【復興支援ツアー2015】一杯のコーヒーの温かさを探す神戸への旅 by iRyota25

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もう1件エントリーさせていただきます。

3月11日の光景。「がんばろう!石巻」看板での追悼の集い(2013年震災から2年の日)
3月11日の光景。「がんばろう!石巻」看板での追悼の集い(2013年震災から2年の日)

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毎年3月11日、石巻での慰霊の集いが行なわれる「がんばろう!石巻」看板の前には、神戸から温かいコーヒーを届けに来てくれる人たちのテントがあります。寒風吹きすさび、小雪までまじるような寒空の下、被災した訳でもない私にまで彼らは「寒いだろうからのんで行ってね」と温かいカップを差し出してくれました。「がんばろう!石巻」看板を運営している方が、その時話してくれた言葉がずっと忘れられません。

「神戸の人たちは、一杯のコーヒーがどれだけ人を温めてくれるのかを知っているんだよね。毎年来てくれるんですよ。本当にありがたい。やはり寒い時期に地震に遭った神戸の人たちだからこそなのかもしれないね」

たいせつなことは、テレビや雑誌のインタビュー記事みたいに、質問に対して1対1のストレートで返事が返ってくるようなものなどではなく、やりとりの些細なかけらの中に結晶しているのだと実感しました。

神戸から石巻までコーヒーの無料配布に来てくれている人たちは、話しかけると気さくに応えてはくれるのですが、どこの誰とか、どんな組織でとか、そんな取材のような質問にはなぜか固く口を閉ざすのです。まるで貝のように。

大槌町で元旦、毎年行なわれている炊き出しでもまったく同じ経験をしています。雑煮やお餅、蕎麦、それに関西ならではのたこ焼きなどが振る舞われるのですが、関西の生協の方だということしか教えては貰えません。

「僕もボランティアで来ているから遠慮しときます」なんて言おうものなら、追いかけて来てまでも、「これ、あったまるから」と温かいお蕎麦を届けてくれて、しかも「もうすぐたこ焼きも焼けるから食べて行ってね」と言ってくれる。振り返るとテントの中でたこ焼きを焼いているおじさんが、にこにこ笑顔で笑いながら手を振っている。しかし、細かいことは何も教えてくれません。大晦日に準備して夜通しかけて大槌まで走って、大槌の神社で昼過ぎにテントをたたむと、またその足で関西に帰って行く――。

翌年、二回目に会った時には辛うじて「だって年末・初売りの準備とかいろいろ、関西に残ってるスタッフも大変なのよ。だからね、ここに来させてもらっている私たちだけじゃなくて、スタッフみんなの力。みんなの協力で、この炊き出しは続けられているの」という話を聞かせてくれました。

だけど、やっぱり自分たちのことについては一切口を閉ざしたままなのです。

2014年元旦。大槌町の小鎚神社にて。「息子へ。東北からの手紙(2014年1月1日)その2」より
2014年元旦。大槌町の小鎚神社にて。「息子へ。東北からの手紙(2014年1月1日)その2」より

明日の東北、明後日の自分たちの姿がある場所だから

自分たちの話になると口を閉ざす。貝のように黙して語らない。しかし、誰かのためになることには力を惜しまない。語ることも惜しまない。東日本大震災の後、東北で出会ったたくさんの人たちの心情と、神戸や関西の人たちの間には、共通する底流のようなものがあるのを感じます。私は、それを探しに行きたいと思い、この旅行企画を立ち上げました。

「がんばろう!石巻」看板に毎年コーヒーを届けてくれる人たちを、可能な限り神戸の町で探します。探して見つかるものではないかもしれません。それでも、求めて歩く中で、震災からもうすぐ21年になる神戸の人たちの実情に触れることがきっとできると確信しています。

そして、阪神地域の人たちにとっての今は、東北の人たちの15年後。もしも明日、私たちが暮らす地域が大災害に見舞われたとしたら、20数年後の自分たちの姿にも通じるものなのです。破壊から立ち上がって行く過程を同時代人として同じ目線で見つめて行かなければならないのは、東北に関してだけではないと私は思います。

災害からどうやって自分たちを守るか。それは災害が発生したその一瞬の対応策だけではなく、そこから立ち上がって行く過程をとおして直面し続ける課題です。長い長い時間をかけて、挫けることなく、進み続けるその過程の中にこそ、たいせつなことがあるのだと感じます。

新長田の商店街。街灯すら灯されていないから、昼間でも薄暗い
新長田の商店街。街灯すら灯されていないから、昼間でも薄暗い

先日、ごく短い時間ではありましたが神戸の町を歩き、数人の方と話をし、21年経ちつつあるいまでも、震災は終わることなく続いているのだということを感じました。

蒲鉾屋の小父さんは、ちょっと立ち寄っただけの旅人に「神戸の復興は失敗やったな」と、彼が感じているその理由まで含めて話してくれました。

照明が消されたアーケード街の一角にあるコンビニエンスストアは、東北によくあるタイプと同じ仮設店舗でしたが、そこだけは明るかったのが印象的でした。でもお客さんはいなくて、店員さんも高校生か大学生の女の子がひとりだけ。「ここ、東北でよく見る仮設の店舗と同じに見えるんだけど、撤退とかしないよね」と、今思えばかなりキツイ質問をしてしまったのですが、彼女はちょっと目を泳がせながらも、「そんなことはないはずですよ」と言いました。

神戸大学の学生が中心になって行なっている芸術系イベントでは、運営者側の学生さんが「新長田はそれでも元気な方です」と、目をきらきらさせて話してくれました。

震災を経験した年代と、知らない年代とで、震災の印象が異なるのは、考えてみれば当然のことです。でも実際に人々と語らい、関わることでその落差を身を以て体験しなければ実感できないこともあると思うのです。

私は、21年目を迎える神戸の町にどっぷりつかり、町の隅っこを舐めるくらいの気持ちで、震災が残して行ったものの断片を探してきたいと考えています。基本的に新長田地域を中心に歩いてまわり、お店に入り、買い物をし、飲み食いし、そして目と耳と鼻と舌で21年という時間と、「復興」という甘美な言葉の実情を探りたいと思います。

前説がかなり長くなっていますが、もう一点だけ付け加えさせていただきます。

1995年1月末か2月の上旬か、私は神戸に行きました。当時、雑誌の記者をしていた私は取材の仕事という名目でマウンテンバイクを輪講袋に詰めて神戸へ赴き、夜ともなれば暗くなる町なかを走り回りました。1カ月後、また行きました。半年後にも行きました。翌年も行きました。震災後3年間は時々神戸を訪ねました。実家への帰省の途中というロケーションもあったとは思いますが、何度も足を運びました。しかしその後、急に行かなくなってしまったのです。自分でもなぜだったのかは分かりません。いったん足が遠のくと、なかなか行けなくなる心理も実感しました。雑誌の企画が4年目以降は没になったこともあったかもしれませんが、自分の記憶では、さすがに4年もすればもう読者の興味は引けないよねという自分としての見切りのようなものもあったような気がします。

いま振り返ると、自分自身が風化の体現者であり、推進者でもあったのです。

そのことを、同じ神戸の町で振り返ってきたいと思うのです。東北のことについて、風化させてはならないと言い募っている人間が、自分自身を風化させていたのですから、その根本がどこにあるのかを探すことは私自身にとって深刻な問題でもあります。

約21年前、自分が歩いた場所にもう一度行ってみることで、その時には分からなかったこと、自分が知らなかった何かがきっと見つかるだろうと不思議と確信しています。

旅行のプランというほどのものはありません。「石巻で味わった一杯のコーヒーの温かさ」を旅行のパスポートとして、神戸のまちを歩き回ってきます。

シャッターが開いているのは2、3軒。照明だけは灯されている(新長田のアジア横丁商店街)
シャッターが開いているのは2、3軒。照明だけは灯されている(新長田のアジア横丁商店街)

たこ焼き屋さんであれ、蒲鉾屋さんであれ、スーパーや花屋さん、もちろんいれば語り部さんたちとも関わってくるでしょう。21年前、自分が関わった人の多くの方はすでに鬼籍に入られてていたり、遠方に転居されていたりしますが、その場所を再訪することで、20年の時間のカサブタを剥がす手がかりが発見できると信じています。

人数・スケジュールと予算

【人数】
同行者は残念ながら今回はなし。一人旅です。その分、もっとも学んでほしい息子への連絡は電話やメールのみならず、記事を通しても密にとっていきたいと考えています。いつか、一緒に行ける日のために。

【日程と交通費】
2016年3月中旬を予定しています。

3月14日(月曜日)
三島 → 新神戸(新幹線):12,570円
三宮・元町・神戸市役所周辺を歩く
市内移動交通費:(approx.)2,000円
※レンタル自転車Kobelinの利用も検討します(登録当日は終日500円。ただし翌日からは1,000円。交通カードの登録が必要)
兵庫県近美入館料:510円

3月15日(火曜日)
市内移動交通費:(approx.)2,000円
新長田を中心に町を探索します。

3月16日(水曜日)
西宮・灘・西灘周辺を歩く
市内移動交通費:(approx.)3,000円
21年前、美術記者として被災した美術館を取材して歩いた軌跡を再現します。
西宮市大谷記念美術館入館料:500円
白鶴美術館入館料:800円
エンバ中国近代美術館入館料:800円

3月17日(木曜日)
市内移動交通費:(approx.)2,000円
新長田を中心に町を探索します。

3月18日(金曜日)
市内移動交通費:(approx.)2,000円
新長田を中心に町を探索します。
新神戸→三島(新幹線);12,570円

【食費】
1日目(昼・夜合計):
3,000円
小計:3,000円
2日目以降(朝・昼・夜合計):
5,000円×4日
小計:20,000円
(神戸の今を探索するためのお茶代、おしゃべりの際のコーヒー代、たこ焼き、明石焼、お好み焼き、焼きそば、大福、南京町の豚まん、蒲鉾屋さんのハモ天などなどの所用経費を含める)

【宿泊費】
神戸ルミナスホテル(4泊分)32,000円

【おこづかい】
10,000円

【経費合計】
103,750円

新長田駅ちかく、若松公園の「鉄人28号」。彼が闘っている相手は誰なのでしょう?
新長田駅ちかく、若松公園の「鉄人28号」。彼が闘っている相手は誰なのでしょう?

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以上です。しっかり学び、考え、思い出し、こころに刻んでまいります。

最終更新:

コメント(2

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  • J

    jp21fukkou

    いってらっしゃい!

    そりゃ、そうですよね。。
    21年後の神戸。しっかりと伝えていきましょう。

    • I

      iRyota25

      ありがとうございます。時間をかけてじっくり町の記憶を探してきます。