先日、通りすがりに目にした静岡県沼津市の立保地区にある津波避難タワー。最も新しい地震の被害想定で予想される津波の高さよりも低いという致命的な問題点を抱えてはいるものの、その設計には考えさせられる点があった。
立保地区の避難タワーに感心したのは、小さな子供やお年寄りが避難しやすいように段差が低い階段と通常の段差の階段が合計二つあったことである。
避難タワーを目の前にして迫り来る津波を想像してみる。避難が優先される小さな子供やお年寄りが介助を受けながら階段を登るのはどうしても時間がかかってしまい、避難渋滞が発生するケースもあるかもしれない。介助者はせいぜい男性が2、3人いればよく、ほかの避難者、特に女性や高学年以上の児童などは先に別の階段で逃げた方がいいのではないだろうか。
一刻を争う津波からの避難の際には、避難弱者に配慮した階段を備えている点もさることながら、通常の段差の階段もあることで救われる命があるかもしれない。
ちなみに直線距離で2.5キロほど離れた木負地区にも津波避難タワーがある。立保地区よりも3年以上後に設置された比較的新しいもので、収容人数や避難ステージの面積など、規模は立保の避難タワーと同じである。高さは木負地区が立保の1.5倍の9.0mとなっている。しかし、このタワーには階段が1つしかなく、段の幅も特別に広いというわけではない。
津波避難タワーや高台などへの避難路は、一秒を争う状況で使用される可能性も十分にありうる。差し迫る津波を前に一人でも多くの人の命を救うには、通常の段差の階段と避難弱者へ配慮した段差が低い且つ介助者の行動を妨げない幅のある階段の2つある方がよい。
津波避難タワーの階段や高台へ逃げる道などの避難路は、避難弱者の方も考慮する必要性は感じていた。しかし、2種類の階段を備えた立保地区の避難タワーを知り、避難路のバリヤフリーに加えて一人でも多くの人の命が助かるための避難の効率性の高さも重要であると思った。
沼津市立保地区の津波避難タワー
参考WEBサイト
Text:sKenji
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