息子へ。被災地からの手紙(2013年6月4日) iRyota25 2013.06.13 3 1,863 0 2013年6月2日 岩手県大船渡市越喜来 あれからもうすぐ2年と3か月だ。 津波の悲惨さを伝えるような写真記事はどうしたものだろう。 「もうそろそろ。」 撮ってきた写真をモニタに並べながら、そう思った。でも違うぞと思い直した。 ひとつの出来事をすぐに思い出した。最初に被
息子へ。東北からの手紙(2015年9月20日)自分に突き付けられた「風化」 iRyota25 2015.09.24 3 1,938 0 9月20日の日曜日、陸前高田市の海沿いの高台にある仮設住宅に行くと、集会所はチリ中部沖地震の津波注意報と土曜日未明の大雨警報の話題で持ちきりだった。津波注意報や大雨警報が解除されて1日以上たっているのにだ。 「津波注意報は解除されるまで長かったねえ」 「まる1日
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月1日-その2) iRyota25 2013.06.07 3 2,098 0 2013年6月1日 福島県白河市 アウシュビッツ平和博物館で一冊の本に出会った。 小出裕章・京都大学原子炉実験所助教による『今こそ〈暗闇の思想〉を』(一葉社)。 大分県中津市出身の作家で、公害や大規模開発に反対し続けた松下竜一さんの八回忌の記念講演をまとめた書籍だ。
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月29日) iRyota25 2013.07.05 2 1,745 0 こんな人がいるものなのか、と思った。 大曲浜獅子舞保存会の会長、伊藤泰廣さんを紹介された瞬間、その瞳に射抜かれた。 黒いダイヤ。 というと比喩で石炭や黒曜石なんかのことを言うけれど、その瞳は正真正銘、 黒い金剛石そのものだった。 相手の瞳孔を貫いて、心の底まで
息子へ。東北からの手紙(2015年9月19日)「元気そうに見えても体の中はボロボロなのよ」 iRyota25 2015.09.25 3 1,994 0 かさ上げ工事が進む陸前高田の高台にある県立高田高校。甲子園の出場経験もある名門校のグラウンドには、震災後、仮設住宅が立ち並んでいる。 お昼前、グラウンドにチャイムのような音楽が大きく鳴り響いた。近くのスーパーの移動販売車の到着を知らせる音楽だった。トラック
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月3日) iRyota25 2013.06.12 2 1,666 0 2013年6月2日 岩手県陸前高田市 陸前高田の町なかは、ほんとうに建物がほとんどなくなってしまって、まっ平らになった。ランドマークがほとんどなくなったせいで、クルマを走らせていて道に迷ってしまう。実際に、道を間違えて、舗装が剥がされたままの砂利道の一本道を延々走
息子へ。被災地からの手紙(2013年5月31日) iRyota25 2013.06.06 2 1,726 0 2013年5月31日 東京 ▼ 金曜日の夜の東京の街なかを通って、東北へ向かった。 終電前の時間帯。渋谷も新宿も、相変わらず夜遅くまで人通りが絶えない。街灯、ネオン、水銀灯、自動車のヘッドランプ…。街は光であふれている。 駅と繁華街のあいだを流れていく人波を見ながら、こ
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月1日-その3) iRyota25 2013.06.10 2 1,765 0 2013年6月1日 福島県いわき市大久町小久 いわき市久之浜町の山手に広がる田園地帯、小久に佐藤三栄さんを訪ねた。 佐藤さんの田んぼはすでに田植えを終えていた。田んぼに張られた水に、近くの山の姿が映る。田植えされたばかりの背の低いイネの緑が、風にそよぐ。 なんとも平
息子への手紙(2015年11月6日)北九州、高齢化の町の将来 iRyota25 2015.11.07 2 2,212 0 今日は「東北からの手紙」ではなく、福岡県北九州市からの手紙だ。 アドベンチャーみたいな交通事情 レンタカーを借りて小倉(おぐらではなく「こくら」)の町を久しぶりに走って、今回気づいて驚いたことがあった。かつて北九州というと、自動車運転のマナーが悪いことでは全
息子へ。被災地からの手紙(2013年7月16日) iRyota25 2013.07.19 1 1,897 0 2013年7月16日、晴れ。(宮城県仙台市→七ヶ浜町→東松島市) ◎「驚くべき一日」インクレディブル! あったこと、感じたことのみ記す。 本当は昨日会ったロシナンテスの人たちと一杯やりたいと、熱望に似た思いを募らせつつ、仙台に宿をとった次の朝は早かった。 ホテルでの朝食
息子へ。被災地からの手紙(2013年7月17日)その1 iRyota25 2013.07.23 1 1,898 0 2013年7月17日、曇り。(石巻市狐崎浜) ◎本日曇天なれど、引き続き驚くべき一日なり! 東松島市の宿舎を出発したのは午前2時。 牡鹿半島の真ん中あたりにある狐崎浜への道すがら、何頭もの鹿に出会ったよ。カーブを曲がったとたん、光る目が4つ。ヘッドライトに照らされて、
息子へ。被災地からの手紙(2013年7月15日) iRyota25 2013.07.16 1 1,646 0 宮城県亘理郡亘理町・宮城県名取市閖上 亘理町の民家を一軒借り受けて、活動の基地としているNPO法人ロシナンテス。その名前はドンキホーテの愛馬の名にちなんでいる。この会を立ち上げたのは九州のある高校のラグビー部出身の人たち。部は違うが、父さんと同じ高校の人たちだ
息子へ。被災地からの手紙(2013年4月17日) iRyota25 2013.04.18 2 1,852 0 2013年4月17日 宮城県気仙沼市リアス・アーク美術館 気仙沼港の岸壁では、オイルフェンスのようなものが張られて(たぶん地上から汚れが海に流れ出さないようにしているのだろう)、埠頭の工事が進んでいた。その手前には工事の進展を待っている被災した岸壁。 港の岸壁って、
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月2日) iRyota25 2013.06.11 1 1,899 0 2013年6月2日 宮城県石巻市 関東地方では、汗ばむくらいの陽気らしいけど、こちらはすっきり爽やかなお天気だ。というより、昼間でも少し肌寒くて、長袖の上着を持ってこなかったことを後悔しているくらい。 北東方向からの風、やませが入ってきているとのことで、最高気温で
息子へ。被災地からの手紙(2013年6月1日-その1) iRyota25 2013.06.07 1 1,668 1 2013年6月1日 福島県白河市 東北の初夏ならではの淡い新緑の中、真っ白なオオデマリの花が咲いていた。なだらなかな丘に囲まれた畑のような場所に、木造の古民家が1軒。レンガ造りの小屋が1軒。貨車が2両。そして「原発災害情報センター」と掲げられた、まさに建設途上の木造
息子へ。被災地からの手紙(2013年3月12日) iRyota25 2013.03.15 2 1,782 0 2013年3月12日 宮城県石巻市 石巻人たちの「言葉へのこだわり」から見えてくる生きざま。 石巻で際立つ活動をしている人から、言葉の使い方について教わることがよくある。 たとえば「できるだけやる」と「できることをやる」の違い、わかるかな。これは「がんばろう!石巻」
息子へ。被災地からの手紙(2013年4月18日) iRyota25 2013.04.22 1 1,518 1 2013年4月17日21時03分の地震 気仙沼からの移動中で、自動車専用道路を走っている時だったので、地震にはほとんど気づかなかった。 高速を降りて国道を走っている時に、道路情報の電光掲示板に「大地震発生」という赤い文字が見えて何事かと思った。「大地震発生」という文字
息子へ。被災地からのメール(2012年12月30日) iRyota25 2012.12.31 3 1,848 0 12月30日 福島県いわき市久之浜 言葉にすることができないんだったら、何もしゃべらなくていい。そのことを教えてもらったよ、きみに。 雨が降る中、ずっと歩き続けて、iPhoneで撮り続けていた動画とスチルを、ホテルで借りたPCで夜中まで編集していたんだね。こっちはいわき
息子へ。被災地からのメール(2013年2月3日) iRyota25 2013.02.03 2 1,952 1 2013年2月3日 宮城県女川町・石巻市 約1週間の東北から帰って来て、今日はちょっとだけお金の話をしよう。 女川で事業を新たにおこした人が、地元の方を雇おうとパート募集のチラシをポスティングしていた頃のお話。 「応募してくれた人たちの仮設住宅にお邪魔すると、どちら
息子へ。被災地からのメール(2013年1月27日) iRyota25 2013.02.05 2 1,689 0 2013年1月27日 宮城県石巻市 初めて会った人には、こんな風に取材をお願いしすることがある。 「被災された土地の人たちの声を、できるだけていねいに、そして継続的にお伝えしたいと考えているんです。東京とか外の人たちの間では、震災の記憶がどんどん風化していると思うん
息子へ。被災地からのメール(2013年2月1日) iRyota25 2013.02.07 2 1,475 1 2013年2月1日 宮城県石巻市 今日取材した勝さんって、キリリと涼しげで整った切れ長の目をしている人なんだよね。話をしていると、知性とか優しさとかがその目を通して伝わってくる。だけど、11月に会った時に感じたんだけど、写真に撮ると目の表情がふにゃっと笑ったようにな
息子へ。被災地からのメール(2013年1月31日) iRyota25 2013.02.01 2 1,969 1 2013年1月31日 宮城県女川町・石巻市 「口はね、食べるためだけにあるんじゃないの。しっかりしゃべらないと」 女川町の清水仮設住宅に住んでいる石田志寿恵さんが雑談の中でそんな言葉を語った。取材した話をページにレイアウトして、文章の内容や写真について相談しにおじゃ
息子へ。被災地からの手紙(2013年3月30日) iRyota25 2013.04.01 1 1,433 0 女川の石田さんと電話で話していたら、 「昨日とおととい、雪が降ったんだよ。積もるような雪じゃなかったけどね」 と唐突に雪の話になった。 前日に桜吹雪の中でお花見をしていた父さんは、電話口でこんな風に言いたくて仕方なくなった。 「こっちは桜の花びらが雪のように舞
息子へ。被災地からの手紙(2013年3月11日) iRyota25 2013.03.15 1 2,027 0 2013年3月11日 宮城県石巻市 寒風の中、手向けられた水。サービスしてもらった長田区の熱いコーヒー。 激しい風の音がようやくおさまった頃、日の出を迎えた石巻の町はうっすらと白く雪化粧していた。前日ビーチクリーン活動をしていた時の暑さからは信じられないくらいだ。
息子へ。被災地からの手紙(2013年3月7日) iRyota25 2013.03.13 1 1,684 0 2013年3月7日の福島県双葉郡楢葉町 今回のいわき取材の宿泊場所は広野町。この2月オープンしたばかりの、復興特需対応型の簡易なホテル。広野町なんていうと、放射能は大丈夫なの?と心配かもしれないけれど、思った以上に低い。屋外で0.18μsv/hくらい。久之浜で0.14、いわき