先日、中伊豆にある「万城(萬城)の滝」へ行ってきた。伊豆を代表する滝といえば「浄蓮の滝」が有名であるが、万城の滝も決して引けをとらない名瀑である。大変豪快であり、男性的な印象を受ける滝である。
張り出した岩の上から流れ落ちる姿が実に豪快!
伊豆半島の中央部に位置する「万城の滝」は、天城連山に端を発する地蔵堂川に架かる直瀑である。高さ20m、幅6mあり、別称「裏見の滝」とも呼ばれている。別名が示すように、以前は滝の裏側に回り込むことができたという。しかし、現在は崩落の危険があるために、残念ながら立入禁止となっている。
同滝の最大の特徴は流れ落ちている崖の岩に、柱状節理(ちゅうじょうせつり)と呼ばれる火山活動の跡が見られることである。
火山などから流れ出た溶岩は、冷えて固まる時にその体積が小さくなる。その際、固まった岩石に六角形や五角形などの柱状の割れ目ができることがある。これが「柱状節理」であり、水を抜かれて乾いた田んぼの表面にできる亀裂と同じ原理だそうである。
万城の滝では、この柱状節理の岩盤がオーバーハングするように張り出し、その上から飛び出すように水が流れ落ちている。実にユニークで豪快な滝であり、見る者を圧倒する。見た瞬間のインパクトの大きさに関しては、浄蓮の滝以上のものさえ感じる。
なぜ、ジオサイトに登録されていないのか?
火山活動の跡を見ることのできる「万城の滝」。当然、伊豆半島ジオパークのジオサイトのひとつとして登録されているのかと思いきや、されていない。
調べてみると、どうやらもろくなっている柱状節理の崩落を防ぐために、岩と岩の隙間や崖の一部をモルタルで固めて補強工事を行ってしまったことに原因があるようだ。現在の「万城の滝」は人の手が加わった滝であり、自然の滝の姿とは言い切れないためにジオサイト登録が見送られたそうである。
この補強工事については批判的な意見も少なくないようである。自然のままの姿を見たいという思いや崩壊も自然の摂理という考えがある一方、安全性や張り出した岩から水が流れ落ちるという同滝の特徴の保全について考えると、必ずしも工事の否定もできない。
ただ、補強工事が行われたとはいえ、工事前の姿を知らずに初めて同滝を見た私にとっては、現在の滝も十分に見ごたえがあるもので、崖の一部を固めた箇所以外はそれほど気にはならなかった。
滝付近にはワサビ田が広がり、近くには名所も多い
万城の滝付近には、滝が架かる地蔵堂川沿いにそって散策路があるので歩いてみるといいかもしれない。中伊豆は日本屈指のワサビの生産地としても知られている。滝付近にも広大なワサビ田が広がっており、眺めがら歩くだけで癒される。
また、滝から20~30kmほどの場所には、浄蓮の滝、河津七滝(かわづななだる)、天城隧道(旧天城トンネル)などの見どころも点在しているので、時間が許すならば一緒に見てまわるのもおすすめである。
万城の滝。なぜ日本の滝百選に選ばれなかったのか。選ばれても不思議でないと思うほどの滝である。静岡県民としてはぜひ、この伊豆の名瀑を訪れて見てほしいと思う。
万城の滝
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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