知っているようで知らない?世界遺産条約について

sKenji

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明治日本の産業革命遺産の構成資産のひとつ端島炭鉱
明治日本の産業革命遺産の構成資産のひとつ端島炭鉱

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今月28日からドイツのボンで世界遺産委員会が開催され、日本の「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産への登録の是非について、最終的な審議が行われます。

世界遺産委員会が開かれるにあたり、登録までの流れなど世界遺産について調べてみます。

世界遺産とは

世界遺産とは「顕著な普遍的価値」を持つ遺産であり、公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟のWEBサイトには次のように書かれています。

世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。

世界遺産とは|世界遺産運動|公益社団法人日本ユネスコ協会連盟

具体的には、世界遺産条約に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に登録されている遺跡や自然などが世界遺産となります。

世界遺産条約が制定されることになったきっかけは、1960年代にエジプトのナイル川に造られたアスワンハイダムにあります。

ダムの建設によって水没するエリアには、アブシンベル神殿を始めとした古代エジプトの遺跡が点在していました。貴重な人類の遺産を水没の危機から守るために巨大なアブシンベル神殿をブロック状に切り出して移動するプロジェクトが始まりました。この時に「人類共通の遺産」という世界遺産条約の基本的な考え方が広まり、1972年の「世界遺産条約」の採択へとつながりました。

世界遺産条約制定のきっけとなった「アブシンベル神殿」。2005年に撮影。この遺跡を見ることができたのは保存プロジェクトのおかげです
世界遺産条約制定のきっけとなった「アブシンベル神殿」。2005年に撮影。この遺跡を見ることができたのは保存プロジェクトのおかげです

世界遺産の種類について

2014年12月時点で世界遺産は1007件登録されています。一番多くある国はイタリアで50件です。

登録されている世界遺産は「文化遺産」、「自然遺産」、「複合遺産」の3つに分類されています。

エジプトのピラミッド

エジプトのピラミッド

文化遺産は「顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など」といった条件を満たすもので、エジプトのピラミッドや日本の法隆寺などがあります。

対象は人間が作った遺跡などに限らず、日本の富士山など文化的価値を持つ自然景観等も文化遺産になります。

ガラパゴス諸島のガラパゴスゾウガメ

ガラパゴス諸島のガラパゴスゾウガメ

自然遺産は「顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地など」が登録され、エクアドルのガラパゴス諸島や日本の屋久島などがあります。

ペルーのマチュピチュ

ペルーのマチュピチュ

複合遺産は「文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている」ものです。大変希少な遺産であり、1007件ある世界遺産のうち複合遺産はたった31件しかありません。ペルーのマチュピチュやギリシャのメテオラなどが登録されています。日本には現在、複合遺産は存在しません。

シリアのパルミラ

シリアのパルミラ

3つの分類とは別に「危機遺産」があります。これは「武力紛争、自然災害、大規模工事、都市開発、観光開発、商業的密猟などにより、その顕著な普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされている」世界遺産で現在、内戦状態にあるシリアのパルミラなど46が危機遺産リストに登録されています。

世界遺産登録までの流れについて

世界遺産に登録されるまでの流れは以下の通りです。

1.暫定リストの提出
各国で世界遺産の登録基準に合致し、将来登録を目指す可能性がある遺産の暫定リストを造り、ユネスコに提出します。

 世界遺産の登録基準|世界遺産活動|公益社団法人日本ユネスコ協会連盟
www.unesco.or.jp  

暫定リストに登録する遺産の選定について日本では、文化遺産が文化庁、自然遺産は環境省と林野庁が行っています。ちなみ現在の暫定リストには下記のものが登録されています。

 我が国の世界遺産一覧表記載物件 | 外務省
www.mofa.go.jp  

2.ユネスコに推薦
各国は提出した暫定リストの中から、世界遺産への登録を目指すものについて、ユネスコに推薦します。

3.諮問機関による調査
文化遺産は国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、自然遺産は国際自然保護連合(IUCN)が世界遺産の登録にふさわしいか調査をします。

調査結果は「登録」、「情報照会」、「登録延期」、「不登録」の4段階で評価されます。ここでの結果が、世界遺産への登録を最終的に審議する世界遺産委員会に大きな影響をあたえます。

「明治日本の産業革命遺産」は文化遺産での申請のため、ICOMOSが調査し、その結果、一番評価の高い登録勧告を受けています。

4.世界遺産委員会による審査
毎年1回、世界遺産委員会が開かれ、この会議で世界遺産への登録の是非が審議されます。審議の結果は「登録」、「情報照会」、「登録延期」、「不登録」の4つがあります。

「登録」の場合は正式に世界遺産となりますが、「情報照会」の場合は求められた追加情報を提出し、次回以降に再審議されます。遺産が持つ顕著な普遍的価値については認められるものの、保存計画などに不備あると情報照会となるようです。

「登録延期」は、顕著な普遍的価値の証明などが不十分であり、より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要で、諮問機関の審査を再び受け直す必要があります。

「不登録」は、登録にふさわしくない遺産と判断され、基本的には世界遺産委員会に再推薦することができません。

今月28日からドイツのボンで開催されるのは、この世界遺産委員会になります。

今年の世界遺産委員会は6月28日~7月8日

今年の世界遺産委員会は6月28日に始まり、7月8日まで開催されます。「明治日本の産業革命遺産」の結果が気になります。ICOMOSの登録勧告通り、正式に世界遺産に登録されることを願いつつ、7月8日を待ちたいと思います♪

参考WEBサイト

 我が国の推薦資産に係る世界遺産委員会諮問機関による評価結果及び勧告について
www.cas.go.jp  
 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟
www.unesco.or.jp  
 世界遺産 | 外務省
www.mofa.go.jp  

Text & Photo(※出典元記載写真を除く):sKenji

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