東日本大震災・復興支援リポート 被災した女川で聞いた言葉

iRyota25

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女川で震災直後からガソリンスタンドを再開してきたKさんに話を聞いた。

「オレの考えの方がおかしいのかな?」と、いつもの決め科白を織り交ぜながら今回も辛口の言葉が飛び出した。

商売ってのは、山が高いほど谷も深くなるものなんだ

漁船の共同購入だって?そんなもの、長く続くワケないだろ。漁師なんてみんな、自分がやりたいように漁をするもんだっちゃ。人に指図されたくねえから1人でやってきたのが、震災だからって「はい、みんなで仲良くご一緒に」なんて、どだい無理な話だ。

オレは今日作業してえ。いや、今日はオレが使う番だ、なんて話になって、調整しながら仕事するなんてどう考えたって無理だちゃ。エンジンとか漁具とかの具合が悪くなった時はどうする。アイツが使った後におかしくなったとか、いざこざばっか出てくるだろ。

どうしても苦しかった当初は、限られた船をみんなで使うってことはあったろうが、本当に生活を再建する気があるんなら、何としてでも自分の船を手に入れる。自分のやりてえように仕事する。そこからしか何も始まらないだちゃ。

漁師の仕事だけじゃねえよ。復興商店街とかできてるけど、行政とかに建物をタダで使わせてもらって店出して、そのうち何軒が「元々しっかり商売していた」ところだ?

震災前から半分シャッター下ろしてたところが、家賃がタダだからって店をもう一回始めて、いったい何を売る?

あちこちから大型バスでやってきて、上から目線で「被災地は可哀そうですね」なんて言ってる衆を相手に商売しても、家賃補助が出てる間だけのことだちゃ。地元の住民がふだんから利用してるような店のほかは、仮設商店街の期限が切れたところでおしまいだろうな。

ホントにやる気があって、金もあるなら、どんな状況でも何とかやっていくだろう。女川のスーパーなんか津波で何人も亡くなったが、跡継いだ人らが移動販売とか配達とかで走り回ってるだろ。やる気はあるが金はねえって人でも、なんとか用立てる工夫をして始めてるちゃ。オレが配達してる浜の養殖漁師とかだって、去年ギンザケを再開した時にはそれまでの何分の一とかだったが、なんとかかんとか工面して少しずつ戻してきてるみたいだぞ。

オレみたいに借金があるやつは、金がなくてもとにかく仕事するほかあるめぇ。でも、みんなそうだっちゃ。マイナスからなんだからな。

ほかのガソリン屋はけっこう忙しいみてえだぞ。あちこちで土木工事やってるだろ。ブルドーザーとかパーショベルとかはアブラを喰うからな。ローリーを新調して現場を走りまわって稼いでるみてえだ。

オレか?

オレはそんなことしねえ。土木工事なんていったって、いいのはあと1年とか2年。土木が終わって建築が始まっと、そうはアブラも売れなくなる。オレも経験したことあるんだ。大きな工事さ入って、まだ続くかな、もう少し続くかなと思ってるうちにプツリと終わる。欲かいてクルマとか道具とかいろいろ買い込んでも、けっきょく元はとれねえ。

それにな、商売ってのは、山が高いほど谷も深いものなんだ。

復興バブルなんか、いらねぇ。自分の身の丈に合った仕事を続けて行くことしかねえんじゃねえか。オレはそう思うよ。

工事現場を走りまわるローリー(Kさんのお店のクルマではありません)

●TEXT+PHOTO:井上良太

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