1月17日は阪神淡路大震災が発生した日。23年前のその日、神戸の町は激震と大火に見舞われた。
2017年初夏、被災した大船渡市にようやくオープンした複合商業施設キャッセンで、神戸と東北の被災地をつなぐイベントが開催された。イベントの名前は「Action7~神戸から東北へ~」
Action7~神戸から東北へ~
阪神淡路大震災発生日の1月17日、神戸から東北へ、
東日本大震災発生日の3月11日、東北から神戸へ、
お互いの復興への希望や元気になった姿を感じていただけるイベントを開催します。
主なプログラムは防災ワークショップと、神戸で活動する男性デュオ”にこいち”によるアコースティックライブの二本立て。防災ワークショップでは、新聞紙で食器やスリッパを作ったり、ポリ袋を使ったクッキングなどが行われた。
ワークショップの講師が神戸から来た人ではなくて地元・大船渡の方で、しかも防災に特化した内容だったこともあってか、取材に訪れた大勢のメディアの人たちからは「神戸のこの字もないじゃん」というつぶやきも聞かれたが、ワカッチャイナイ。神戸の震災のこの日、東北の被災地で防災を学ぶ機会を持てたというそのこと自体に大きな意義があった。
たくさんの人が命を失った辛い日ではあるけれど、その方々の縁によって、今日わたしたちはこの場所に集まり、見知らぬ者同士が冗談を言い合ったり、笑顔を交わしたりしながらひと時を共にする。そこに意味がある。しかも防災について体験学習までしてしまったのだ。
それだけではない。”にこいち”のライブは、1000キロの距離を越えて、大船渡と神戸の人と人のこころをつないだ。
”にこいち”の二人は、ともに神戸市の出身で、震災の時には小学1年生だったという。高校卒業後にユニットを結成してからもずっと神戸を中心に活動してきた。震災から復興、そして今日までの時間と場所は、彼らが生きてきた舞台。震災から23年の間、変化した空気も変化しなかった空気も、彼らが成長する過程でとりこんできたそのもの。
自分にも、東北の震災のときに小学1年生だったという知り合いがいる。1年生でなくても、それくらいの年齢だったという子どもはたくさんいる。彼らが10年、20年たったころ、どんな人になっているのだろうか。歌やトーク、そしてちょっとコントめいた所作で観客のこころを掴んでいく”にこいち”の二人の姿と、東北の友人たちの姿がオーバーラップした。
23年前、神戸の町は激震と大火災に見舞われた。大船渡に初めてやってきたというデュオは、仙台空港でレンタカーを借りて岩手まで走る道々も、大船渡に到着してからも、ずっと考え続けていたという。
「自分たちは、このまちで、自分たちの歌を通して、どんなメッセージを伝えたらいいのだろう」
がんばってくださいってのは違う、と彼らは言った。子どもの頃に感じたことから、それは違うという。辛いこと、苦しいことはあるけれど、彼らがメッセージをこめて歌ったのは、淡路島を舞台にした映画「種まく旅人 くにうみの郷」の主題歌『今日も風が吹く』であり、『たまねぎ日和』であり、『故郷』だった。
帰りたい場所がある 帰れない場所がある
振り向けば心の故郷 時計の針そっと戻して
彼らの『故郷』のサビの部分は、2コーラス目では次のように歌われる。
変わらない場所がある 変わってく場所もある
蘇る心の故郷 記憶のページそっとめくって...
神戸も東北も時間の流れのなかにある。東日本大震災や阪神淡路大震災の被災地ばかりではない。日本中、そして世界中、同じ時間が流れている。同じ時間を共有していると「感じること」ができる意義を思った。
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