エルサレムからヨルダンの首都・アンマンに戻った私はシリアへ向いました。
シリアは現在、内戦中のために入国することはできません。しかし、私が訪れた11年前は旅行することができたのです。
シリアで一番の見どころは、なんと言ってもパルミラ遺跡です。同国における観光のハイライトであり、最も楽しみにしていた場所です。
パルミラ遺跡はシリアのほぼ中央にあります。紀元前から人が住んでいたそうですが、残っている建造物の多くは1~2世紀に造られたものです。街はヨーロッパと中国を結ぶシルクロードの中継地として発展し、絶頂期は2世紀。ヨルダンのペトラが衰えると、それに代わって栄えたといいます。しかし3世紀、ローマ帝国に攻められて陥落した後、廃墟と化した街は衰退しました。特に夕日を受けた姿が美しいことで知られ、「バラの街」とも称されています。
一番の見どころであり、パルミラを象徴している遺構と思うのがローマ時代に造られた「列柱道路」です。砂漠の中におよそ150本(※内戦前)もの石柱が立ち並ぶ光景は見応えがあり、古代の街の姿を思い浮かべることができます。
パルミラは中東を代表する屈指の古代遺跡であり、まさに人類の貴重な遺産と呼ぶのに相応しいものです。
しかし、その貴重な遺産は昨年5月、IS(イスラミックステート)に占領され(※)、一部が壊されたといいます。さらに遺跡の破壊だけではなく、多くの人も殺害されたことをニュースが報じていました。
シリアの人々にとってパルミラは特別な存在であり、誇りの源泉であったとも聞きます。なかにはこの遺跡を命をかけて守ったシリア人もいるのです。下記の記事は昨年の夏に見たものです。
今年1月31日のシリア人権監視団の発表では、2011年3月から内戦で亡くなった方は26万人以上にもなるといいます。また、先月放送されたNHKの番組によると故郷を追われた難民と避難民の数は合わせて1,100万人、戦闘などで親を亡くした子どもは80万人もいるそうです。そして、この1,100万人という人数は国民の2人に1人にあたるといいます。
総人口はおよそ1億2000万人の日本に置き換えて考えてみると、約6000万人の日本人が住む場所を追われ、430万人以上の子供が自分の親を亡くしたことになります。
貴重な遺跡が破壊され、そして多くの人の命や平穏な生活を奪っているシリアの内戦。一刻も早く争いが終結し、民主的な政治の元、安心して暮らせる生活が訪れることを心より願ってやみません。
(※先日、シリア政府軍がパルミラを奪還したとのことです)
シリア・パルミラ遺跡
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