【シリーズ・この人に聞く!第45回】ギャグマンガの新領域を開拓した漫画家 増田こうすけさん

kodonara

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「ギャグマンガ日和」という名の強烈におもしろい漫画が、ティーンエイジャーを中心に大人気です。TVアニメ化も何度かされ、来春からも再びアニメとして放送予定。歴史上の人物をいじって笑いのネタにしたり、身近なテーマとSFをミックスしたようなショートコントは抱腹絶倒!読んでいると、こみあげる笑いが押さえられずに電車内では要注意。作者の増田こうすけさんへ幼少期の日々から漫画家として活躍されるまでの軌跡について、お話を伺いました。

増田 こうすけ

1999年、「月刊少年ジャンプ」(集英社)5月号掲載の『夢 -赤壁の戦い-』でデビュー。
「月刊少年ジャンプ」で『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』を連載開始。
「月刊少年ジャンプ」休刊に伴い、新雑誌「ジャンプスクエア」で大好評連載中。

お笑い好きでも人見知り。絵が大好きな少年時代

――相当おもしろい作品なので、子ども時代の過ごし方がとても影響あるんじゃないかと思っています。増田さんはどんな子ども時代を送られて?

小学校入学式にお母様と。小さな頃から他の子と比べて頭一つ分大きかった。

小学校入学式にお母様と。小さな頃から他の子と比べて頭一つ分大きかった。

3歳頃まで愛知県で育ち、それから三重県に引っ越しました。子どもの頃は大人になりたくなくて、小学校の中学年で僕の身長が祖母の背を抜いた時とても悲しかった。昔から僕は体が大きかったんですね。2歳上に姉が一人いて、建築関係の仕事をしていた父が小4の頃に亡くなった。母が牛乳を扱う会社に勤めていたので、僕も牛乳配達を手伝っていました。子どもの頃から絵を描くのが好きでしたね。写生大会でよく入賞していました。

――当時の絵をいくつか拝見しますと、とても丁寧に描かれていますしテイストは今描かれているマンガと通じています。いつ頃からマンガを描き始めたのですか?

マンガを描き始めたのは大学へ入ってからです。小さな頃から絵画コンクールで入賞していたので、自分は絵がうまいほうだと思っていましたが、漫画家になってこうも絵が描けないものかと(笑)。その落差が激しかった。子ども時代は主に漫画は読むばかり。ノートや教科書へ落書きはしていました。

――男子の中では、おとなしいタイプだったんでしょうか?

おとなしかったんですが、仲の良い友達の前だとテンションが高かった。笑わしたり笑わさせられたり、ふざけるのが大好き。ところが仲良しの友達の中に学年が違う顔見知りくらいの子が一人でもいると静かになってしまうという(笑)。今でもそうですが、人見知りが激しいんです。

――何か子ども時代に習い事をされていたことはありましたか?

愛知県から三重県へ引っ越した幼少期に、スイミングスクールに通っていたことがあります。それが一番最初の習い事と記憶していますが、ほんの数か月で辞めました。スイミングスクールで履く水泳パンツって、競泳用でピチピチなんですね。それが子どもながらに恥ずかしかった(笑)。小学校に入ってからは習字を。これも10か月くらいで辞めました。サッカーチームにも入っていましたが、さぼってばかりでした。高校生になって美術系大学へ進もうとデッサンを習いに行きました。将来的に、デザインとか絵をいかせる仕事に就ければと思った。

――習い事で何か早々に芽が伸びたというよりも、好きだった絵をあたためてきてお仕事にされたんですね。

大学時代も具体的な仕事を思い描いていたわけではないんです。就職活動も真剣にやらなかったですし。卒業してから「どうしよう」って。カメラマンのアシスタントやデザイン事務所とかに面接に行ったことはあります。でも採用されず、アルバイトばかりの日々に。そんな時にふと「家で仕事ができるといいなぁ」と。あんまり人と関わりたくないしなぁ~と(笑)。

大学卒業後すぐデビュー。稀な才能を発揮

――大学卒業後にいわゆるフリーターとなって、そもそも才能をお持ちですから焦ることもあったのではありませんか?

「ギャグマンガ日和」10巻の袖にも掲載された一枚。亜米利加というロゴのランニングがオシャレ!

「ギャグマンガ日和」10巻の袖にも掲載された一枚。亜米利加というロゴのランニングがオシャレ!

当時、週刊ジャンプを欠かさず読んでいて、そこで「赤塚賞」という冠コンテストをしていて、第48回(1998年)では『巨大合体鋼鉄戦士イカンダー』で佳作を受賞、第49回(1998年)では『夢 -赤壁の戦い-』 で準入選を受賞しました。それで、もしかしたら漫画家としてやっていけるんじゃないかと本腰を入れる気になった。いつも逃げ腰で、消極的なんです。

――ご自分をのんびりやさんだとマンガでもおしゃっていますが、あんまり強い思いでガツガツと夢を実現しようとされたわけではないんですね。

幼稚園卒園アルバムを飾った先生の顔。飄々とした表情が今のマンガタッチに通じているような?!

幼稚園卒園アルバムを飾った先生の顔。飄々とした表情が今のマンガタッチに通じているような?!

2回目の赤塚賞を受賞してから1年で連載を持ちました。僕より後に赤塚賞をとった人も、一緒の時期に連載を持っていたのでそんなに早いデビューだと思わなかったのですが、この世界ではかなり恵まれたことだったようで。普通は受賞後、1~2年作品を描き続けても芽が出るとは限らない。一回目の受賞後、編集者さんにネームを送っても何の連絡もなくて、「あれ?こういう業界なのかな」なんて思って。もう11年描き続けている自分が信じられないです。

――広告ではCMプランナーという仕事があって、増田さんの絵やストーリーの展開、落とし所はCMプランナーの香りがします。笑いのツボをちゃんと心得ていらっしゃるので、もしかしてそういう仕事もされていたのかな?と勝手に思っていましたが。ネタはどうやって考えていらっしゃる?

広告とはまったく無関係ですね。ネタは特に決まったルールはなくてふと思いついたり。たまたま赤塚賞で準入選した作品が歴史もので、それが好評でして。編集者さんも歴史ものを描いたらいいんじゃないかと。その時は歴史ものパロディは楽なのかなと思い、何作か描いているうちに連載に入ったので、自然と歴史上の人物がマンガに登場するようになって。よく「歴史がお好きなんですか?」と聞かれますが、特に好きでも嫌いでもないんです。ですので、主要な人物を描く時は一つひとつ調べて描くようにしています。

――増田さんの漫画、セリフがものすごく楽しくて、読み込んでいってかなり笑えるものもありますよね。これは先にセリフが出来上がって、絵を後でつけていくんですか?

う~ん答えにくいんですが(笑)特に決まっていないんです。ネームを描いている流れでセリフがどんどん出てくることもありますし。

アイデアの源泉?!書斎も整理された細やかさ

――小学校時代は夏休みで読書感想文が宿題だったりしますよね。そんな時、増田さんはどんなことを書いていらしたんだろう?と興味が湧きます。

2列目の右から3番目が増田さん。なぜかさぼることも多かったサッカークラブの仲間と。

2列目の右から3番目が増田さん。なぜかさぼることも多かったサッカークラブの仲間と。

読書感想文は、ただ嫌なものでしたね。比較的読みやすいというか短いものを選んで、こうだと思う~こうだと思う~というのをひたすら書いて(笑)。本は今も読まない方なんです。表現する人は読んだ方がいいに決まっているのですが、勧められてもあんまり読まないんですよ。

――あのセリフのおもしろさの源をぜひとも知りたいです。ところで2歳上のお姉さまとは仲良しでいらした?増田さんは反抗期とかなかったのでは?なんか人と喧嘩とかしそうにないから、キツイことを言ったり言われたりすることとは無縁な気がします。

ギャグマンガ日和は全10巻発売中。DVDの他、クマ吉クン時計や下敷、うちわなどのグッズも有。

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小さな頃は仲良しでしたが、小学校高学年になってからは自然と口をきかなくなって。家の中で会話しないことが暗黙のルールになって(笑)、今に至ります。メールだと普通に会話しますが、実際会うと一言二言交わすくらい。姉の勤めている会社の人が、僕の漫画を知っていたことを喜んでくれたりします。反抗期はそれなりにあったと思いますけれど、そんなひどくなかったような。自分ではそんなふうに思っていなかったのですが、家族によれば僕、口は悪いみたいです。

――書斎もきちんと整理されて美しいし、増田さんはとても細やかな方だなぁとお見受けします。常日頃も家事とか貯蓄なんかもお得意で?

僕は家事も貯蓄も全然得意ではないのです。家事はむしろ苦手。貯蓄も僕は管理していません。買い物は好きでよくスーパーへ行きます。料理はあんまりしませんが、肉が嫌いなのでたくさん野菜を食べる。異常気象なので野菜の高騰が心配ですね。それとこれまで何度か引っ越しをしていますが、土地の価格も気になります。計算は苦手なんですが、損はしたくない。子どもの頃からケチで好きなことにはお金を使うけれど、無駄遣いは一切しない(笑)。

――堅実さがよくわかりました。作品のおもしろさはこの緻密さによるところが大きいですね!では最後に習い事を考える読者にメッセージをお願いします。

僕自身は習い事で何かしっくりきたことがなくて、水泳も習字もそろばんも進研ゼミも全部辞めてしまった。自分でやりたいと入ったサッカーチームにも結局さぼってばかりでした。結局、まじめにやっていたのは高校時代のデッサン教室。必要に迫られないと本気でできなかった。でも、それでいいんじゃないかと。興味がないものを続けていても何もならないですし、興味があるなら何かのきっかけになるかもしれませんけれど。僕は英語が話せればよかったなぁ~とは思いますが、今さら習うつもりはありません。

編集後記

――ありがとうございました!増田さんの漫画を手にしたのは小6息子が読みふけっていたからなのですが、息子以上に私がすっかりはまってしまいました。漫画の路線もいろいろあるのでしょうけれど、元気のない時に「ギャグマンガ日和」を手にして読むだけでおなかの底から笑えて、「ま、いっか」と思えてくるので不思議です。押し付けがましくないのにしっかり笑え、脱力系な物語なのに細部まで緻密に笑いが練り込まれている。これからの作品がますます楽しみな増田こうすけさんなのでした。

取材・文/マザール あべみちこ

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