一不動から登山道は稜線歩きになり眺望が良くなるのだが、この日は「曇り時々小雨、一時本降り」のあいにくの天気であったために視界が悪く、何も見えない。
一不動から1時間ほど登ると五地蔵山の山頂に着く。
戸隠牧場から高妻山に登る場合、2つの登山道がある。1つは滑滝や帯岩を経由する古くからある道で、もうひとつが弥勒コースと呼ばれる新道である。
戸隠牧場からスタートした2つの山道は、この五地蔵山の山頂で合流することになる。新道の方が戸隠牧場からの所要時間が少なく鎖場などの難所はないものの、急登で歩きづらいという話である。
どちらがいいかは人それぞれだが、両方歩いたことがある登山者は、滑滝経由の旧道をすすめる人が多い。
五地蔵山の付近あたりから、上り下りが増えてくる。
高妻山登山について、深田久弥はアップダウンが多く、体力的に大変であったとその著書に記している。
そのほかにも、きつかったという登山者は少なくない。山頂へ至る途中の稜線歩きの途中に上の写真のような峰がいくつかあり、登ったかと思ったらまた降るというコースに体力のみならず精神的にも苦痛だと言う。
前日に登った雨飾山で話をした登山者も家族で挑戦したものの、奥さんは上り下りに心が折れて途中で引き返したそうである。
高妻山を登る際には事前に覚悟をしておいた方がいいかもしれない。
峰を複数越えると、山頂直下の最後の急登が待っている。小雨が降るなかを登る。
五地蔵山からコースタイムにして、おそよ1時間40分。急登が終ると、大きな岩がむき出しの山頂付近にでる。晴れていたら展望が素晴らしいということである。
そして、山頂はもうすぐそこ!
高妻山登頂!
しかし、残念ながらあいにくの天気で眺望は全くなし。先にある乙妻山まで行くことも少し考えてもいたが、天候と到着時間を検討した結果、断念することに。
その後、わずかな時間でもいいから晴れないかと山頂で20、30分ほど待ったものの、雨脚が少し強くなり下山することにした。
諦めていたその時に・・・
山の天気は急変しやすいとよく言われる。本当にその通りで、つい先ほどまで天気が良かったにも関わらず、あっという間に崩れることがある。
しかし、その逆もある。
この日は後者であった。もう晴れ間は望めないとなかば諦めていたのだが、山頂直下の急坂を下り切ったあたりを歩いていると急に雲が薄くなってきた。そして、明るさが増してきたかと思うと山の稜線が姿をあらわし、遠くの山々まで見える素晴らしい眺望が開けた。
山の神様が最後に素敵なプレゼントをくれたように思えた。私は贈り物に感謝しながら戸隠牧場の登山口へ下山した。
高妻山
※ 戸隠牧場の入口から一不動までの写真は下山時に撮影。
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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