山登りのススメ Vol.8 ~沼津アルプス~

sKenji

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毎朝、家から駅に向かう途中に見える山並みがある。「沼津アルプス」だ。

沼津アルプスは、静岡県沼津市に連なる山で、地元の登山愛好会が登山道を整備して名づけたという。沼津市内にある香貫山から大平山までの山を沼津アルプスといい、大平山から大嵐山、茶臼山までを奥沼津アルプスという。

11月下旬、香貫山から大平山までを縦走してきた。

沼津アルプスの最高峰は鷲頭山の392m。比較的低い山かもしれない。しかし、あなどることなかれ。アルプスの名に恥じない素晴らしい縦走路だった。

何がいいかと言うと、それは「眺望」につきる。山岳風景としては、日本アルプスに及ばないかもしれないが、登山道の途中で時折見せる眺望の素晴らしさは賞賛に値する。富士山と海という2種類の景色を楽しめる山は、そう滅多にあるものではないだろう。海を見下ろす縦走路は新鮮であり、魅力を感じる。

目の前にどんと居座る富士山。弓なりに続く千本松原の海岸線。視線を少し東に転じれば、波静かな湾と西伊豆の山々を見ることができる。

視界を遮っていた樹林帯がぱっと開けて、いきなり奥深い江浦湾と西浦の山並みが見えた瞬間には思わず鳥肌が立った。

圧巻は白く雪を抱いた富士山と駿河湾を同時に見ることができる絶景だろう。この光景こそが、沼津アルプスの最大の特徴だと感じた。富士山と海が一枚の写真に収まる場所はそうそうないと思う。

徳倉山の山頂で、浜松からきた中高年の登山グループと話をした。その際に女性の一人が「この先にはもっと素晴らしい景色があるわよ。本当に素晴らしい縦走路」と興奮気味に沼津アルプスを絶賛していた。

沼津アルプスを歩く登山者は多い。その皆が口をそろえるかのように、眺望の良さ
を口にしていた。

沼津アルプス、これほど素晴らしい縦走コースが近場にあるとは思いもしなかった。嬉しい誤算だった。

沼津アルプスマップ:沼津市公式観光サイト
沼津アルプスマップ:沼津市公式観光サイト

www.city.numazu.shizuoka.jp

香貫山

黒瀬の登山口。登山道のすぐ左側には建物が建っています。

黒瀬の登山口。登山道のすぐ左側には建物が建っています。

スタート地点は、黒瀬バス停近くの登山口です。黒瀬は、JR沼津駅からバスで7分ほどの場所で、香貫山のふもとになります。

登山口はバス停から200m離れた場所にあります。建物の脇に登り口があります。街中にある登山口というのも新鮮で面白いと思いました。

黒瀬の登山口から10分ほどで香陵台公園に着きます。香陵台公園には日清、日露及び第一次、第二次世界大戦で亡くなった方の慰霊塔として、五重塔が建てられています。

香陵台公園からは、富士山、駿河湾、沼津市街を一望することができます。

香陵台公園からの眺め。
香陵台公園からの眺め。
香陵台公園からは沼津市街を一望できます。
香陵台公園からは沼津市街を一望できます。
香陵台公園から沼津御用邸方面を望む。
香陵台公園から沼津御用邸方面を望む。

慰霊平和塔から香貫山山頂までは、なだらかな整備された道が続きます。途中に水飲み場もあります。水飲み場は登山道の脇にあり、腰丈位の高さの円柱に水道の蛇口がついたものです。「水飲み場」と書かれた看板もあるので見落とすことはないと思います。

京都?! いえ、沼津です!
京都?! いえ、沼津です!
沼津市街と駿河湾
沼津市街と駿河湾

香貫山山頂(193m)には、建物が建っており、周りは木に覆われていて眺望はよくはありません。しかし、近くには展望台があり、ここからの眺めは大変いいらしいです。私は展望台の存在を知らずにスルーしてしまいました。

香貫山山頂を後にすると、整備された道を下り、いったん一般道にでます。途中にはベンチもあり、休憩することもできます。

徳倉山(象山)

徳倉山山頂への登山口

徳倉山山頂への登山口

香貫山から下って一般道にでたら、道路沿いに東へ(道路にでて左)5分ほど歩きます。すると徳倉山(256m)山頂への登山道が右手にあります。標識があるので注意していれば迷うことはないと思います。

登山口から徳倉山山頂までは、かなりの急登となります。徳倉山の手前に横山(183m)がありますが、木々に囲まれているために、眺望は望めません。

横山の山頂から徳倉山山頂へは標高差70mの登りです。山頂直前まで木々に覆われていますが、徳倉山の頂上にでると展望も開けており、富士山、沼津市街、駿河湾を見渡すことができます。富士山を見ながら昼食をとりたい方は、徳倉山の山頂が一番いいと思います。

徳倉山山頂から富士山を望む。
徳倉山山頂から富士山を望む。
徳倉山から沼津市街と駿河湾を望む。
徳倉山から沼津市街と駿河湾を望む。
徳倉山山頂。
徳倉山山頂。

鷲頭山

徳倉山から鷲頭山(392m)へは一度下って、再び登りとなります。

徳倉山の頂上から急な登山道を下っていると、いきなり視界が開けて江浦湾を一望できる場所があります。ここから見る江浦湾は一見の価値があります。

江浦湾と西伊豆(西浦)の山並み。素晴らしい展望。
江浦湾と西伊豆(西浦)の山並み。素晴らしい展望。
江浦湾と内浦地区。
江浦湾と内浦地区。
鷲頭山。
鷲頭山。

鷲頭山へ行く途中に「さざなみ展望台」と呼ばれる場所がああります。気持ちの良い草地となっており、駿河湾の眺望は、沼津アルプス縦走路の中では随一です。

晴れていれば、湾の海面を走る風によってできるさざなみを見ることができます。とても開放的な場所であり、駿河湾を眺めがら昼食をとりたいならば「さざなみ展望台」が一番です。

さざなみ展望台から駿河湾の眺め。海面を走る風がわかります。
さざなみ展望台から駿河湾の眺め。海面を走る風がわかります。
鷲頭山へ行く途中に、気持ちの良い稜線があります。
鷲頭山へ行く途中に、気持ちの良い稜線があります。
鷲頭山に行く途中の木立。
鷲頭山に行く途中の木立。

鷲頭山への登り途中には、昔、平清盛の五男・平重衡が追手を逃れて隠れ住んでいたと言われる、中将宮という岩壁があります。

中将宮を過ぎ、急な山道を登っていくと小鷲頭山に出ます。ここは富士山と駿河湾を同時に見ることができる絶景ポイントです。小鷲頭山までくれば、鷲頭山はもうすぐです。

鷲頭山の山頂は平らで広く、開放的です。

中将宮。
中将宮。
小鷲頭山から富士山と駿河湾を望む。
小鷲頭山から富士山と駿河湾を望む。
小鷲頭山から駿河湾の眺め。手前の海岸沿いにある林は沼津御用邸。
小鷲頭山から駿河湾の眺め。手前の海岸沿いにある林は沼津御用邸。
鷲頭山山頂。
鷲頭山山頂。
伊豆の国市と狩野川。
伊豆の国市と狩野川。
鷲頭山山頂からの眺め。
鷲頭山山頂からの眺め。

下山、多比地区登山口へ

鷲頭山から下る途中に狩野川、三島市、伊豆の国市、箱根の山並みなどを一望できる場所もあります。

鷲頭山山頂から30分ほど歩くと、多比口峠に着きます。峠は多比地区への下山ルートと大平山山頂へのルートの分岐点となっています。
峠から大平山の頂上までは20分ほどの登りです。山頂は広く、大勢で休憩することができます。木々に覆われているために眺望がいいとは言えませんが、夏、涼みながら休憩するにはいい場所だと思います

私は、大平山に登った後、再び多比口峠まで戻って、多比地区へ下山しました。
多比口峠から多比地区までは、下りが続きます。中腹で登山道は終わり、舗装された道となります。

国道414号線に出ると、近くにバス停があります。このバス停から20分に1本ほどの割合でJR沼津駅行きのバスがあります。

沼津アルプスの縦走路は、噂通りの素晴らしいものでした。アップダウンが激しく、標高の割には体力も必要ですが、エスケープルートも豊富で多くの方が楽しめる山だと思います。

沼津アルプス。近所にとても良い遊び場所を見つけました。
ますます、静岡が好きになりました。

こぼれ話 ~日本が世界に誇れる販売システム~

多比口峠からの下りの登山道。
多比口峠からの下りの登山道。
登山道はここで終わり。
登山道はここで終わり。

多比口峠から下ってくると、中腹あたりで登山道は終わり、車一台がやっと通れるほどの舗装された狭い道へと変わる。

時計は15時を示していたが、すでに日は傾き始めていた。晩秋の気配を感じる。海岸沿いを走る国道へと続く、傾斜のきつい細い道を歩く。道路の脇にはみかん畑が所々、散見される。

登山道が切れた地点から少し行くと、道は二つに分かれていた。分岐点には木製の箱がおいてある。蓋はない。近づいてみると、みかんの無人販売所だった。

木箱の中には、みかんがいくつか入った赤いネットが置かれていた。箱の前面に小銭を入れる代金箱が取り付けられている。

網のひとつ取り上げ、数えてみると7個入っている。値段は100円。少々小ぶりながらも安い。スーパーの半額以下だ。鮮やかな橙色をしており、いかにも甘そうだった。

僕は、迷わずに小さな代金箱へ100円玉を落とす。「チャリン」と重みのある音がした。箱の中には結構な量の小銭が入っているようだった。その音にほっとするとともに嬉しくなった。箱の中から一番艶のある美味しそうなものを1つ選ぶと、再び歩き始めた。

ネットからみかんをひとつ取り出す。皮をむき、歩きながら食べる。

甘く瑞々しかった。いい買い物をした。小さな幸福感に満たされる。思わずもう一個食べてしまう。

夕日がみかん畑を染めている。美味しいみかんと無人販売という素敵な販売形態に、足取りは軽かった。

無人販売所は日本が世界に誇れる販売システムだと、僕は思っている。信頼の上に成り立つ販売形態で、世界中探してみても、この形態をまねする事ができる国はそうそうないだろう。無人販売所。この先もずっと日本に残ってほしいと願う誇れる販売形態。

哀愁漂う秋の夕暮れ時、僕は縦走を終えた満足感と素敵な無人販売所に小さな幸せを感じながら、沼津アルプスを後にした。

無人販売所にて
無人販売所にて

沼津アルプス最高峰・鷲頭山

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Text & Photo:sKenji

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