こころのつぶやき Vol.4 ~30年後の山にて~

sKenji

公開:

2 なるほど
1,398 VIEW
0 コメント
富士山頂からの御来光
富士山頂からの御来光

山に棄てられるゴミ

山にゴミが増えているという。以下、先月9日付毎日新聞の記事である。

北岳への登山道脇には真新しい空き瓶、缶などのごみが散見された。山小屋関係者らによると、ごみの投棄が最近増えているという。仮設トイレのチップを入れる箱が壊されて現金が盗まれたり、分岐点の案内板が持ち去られたりといった被害もあった。

追跡・視点:南アルプス国立公園50年目の課題/上 装備不十分の登山者増加 ごみの投棄、盗難も /山梨- 毎日jp(毎日新聞)

北岳は、富士山に次ぐ日本第二の高峰だ。南アルプスを代表する山で、登山者も多い。 北岳にしか生息しない固有種「キタダケソウ」など、季節になると高山植物が数多く咲き乱れる山でもある。

私も2回ほど登ったことがあるのだが、雄大な光景が強く印象に残っている。日本百名山の著者・深田久弥は、この山を「清秀な高士」と称している。その美しい山が汚されている。

これは、何も北岳に限ったことではない。他の山でも同様のことが起きている。古来から日本を象徴する山で信仰の対象となっている富士山でさえ、ゴミ問題は深刻だ。最近、世界自然遺産に登録されることが決まったが、問題となっていたのは、ごみ問題というのは有名な話だ。

11月19日付NHKのWEBサイトによると、7、8月中に富士山周辺で拾われたゴミの量は50トン以上だと報じられていた。1日で6.9トンも回収した日もあったという。
平成17年に20万人だった富士山の登山者は、平成22年は32万人にまで急増している。しかも、このデータは登山シーズンの2か月間の登山者数だ。多い日は一日に1万人以上も登っている日もある。

「昔はゴミなんか全くなくて、ここ数年でゴミが増えてきた」などというつもりない。しかし、登山者が増え、これだけの人が山に押し寄せるのだから、登るほうは、今まで以上に厳しいモラルが求められ、ゴミを含めて、自然へのインパクトをシビアに考えなければならないのではないだろうか。

以前から一部の中高年の方には根強い人気のあった登山だが、数年前から若い女性にも人気がでているという。山に登っていても、登山者の年齢層、性別の変化に驚きを感じている。これだけ登山者が増えてくると「少しだからいいや」なんて軽い気持ちでも、全員が同じことを考えればどうなるかは言うまでもない。

たとえ、登山者が増えても、全ての登山者がゴミを残さずに持ち帰るならば、ゴミに関しては、自然へのインパクトは変わらないはずだ。

ゴミとは少し違う話かもしれないが、昔、南米の山を登ったことがあった。その時は、ベースキャンプから上は自分の排泄物(大)も持ち帰らなければいけなかった。
ベースキャンプに着くと、国立公園の係官から白いビニール袋を1枚渡される。そこより上は、渡されたビニール袋に排泄物をいれて、再びベースキャンプまで戻って来なければならない。ただのビニール袋だから、当然臭う。ザックの中が臭くなる。せめてジップロックにしてほしいと思いながら登ったものだった。この山は、気温が低いために微生物による分解が行われないという理由があったにせよ、場所によってはそれくらい厳しいところもある。

ライチョウにとっての、この30年間

ライチョウという鳥がいる。標高の高い場所に住む「氷河期からの生き残り」と言われている鳥だ。

私はライチョウが好きだ。ずんぐり体型で地面を歩き回る姿は愛嬌がある。そう簡単に見れるものではないが、時々、彼、彼女たちの姿を見かけると、宝探しで宝物を見つけた子供のように心が躍る。登山者に愛される山の人気者だ。

しかし、そんな愛すべき鳥の未来は安泰ではない。今月5日付毎日新聞に次のようにある。

山梨、長野、静岡県境の南アルプス(赤石山脈)に生息する国の特別天然記念物・ライチョウが、最近30年間で半数以下に減り、極めて危機的状況にあることが、信州大の中村浩志・名誉教授(鳥類生態学)の調査で分かった。
(中略)
原因は、ゴミの増加や環境破壊など人為的な要因もあり、テンやオコジョなど天敵となる肉食動物が増えているためという。

ライチョウ:南アルプス30年間で半減 生息環境悪化が深刻/毎日jp(毎日新聞)

これまでは、えさの乏しい高山には肉食動物が現れることは少なかった。しかし、人間が捨てるゴミ目当てで、本来はいなかった場所にもライチョウの天敵が現れるようになったと聞いたことがある。

氷河期という厳しい時代を生き抜いてきた鳥が今、危機的な状況にある。直接ではないが、引き金は人がひいている。人間は氷河期よりも脅威だということか。

ゴミが増えて、ライチョウが減る。

ライチョウがいない、ゴミが溢れる山など登りたくはない。山は時に楽園のような姿を見せてくれる。楽園にゴミは似つかわしくない。

30年後も、楽園の中を駆けずり回るライチョウの姿を、私は見てみたい。

ライチョウ
ライチョウ
親鳥の左にヒナがいる。4匹のヒナが親鳥の後をついてまわる。
親鳥の左にヒナがいる。4匹のヒナが親鳥の後をついてまわる。
雲ノ平付近にて
雲ノ平付近にて

Text & Photo:sKenji

最終更新:

コメント(0

あなたもコメントしてみませんか?

すでにアカウントをお持ちの方はログイン