【世界一周の旅 Vol.25】アラビアンナイトの世界が広がるサナア旧市街

sKenji

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世界最古の街のひとつとされる中東・イエメンのサナア旧市街。世界遺産に指定されている歴史ある街です。私が訪れた時は現代とは思えないような、まるでアラビアンナイトのような世界が広がっている街でした。

イエメンについて

イエメンはアラビア半島の先端に位置する国で、国土は日本の約1.5倍弱。そこに約2,600万人が住んでいます。

中東の国といえばオイルマネーで潤う裕福なイメージがありますが、イエメンは別。経済的には世界で最も貧しい国のひとつとされています。

しかし、一部の旅行者の間ではとても人気が高い国で、訪れた人は口を揃えるように「素晴らしい国だ」、「また行きたい」などと絶賛するのです。いったい何が旅人をそれほど惹きつけるのか。それは、首都のサナアを始めとした「美しい街並み」、そして「人の良さ」です。

どの国にもいろいろな人がいて、一概に良し悪しを言えないことはわかっています。しかし、それでもイエメンでは人の優しさに触れる機会がとても多いのです。なにもこれは私だけでなく、訪れた旅行者の多くが経験しています。

そんなイエメンをよく言い表しているガイドブックの解説があるのでご紹介します。

「幸福のアラビア」。その昔ヨーロッパの人々からこう呼ばれたイエメンは、古代からインドと地中海を結ぶ「海のシルクロード」の要地として、さまざまな品々がこの地を経由しヨーロッパへと運ばれていった。時代は移り現在、ほかのアラブ諸国が石油生産で潤う中、イエメンは「アラブの最貧国」と呼ばれている。しかし、古きよきアラブの習慣を大切にしながら、数千年もの間、大地に足をつけて生きてきたイエメン。アラブ文明発祥の地とされるこの国は、アラブの人々にとっては心のふるさとだという。

地球の歩き方 イエメン

訪れる前にガイドブックを見たのか、それとも後に見たのか、記憶は定かではないのですが、まさにイエメンを端的に表していて忘れることができないものです。

世界遺産・サナア旧市街

イエメンには空路で入りました。ケニアのマサイマラ国立保護区から戻ってくると、ナイロビからサナアへ飛んだのです。

実は、イエメンに行くかどうかずっと迷っていたために積極的に同国の旅行情報を集めていませんでした。そのためガイドブックはもちろんのこと、どこに安全で安い宿があるかなどといった情報をほとんど持たずに入国したのです。

サナアの国際空港に着いたはいいけれど、いったい街の中心部へはどうやって行けばいいのか、バスがあるのかどうかすら分かりませんでした。

しかし、イエメンの人たちはそんな右も左もわからない異国からの旅行者にとても丁寧に、そして親切に乗るべきバスを教えてくれたり、道案内をしてくれたりしたのです。

人に助けられながら路線バスを乗り継ぎ、サナアの街の中心部へ行くことができました。

初めてサナア旧市街を目にしたときは感動するのと同時に驚きました。はたして本当に自分は21世紀の世界にいるのだろうかと。

まるでお菓子のような造りの建物が無数に立ち並んでいるのです。時計の針が数百年前で止まっているかのような光景でした。

時が止まっていたのは建物だけではありません。民族衣装を着た人たちが大勢、街を行き交っているのです。男性はジャンビーアと呼ばれる短刀を腹にたずさえ、女性は頭から足の先まで全身黒のベールをまとい、誰が誰だかわかりません。

イエメンではいくつもの部族が存在し、いまなお強い力を持っているとのことでした。昔から部族間での争いが多く、そのため街を城壁で囲んだり、切り立った崖の上に造ったりしたそうです。

サナア旧市街も昔は城壁に囲まれ、5つの門があったといいます。現在、そのほとんどは存在していませんが、一部に名残をとどめています。

日本も含めて世界には歴史的な景観が残る街があります。しかし、そのなかでもサナア旧市街は本当にタイムスリップをしたかのような錯覚を覚える街です。

美しいイエメン建築、100を超えるモスクと60以上あるという尖塔、そして街を歩いていると笑顔でよく挨拶をしてくれたフレンドリーで親切な人々。本当に素敵な街でした。

しかし、そのサナアがあるイエメンは現在、内戦状態に陥っています。外務省の海外危険情報では全土に最悪のレベル4――退避勧告――が出ていて、旅行をすることはできません。

ユネスコは2015年、サナア旧市街を危機遺産リストに加えました。

また、国連は昨年7月、国民の8割に当たる人が人道支援を必要としているとして、イエメンに最悪の「レベル3」の人道危機――シリアや南スーダンと同じ――を宣言しています。

アラブの人々にとっての「心のふるさと」とされるイエメン。おおげさに聞こえるかもしれませんが、短期の旅行者にとってもまるで故郷のような安らぎを覚える国でした。再び笑顔が戻った「幸福のアラビア」を旅したいと心より思っています。

〈「【世界一周の旅 Vol.26】エジプト」 へ続く〉

サナア旧市街

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