指定避難場所は、必ずしも安全だといいきれない。
「29.1%」
今月18日、岩手県陸前高田市は「陸前高田市東日本大震災検証報告書(案)」を公表した。上記の数字は、その検証報告書案にある「津波到達時の所在場所と被害状況」のアンケートデータのうち「津波犠牲者のうち、避難所で亡くなった人」の割合(※1)である。
検証報告書によると、68箇所ある一次指定避難所(※2)のうち、39 箇所が津波の被害を受け、そのうち11箇所において犠牲者がでている。犠牲者数は、被害が大きかった4か所の指定避難場所だけでも、推定200人だという(※3)。
陸前高田市は、県内で最も多い1771人(直接死)の方が亡くなっているが、そのうち、少なくとも1割以上の人が避難所で犠牲になったことになる。
今回、公表されたものは報告案であり、今後広く、情報、意見、指摘を求め、それを踏まえた上で、正式な検証報告書が作成されることになっているが、指定場所に避難したものの、犠牲になった方は多いことが想定される。
また、陸前高田市以外でも、指定避難場所で亡くなった方について、下記のような事例が報告されている。
津波は安全なはずの指定避難場所をものみ込んだ。役場の支所や学校、高台……。「まさか、ここにまで」。想定外の大津波は、自治体の指示に従って避難した多くの人の命すら、奪った。
宮城県石巻市の北上川の河口に面した同市北上総合支所は、津波に備えて5年前、新築された。想定されていた津波の最高水位5.5メートルより1メートル高い土地に建て、避難場所にも指定された。しかし、2階の屋根を超える大波で全壊。支所に身を寄せたお年寄りら49人のうち、市職員2人と児童1人の計3人だけが生き残った。市職員の牧野輝義さん(42)は「避難は完璧だったが、津波の力がそれを上回った」。残る職員2人は被災住民対応にあたっている。
石巻市北上総合支所以外にも、いくつも同じような事例が報告されている。約20名の方が犠牲になった、宮城県東松島市の一次避難所・野蒜(のびる)小学校に避難された方は、次のように述べている。
「(指定避難場所である)体育館にいれば安全という意識があった。これほど大きな波が来るとは思わなかった」
恐らく、多くの方に共通していた思いなのではないだろうか。
(※1)「地震発生時に津波浸水域(津波が到達した場所)に居た人に限定し、その人が津波到達時にどこにいたか」ついて、その本人や家族へのアンケート結果です。
(※2)一次避難所とは、一時的に避難する場所のことです。一方、第二避難所と呼ばれる避難場所は、長期的な避難生活をする場所のことです。(出典元:陸前高田市東日本大震災検証報告書案)
(※3)2月25日付河北新報によると、4カ所の避難所にうち、県立高田高校で亡くなったとされている22人について、亡くなった高田高校の生徒の人数を、避難所で亡くなった方の人数だと思い込んで、取り違えていたようです。実際には、県立高田高校の避難所では、犠牲者が出ていなかったようです。
もっと多くの人が犠牲になっていたかもしれない
1771人もの方が亡くなった陸前高田市だが、さらに被害が拡大していた可能性もあった。被害を抑えたと考えられているのは、検証報告書案にたびたびでてくる「積極的な避難行動」である。報告書案でいう「積極的な避難行動」とは、「避難行動を実際に取ったこと」、「避難所だけにとどまらない避難を行ったこと」を指している。
先に紹介した「津波到達時の所在場所と被害状況」のアンケート結果を見ると、津波で被害を受けなかった人である「被害無し」の方のうち、45.8%もの人が、「避難所以外の高台」に避難をしている。指定された避難場所で犠牲になった方が多かったことを考えれば、もし、指定場所に避難をしていたならば、さらに多くの犠牲者がでていたかもしれない。
また、アンケート結果によると、「指定避難場所を知っていた人」でも、指定された場所には避難をせずに「最初から別の場所に向かった人」は、48.3%、「行こうとしたが、途中で行き先を変更した人」が2.0%おり、合わせて約半数の人が指定以外の場所に避難している。
指定の場所に避難をしなかった理由として、約半数の人が、「より高いところに移動しようとした」と、「積極的な避難行動」を取った結果となっている。
個人的な推測だが、「最初から別の場所に向かった人」は、指定避難場所の危険性を感じていたのかもしれない。そのため、より高い高台に逃げたのではないだろうか。もし、臨機応変に、別の場所に避難していなければ、犠牲者はもっと増えていたかもしれない。報告書でも、次のように指摘している。
「避難所にとどまらず、さらに積極的な行動を取った人が生存した可能性が示唆される。」
<「指定避難場所は安全」だとは言い切れない?指定以外の避難場所の検討も! ~後編~ に続く>
陸前高田市
参考WEBサイト
Text:sKenji
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