京電力福島第一原子力発電所2号機で、原子炉建屋の屋上にたまった比較的高い濃度の汚染水が排水路を通って海に流れ出していたことが明らかになりました。
東京電力は、この排水路の放射性物質の濃度が雨のたびに上がっていることを去年4月から把握していましたが、十分な対策を取らず、公表もしていませんでした。(国枝拓記者)

NHK NEWS WEB 汚染水はなぜ海に流出したのか (2015/02/26)

また騙されちゃいました。とりあえずは東電に。

「アンダー・コントロール」の宣言が2013年9月、東電が今回の状況を把握し始めたのが2014年4月、そして発表が2015年2月24日、イギリス王室のウィリアム王子が被災地訪問も含め来日したのが、2日後の2月26日。
まさか、東電の発表のタイミングも「アンダー・コントロール」のうちだったのかとも疑いたくなります。ウィリアム王子が帰国した後の発表では、イギリス王室に対して面目が立ちませんし、あまり早い発表では、訪日中止の可能性がある。だからこの日が最適とばかりに。

という疑いの目を持ちやすくなっているんです国民は。数々の裏切りと騙しによって傷ついていますから。それとも「アンダー・コントロール」は「ワンダー・コントロール」の発音ミスだったのかな。

「アンダー・コントロール」と宣言してから、こうした事故(事象と隠蔽)が出て来るから、首相の宣言や政府の公式発表の方がデマになるのです。それこそ風評被害の元だと。

今おきている「風評被害」の一番の対策は、ともかく一刻も早く「信頼回復」をすることです。

そこで一例を示します。

 東日本大震災の被災地復興に向けた積極的支援「福島県広野町産の新米を食べて応援しよう!(第2回)」
www.mofa.go.jp  
 農林水産省/仙台合同庁舎食堂における福島県産米の使用、地下売店での福島県産品の販売及びキックオフイベント「国の関係地方機関の長等による食事会」について
www.maff.go.jp  

外務省の社員食堂での復興支援キャンペーン「福島県広野町産の新米を食べて応援しよう!(第2回)」が良い例です(素晴らしい例という意味ではなく、説明するのに丁度良いの意味)。
キャンペーンそのものを揶揄するわけではありません。気に入らないのは、そこに期間があることです。しかも2日間という短さ。さすがに農水省は1ヶ月ですが、それでもどうかとは思っています。

このキャンペーン、
①日替わり定食に福島産の新米が使われたわけですが、米は広野町から各省庁食堂事業者へ寄贈されたものなんですね。呆れちゃいます。「風評被害」対策に取り組んでいるのは被災者で被害者でもある生産者側なんです。
②一人の職員が、2日間でいったい何食の日替わり定食を食べるのでしょうか。答えは簡単、最高2食です。

寄贈された米でキャンペーンをするから、こういうことになるのです。広野町のせいではありません。「風評被害」で大変なのに寄贈しているわけですから。それでは長い期間キャンペーンするだけの米の量は足りないでしょう。

一般家庭で米を買えば、家族一人あたり2食ばかりでは到底終わりません。
「お役人さんは2食だけ食べて大丈夫だって言うけど、とりあえず我が家はやめときましょうね」となります。
最高2食しか食べないようなキャンペーンは、2食ぐらいなら食べても平気としか取られないのです。

もともと信頼を失っているわけですから。信頼を失ったのは生産者ではなく、政府や東電やお役所が信頼を失っているのです。なのに何故、生産者側が自己の負担で米を寄贈しなければならないのか意味がわかりません。この感覚だから見えていないことが多いのではないでしょうか。

そもそも寄贈されている神経を疑います。食堂事業者への寄贈で、直接各省庁に寄贈されたものではないとの反論はしてほしくありません。こうした時期なんですから、各食堂事業者に対して「風評被害」で困っている産地の米の使用義務を与え、従わなければ業者から外せば良い。官僚が積極的に食べない物は国民が食べないので各省庁の食堂では、「風評被害」払拭につながる産地の米以外は使用禁止の勅を発すれば良いのです。使用しない業者は、外れていただき、食べたくない官僚や職員は、省庁を辞職していただく。乱暴ではありませんよ。国家公務員の責務です。

生産者に対しては、心から応援したいと思っている国民が多いのです。それに水を注す不届き者がいて、それを管理・指導できない政府や行政がいるから、行動に移せないのです。早く解決しなければなりません。他の地域で同じような事故や災害が発生するかもしれないからです。

こうしたキャンペーンをするのなら、「風評被害」が収束するまで続けていかないとダメです。「風評」の回復より、「信頼」の回復のほうが今は一番効果がある対策です。

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