「おかし」「いただきまーす」「あけて」「またねー」
最重度の知的障害がある娘にも、状況にふさわしい単語を一つだけ発する場面が増えてきました。ただし言葉の数はごく限られていますし、何往復もするようなコミュニケーションを取ることはできません。
そんな娘と、ゆっくり、半歩ずつでも深くコミュニケーションできるように取り組んでいるのが「PECS」という手法です。
PECS(Picture Exchange Communication System)とは、絵カードを用いたユニークな代替/拡大コミュニケーション方法です。自閉症や、その他さまざまなコミュニケーション障害のある子どもや成人が、自発的なコミュニケーションを身につけるための学習方法としてつくられました。1985年にアメリカのデラウェア州にて開発され、PECSトレーニングマニュアルはすでに14カ国語で翻訳されていて、75カ国以上で使用されております。
PECSの構成
PECSは、6つの指導段階で構成されています。絵カードを用いてコミュニケーションを自発的、持続的に行うことから、対象を弁別し、文章や言葉によって要求することへと進んでいき、最終的には質問に対して自発的なコメントを促すといった流れでコミュニケーションを学んでいきます。
「6つの指導段階」のうち、いま娘は3段階目にあたる「対象を弁別」まで来ています。
具体的には「コミュニケーションブック(マジックテープで絵カードがたくさん貼られたページをリングで束ねたバインダー)」のページをめくって、自分の欲しいものが描かれた絵カードを探し出し、相手に渡すことができます。
ブックが近くにない場合は、自分でブックを取りに行って、目の前で絵カードを渡してくれます。
最近「食欲の権化」とも言える娘が持ってくる絵カードは「ラーメン」「にゅうめん」「おかし」がほとんど。「おかわり」という絵カードに至っては「万能カード」だと思ってるフシもありそうです(笑)。
全然とんちんかんなカードを持ってくることもありますし、知的障害が重い娘にとってこの先の段階である「簡単な文を構成する」とか「応答する」「コメントを返す」までは長い長い道のりかも知れません。
でも、いそいそとブックを取りに行ってカードを渡してくれる姿は可愛くもあり頼もしくもあり、何より「具体的にコミュニケーションできている」感じを味わえてうれしいものです。
孤独のメッセージ
先月のこと。娘が夜中2時半に中途覚醒し、例によってわたしたち親が寝ている寝室のドアノブをガチャガチャ。わたしも例によって娘のトイレが大丈夫かだけを確かめてから再び寝室へ戻りカギをかけました。
その後ドアノブガチャガチャは無く、朝わたしが目覚めると娘は自分の部屋へ戻り、例の「重いふとん」をしっかりかぶって二度寝をしていました。
このように、娘が起きている間に何をしていたか、何時に二度寝をしたのかが「謎」の日が増えていますが、悪さをしていたのかおとなしくしていたのかは、リビングや廊下の散らかり具合で判断することになります。
その日はリビングとつながっている和室にこんなものが落ちていました。
娘がふだん使っているコミュニケーションブックです。学校と放課後等デイサービスにも毎日持っていくのでファスナー付きのビニールケースに入れてあるのですが、そこから取り出してありました。
左に絵カードが一枚落ちています。ブックのページから探し出し外してあったわけです。つまり「これが欲しいです」という意思表示ですね。その絵カードは何かというと…
「ハーゲンダッツ」の絵カードです。他にもアイスの絵カードがある中、たまにしか食べることができない、とびきりの大好物を選んでいます。
最近は中途覚醒してもわたしたち親が基本的に寝室から出てこないことを娘はわかっています。だからここに残されたカードは「ひとりごと」ということになりますね。
「ハーゲンダッツが食べたいな…」なんてかわいいひとりごとなんでしょう。その週末は2種類以上買ってあげちゃいました♪
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