大型で非常に強い台風。「やることがない・・・」(小笠原諸島・台風シリーズその2)【旅レポ】

tanoshimasan

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(小笠原諸島・台風シリーズ) その1>その2>その3>その4 「小笠原に台風が上陸するらしい。」

 小笠原諸島に滞在中の2009年9月16日、そんなニュースが舞い込んできた。定期船は台風が通過するまで欠航が決定。本州から1000km離れた小笠原の地で、台風をしのぐことになった!

「大型で非常に強い」らしい

(前回より)

 急きょ母島を離れた僕は、21時10分着という変則的な臨時便で父島に戻ってきた。その日の朝まで晴れていただけに、台風が来ることすらいまいち実感がわかない。

 ところが、状況は徐々に現実味を帯び始める。貴重な情報源であるNHKの天気予報が何かにつけて「小笠原諸島は~」と言う。聞くところによると、どうやら「大型で非常に強い」らしい。本州に住んでいる限り、それほど心配すべきニュースではないと思うが、この島々で過ごしている数千人の人々にとっては大問題だ。 宿のオーナーは浸水に備えてイルカ船やダイビング船に乗る予定だった人たちは、ショップから早々に中止の連絡を受けていた。

 定期船は台風が通過するまで動きそうもなく、会社勤めであろうお客さんもテンパり始める。 「あーやべえ。もし船が出なかったら上司になんて言い訳しよう。」

 「あぁ、そっか。お仕事大丈夫ですか?」 当時学生だった僕にはピンとこなかったが、会社勤めの人が小笠原を訪れるには、どうにかこうにかやりくりして長期休暇を取得するらしい。

 「学生は良いなぁ。休み長いでしょ。」 「そうですね。9月いっぱいまで・・・。でも、時間はあってもお金は無いですから、あんまり延泊になっちゃうとやばいです。」

 「でも良いなぁ学生は。もし延泊になったら俺の代わりに上司に謝ってよ。」 「延泊費を援助してくれるなら良いですよ。」

 なんだかんだと台風談義に花が咲いた。

どうやらやることがない!

 一夜明け9月17日、朝のニュースで台風の速度が遅いことが判明した。本格的な上陸は翌々日の19日が予想され、この日は朝から時間を持て余してしまった。

 島内のツアー業者は当然ツアーを中止。とは言え、素人目にはそれほど天気が荒れているようには見えず、時々雲の隙間から陽がさしたりしていた。 「これが嵐の前の静けさってやつですかね~?」

 かと言って、他に何かできることも無く、宿のミーティングルームでだらだらと過ごしていた。ところが、これが意外と悪くない。 「特にやることのない人」ばかり集まったミーティングルームでは、「会社のことは忘れよう!」と謎の団結を見せた大人たちを中心に酒盛りが始まった。パソコンで天気予報を確認する人もいれば、なんとなくウクレレを奏でている人もいる。僕は、宿の本棚にあった「漂流教室」を全巻読むことに決めた。どうせ暇なら今日中に全部読もう。

 すでにデキあがったおっちゃんが僕に言う。 「おっ、漂流教室!この島は台風で孤立した漂流島だけどな!」

 あっ、はい。

「せっかくなんだから避難しておいでよ」

 さらに一夜明け9月18日。翌日には台風が上陸すると言われているのだが、相変わらず雨も風も無いので宿の周辺を軽く散歩してみる。集落の商店は、どこもこの日の正午で閉店し、台風対策に入るらしい。庭のベンチやテーブルはロープで固定されており、ガラス戸は段ボールやクッションで補強されていた。つい昨日まで賑やかだった集落が、突然廃墟になったようなイメージだ。僕は台風の上陸中に欲しくなりそうな食材を調達した。

 冗談で 「ちょっと海見てくる。なぁに心配するな。」

とか言って出かけたが、海にはサーファーらしき人が泳いでいた。そんな海を横目に宿に戻ると、相変わらず「酒盛り」「ウクレレ」「読書」の光景が続いていた。もしかすると、どこの宿でもこんな感じなのかもしれない。一見、遊べなくて残念に感じた台風だが、台風ならではの光景や、それぞれの過ごし方が意外と面白い。僕は「漂流教室」の続きを読んだ。

 夕方になると、突如島内放送が響き避難勧告が出された。

 避難勧告となると、いよいよ穏やかじゃない!・・・はずだが、夕食を済ませた僕ら宿泊客は相変わらず「酒盛り」「ウクレレ」「読書」、ついでに「トランプ」が追加されていた。このあたりは島独特の空気がそうさせるのだろうか。 「一応避難勧告が出たんで、避難する人はおが高(都立小笠原高校)の体育館に行きましょう。送迎しますよ~。宿に残る人は外出は控えてくださいね。」

 と、にこにこ顔で告げるオーナー。この期に及んで宿に残る選択肢があるのか。。案の定、会社員「酒盛り」部隊は「面倒くさい」との理由で宿に残ることに。僕らもどうしようかと考えていると、 「せっかくなんだから避難しておいでよ。貴重な経験だよ。」

と、オーナー。避難ってそういうモンなのか・・・というツッコミはさておき、確かに貴重な経験かも知れない。僕を含めた8人の一行は車に乗り込み、“避難”することにした。お菓子とトランプと漫画を持参して。(次回へ続く)

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