天城山は伊豆を代表する山で、日本百名山に名を連ねている。花の百名山にも選ばれており、4月にアセビ、5月にはシャクナゲが咲きほこる。天城山とは、万三郎岳を始めたとした連山の総称のことで、天城山という山があるわけではない。
個人的には、静岡県に引っ越して来た際に、絶対に登ろうと思った山である。昨年秋に登るつもりでいたものの、多くの登山者が、アセビやシャクナゲが咲く時期の登山を勧めていることから、花咲く季節を待っていた。
そして、先日5月25日、シャクナゲが見ごろを迎えているとのことなので、登りに行ってきた。天城山、花の山と呼ばれるにふさわしい姿を見せてくれた。
天城山について
天城山は、伊豆半島の中央付近にある。標高1,406mの万三郎岳(ばんざぶろうだけ )を最高峰として、万二郎岳(ばんじろうだけ)、遠笠山(とおがさやま)などを総称して、天城山と呼んでいる。
森林限界線を超え、眺望の良い山が多い百名山の中で、天城山は山頂まで鬱蒼した木々に覆われている。しかし、だからといって魅力がないというわけではなく、森や木々が持つ美しさを再認識させてくれる山である。花の百名山にも選ばれるだけあり、季節になると、アセビ、シャクナゲ、ツツジなどの花が咲き乱れる。
登山コースは、八丁池から万二郎岳へと続く縦走路のほか、天城高原駐車場前にある登山口から、万三郎岳を周回するシャクナゲコースなどがある。天城高原駐車場はハイカー専用の駐車場で、天城高原ゴルフ場横にある。
天城山を登る
登山者の多くは、シャクナゲコースを利用する。私も同コースで天城山を登ることにする。
登った日は、シャクナゲが一番の見ごろをむかえていたこともあり、多くの登山者が訪れていた。午前10時半に天城高原駐車場に着いたときには、すでに満車となっており、道路の路肩まで数多くの車が停められていた。花のシーズンに天城山を登る場合は、登山口から離れた場所に駐車せざるを得ないかもしれない。
登山道入口は、駐車場前の道路を渡った所にある。入口から20分ほどで「四辻」と呼ばれる分岐点にでる。この分かれ道を起点にして、周回するようにシャクナゲコースはある。私は、地図上で見ると、反時計回りでシャクナゲコースを歩くことにした。天城山(シャクナゲコース)は99%が樹林帯の中で眺望はほとんどないに等しいが、その代り、森と木々が魅力の山である。シャクナゲが咲く時期は、ちょうど新緑の季節でもあり、緑に癒される。瑞々しい葉と滑らかな幹が美しいヒメシャラの木が印象的である。時期はもう過ぎているはずだったが、一部のアセビが花を咲かせていた。ちなみにアセビは漢字で「馬酔木」と書く。毒を持った植物であり、馬が食べると酔った状態のように苦しむことが由来になっているという。
今回の登山で、最も楽しみにしていたシャクナゲは、万三郎岳の北東斜面に群生していた。小さくカーブした登山道を回りこむと、生い茂る木々のなか、あちこちにピンクの花を咲かせるシャクナゲが目に飛び込んできた。思わず「オォーー」っと、小さく声に出してしまった自分であった。
歩き始めてからおよそ2時間半ほどで、最高峰の万三郎岳山頂に到着する。頂上からの眺望は期待できないが、ひらけたスペースが少ない天城山では、ゆったりと休むことができる数少ない場所である。
万三郎岳山頂から万二郎岳方面へ10分ほど歩くと、シャクナゲがもっとも美しいエリアとなる。群生地と言われるだけあり、数多くのシャクナゲが花を咲かせていた。なかでも、シャクナゲの花のトンネルは見事であった。
えシャクナゲの群生地から少し先の地点では、山の斜面に、ぽつぽつと薄い紅色のツツジの花が咲いていた。水彩画のような淡い色に新鮮な驚きを感じた。
万三郎岳と万二郎岳の間には、アセビのトンネルがある。アセビの花の時期には、遅すぎたが、満開になれば、さぞかし美しい花のトンネルとなるのだろう。
アセビのトンネルから少し行くと、シャクナゲコースで唯一と言っていい、見晴らしの良いポイントがある。ここからは、相模湾や万三郎岳などを望むことができる。展望ポイントから少し登ると、万二郎岳山頂となる。
万二郎岳登頂後は、四辻の分岐点まで下り、再び、天城高原駐車場前の登山口に戻ってきた。
一般的なコースタイム
「天城高原駐車場」
→→→[徒歩:約20分]→→→
「四辻」
→→→[徒歩:約1時間5分]→→→
「涸沢分岐点]
→→→[徒歩:約1時間10]→→→
「万三郎岳山頂」
→→→[徒歩:約30分] →→→
「石楠立(はなだて)」
→→→[徒歩:約30分] →→→
「万二郎岳」
→→→[徒歩:約45分] →→→
「四辻」
→→→[徒歩:約20分] →→→
「天城高原駐車場」
※ コースタイムは標準的な時間です。所要時間は人によって大きく変わります。
時間はあくまでも目安として、余裕をもった登山計画を立てて下さい。
※コース途中には、水場及びトイレはありません。
天城山(万三郎岳)
Text & Photo:sKenji
最終更新: