学生時代、冬になるとよく新潟県妙高市にあるスキー場や国立妙高青少年自然の家に行っていた。その際、荒々しくそしてどっしりと鎮座している山があった。妙高山だった。
妙高山系は二重式火山で直径約3kmの馬蹄形の外輪山を持ち、その中に中央火口丘の妙高山がある。見る位置によって印象は異なるものの、中央の妙高山が重量感ある男性的な山容であるのに対し、外輪山から伸びるすそ野は緩やかで女性的な姿をしている。その絶妙な組合わせは見る者を惹きつける。
日本百名山の著者・深田久弥は妙高山について次のように述べている。
越後のみならず私は日本の名山だと思っている。その均整のとれた山容の気品と言い、のびやかな裾野の雄大さと言い、名山としての名に恥じない
日本百名山(深田久弥)
その特徴的な妙高山系の姿は上空からの写真を見るとよくわかる。
妙高山は、名を連ねる北信五岳の中では最も高く、その標高は2,454m。山頂に2つの峰を持つ双耳峰である。最高地点の南峰は北峰より8mほど高くなっている。
古来から多く人に崇められ、親しまれ、そして愛されたきた妙高山。その名峰を先月中旬に登ってきた。
妙高山登山レポート
妙高山頂上への登山コースは複数あるが、今回私は笹ヶ峰の登山口から往復するコースを選んだ。標準的なコースタイムは往復約11時間で、1泊2日での登山が推奨されている。
ちなみに最短コースは赤倉観光ホテルのケーブルカーを利用して山頂駅まで行き、そこから往復するルート(往復でおよそ8時間半)である。
朝、笹ヶ峰の登山口から歩き始める。駐車場はすぐ目の前にあるほか、歩いて1、2分ほどのところにある休暇村笹ヶ峰キャンプ場にも150台ほど停めることができる。
登山口から黒沢橋までは森の中の緩やかな登り坂となっている。木道が整備されており大変歩きやすい。早朝の森がとても気持ちがいい。
登山口から1時間ほど歩くと黒沢橋に到着する。ここで水の補給や休憩することができる。
沢の水は驚くほど澄んでおり、そして冷たい。
黒沢橋から富士見平までは樹林帯のなかの登りとなる。所々に木道も整備されているので歩きやすい。
黒沢橋から1時間40分ほど登ると富士見平の登山道分岐にでる。登ってきて左側に見える登山道は火打山へと続いている。妙高山へは右側の道を行く。
富士見平の分岐から15分ほど歩くと、黒沢池湿原が見えてくる。
湿原はとても広く、長さは約1km、最大幅は約500mほどある。山奥、それも標高約2000mの高地にこれほどの大きく開けた場所があることに驚く。
まるで草原のような黒沢池湿原がいきなり目に飛び込んできた時には、思わず感嘆の声をあげてしまった。
登山道は湿原地帯の隅の方に作られている。歩くのが大変楽しい区間で、疲れも忘れてしまう。
笹ヶ峰からの登山コースで、個人的に一番良かった場所が山頂とこの黒沢池湿原であった。ここではゆっくり時間をとって山の魅力を楽しみたい。
黒沢池湿原の終端まで歩いてくると黒沢池ヒュッテがある。山小屋での宿泊のほかキャンプも可能。笹ヶ峰から妙高山に登る場合は距離があるので、ここで一泊しての登山が推奨されている。
黒沢池ヒュッテで水の補給はできるものの、煮沸する必要があるので要注意。
黒沢池ヒュッテ脇に登山道の分岐点がある。案内板に従って妙高山へ。
黒沢池ヒュッテから妙高山の山頂へ行くには一度、外輪山を越える必要がある。ヒュッテから外輪山外側の斜面を登って行く。
黒沢池ヒュッテから30分ほど登ると、外輪山上にある峠、大倉乗越(おおくらのっこし)にでる。
大倉乗越まで来ると妙高山が姿を現す。近くで見るとより重量感を覚え、迫力がある。
この日、往きはガスがかかって視界はなかったのだが、晴れていれば写真(※下山時に撮影)のような妙高山を見ることができる。
大倉乗越を越えると、登山道は外輪山内側の中腹まで下り、そして水平方向への移動となる。内側の傾斜はけっこう急である。
下に目をやると長助池が見える。(※下山時に撮影)
水平方向への移動の終わりに沢があるので渡る。8月中旬にもかかわらず、まだ雪渓が残っていた。
長助池分岐点。木製のベンチがあるので休憩するのに最適である。ちなみに黒沢池ヒュッテから妙高山山頂までの区間で、通行する登山者の邪魔にならずにゆっくりと休める広さがあるのは大倉乗越と長助池分岐点のみ。
長助池分岐ポイントからは再び急な登り坂となる。山頂までの標高差はおよそ400m。
長助池分岐から1時間10分ほど登ると妙高山の北峰にたどり着く。標高は2446m。到着時はガスがかかり眺望はなかった。最高地点である南峰へ向かう。
妙高山南峰に登頂!
ここが最高地点。標高は2,454m。
山頂付近を歩いていると大きなテントウムシを見つけて少しびっくり。
このテントウムシはカメノコテントウと言い、日本にいるテントウムシ科では最大の種であるらしい。体長は11~13mmほどで強く美しい光沢を持っている。
南峰付近でのんびりしているとガスが薄くなり始めてきた。
そして、さらに時間が経つと妙高高原の街などが見えるまでに展望が良くなる。
南峰登頂時には見えなかった北峰を見通せるようになる。
北峰と南峰はそれほど標高差が感じられず、1つの広い山頂のように思えなくもない。山頂には巨石が点在しており、さながら石の庭園のようで素晴らしい。
てっぺんからの景色を40、50分ほど楽しむと来た道を引き返して、笹ヶ峰の登山口へ下山した。
妙高山について
富士山のように均整がとれた山容でどこから見ても比較的同じように見える山もあれば、見る位置によって印象が大きく異なる山もある。
今回初めて妙高山に登ったため、他の登山コースについてはわからないものの、妙高は後者ではないかと思っている。きっと、別のルートから登れば違った顔を見せてくれるに違いない。機会があれば次は燕温泉の登山口からも登ってみたい。
学生時代から気になっていた妙高山。やっと登ることができ、大きな達成感を覚えた山行だった。聞くところによれば、「妙高」とは仏教界でいう「世界の中心の山」という意味の訳語とのことである。その姿を見ていると、山名の由来も納得できる北信の名峰である。
妙高山
※黒沢池湿原の写真は下山時に撮影
参考WEBサイト
Text & Photo(出典元記載画像を除く):sKenji
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