静岡と神奈川の県境に位置する金時山は、童話「金太郎」の舞台になったという山である。富士山の絶好の展望ポイントとしても知られており、小さな子供から年配の方まで、年間を通して多くの人が訪れる人気の山である。
以前、友人がSNSに載せた金時山頂上から撮影した富士山の写真を見て以来、登りに行こうと温めていた山である。11月上旬、富士山に雲がかかることが少なくなってきたこともあり、箱根の秀峰・金時山を登ってきた。
金時山登山レポート
金時山の標高は1,212メートル。箱根外輪山の最高峰である。山頂へのルートはいくつもあるが、大きく分けると神奈川県の南足柄市、箱根町、静岡県の御殿場市方面からの登り口がある。
今回のルートは箱根町の金時登山口を出発して山頂に登り、乙女口に下山するコースである。
自宅アパートを出発して金時神社を目指す。神社の入口付近には、乗用車を10台ほど停めることができる駐車場がある。そのほか有料ではあるものの、近くにパーキングがいくつか点在している。
当初の予定では金時神社の登山口から登り始めることを考えていた。しかし、向かっている途中、ササに覆われた矢倉沢峠が見えた。とても気持ち良さそうな稜線で、無性に歩いてみたくなった。そこで、峠を経由することになる金時登山口から登ることにする。
金時神社近くの駐車場に車を停め、国道138号線を南東方面に歩く。10分ほど行った所にあるコンビニの横に細い脇道がある。入り口には金時山ハイキングコースを示す標識が立てられており、この小道を入る。
脇道に入って、舗装道路を歩くこと10分弱。登山口が見えてくる。
登山口からは未舗装の道になるものの、歩きやすく、はっきりとしているので迷う恐れはまずないと思う。
登山口から20~30分ほど登ると矢倉沢峠にでる。
峠には茶屋がある。トイレが設置されているほか、こんにゃくの味噌田楽などといった軽食も販売している。
茶屋からは、金時山へと続く気持ちのよいササの稜線が見える。
ササの原っぱを切り開いた登山道を登って行く。
後ろを振り返ると、強羅地区が眼下に見える。
茶屋から10分ほど登ったころだろうか。開けた場所があらわれる。展望が素晴らしい上に座わり心地の良い石もあり、ひと休憩するのに最適である。
休憩ポイントからは箱根山や仙石原地区を見渡すことができる。
矢倉沢峠の方を見ると、火打石岳や明神ヶ岳へと続く登山道が見える。緑の絨毯にくっきりとした1本の線。見ていると思わず歩きたくなってしまう。時間と体力が許せば、明神ヶ岳からの縦走も魅力的である。
紅葉を期待していたものの、登山道沿いにある樹木の葉は落ちているのものが多かった。しかし、枯れ木の山も風情があっていい。
標高を上げるにつれ、金時山の頂上が近くなってくる。
矢倉沢峠から20分ほど登った地点で、金時神社からの登山道と合流する。
登山道の合流地点から歩くこと約20分。金時山の頂上に。
山頂に到着!
看板の手前に写っているのは金太郎にちなんだ「まさかり」。どうやらこれを持って写真撮影をするのがおきまりのようで、多くの登山者が大きなオノを持って様々なポーズで写真を撮っていた。時には待ち行列ができるほどの人気。
山頂は広く、数十人が休憩できるスペースがある。しかし、登山者の数も多いために混雑している。
天気が良ければ大きな富士山を見ることができる。この日は雲がかかっていることが多かったが、ときおり均整のとれた美しい姿を見せてくれた。
ズームで撮影。前日に降った雪でうっすらと白くなっている。
山頂付近の山々は色づいているようにも見えたが、紅葉を楽しむには少し遅かったかもしれない。
山頂には茶屋が2軒あり、食事を取ることもできる。後から知ったのだが、このうち1軒には13歳の時から60年以上も働き続けているという「金時娘」がいることで有名らしい。またもう一軒は「まさカリーうどん」なるものが名物で、人気とのことである。
金時山と言えば富士山の眺望が有名であるが、決してそれだけではない。
南に目をやれば、箱根山や仙石原を一望できる。写真手前に広がるのが仙石原で、左奥にあるのが箱根山。そして、中央奥にちらっと見えるのが芦ノ湖である。
仙石原の人気スポット、ススキの草原も見える。
東に目をやると、足柄上郡や秦野市、さらに遠くには横浜と思われる高層ビル群も小さく見えた。
山や街だけでなく、駿河湾も見ることができる。
山頂で昼食を取り、1時間ほど眺望を楽しむと、長尾山・乙女峠方面へ下山を開始する。
頂上から乙女峠の区間は稜線歩きとなる。
長尾山への途中には、箱根山を一望できる絶景ポイントがある。
ちょっと遅かった感も否めないものの、一部では木々の色付きをみることができた。
金時山から30分ほど歩くと長尾山の山頂に着く。広く平坦な頂上である。
長尾山から10分ほど下ると乙女峠。
ちなみに峠の名の由来について、説明板が設置されていた。それによると、昔、仙石原に住む娘が父親の病気を治すために地蔵堂へ毎日参拝していたそうである。娘は通い続け、ついに満願の日を迎えたという。その日、父の病気は治ったものの、彼女は途中、雪に埋もれて命を落としてしまった。以来、彼女の霊を哀れみ、乙女峠と呼んでいるそうである。
乙女峠には木のベンチとイスがある。峠から乙女口の登山口の間は下り坂が続くので、怪我の予防のためにひと休みしてから下り始めるといいかもしれない。登ってきた際には一息つくのに良い場所になる。
峠からは森の中の登山道をひたすら下る。
乙女峠から下ること30~40分。乙女口へと出る。ここから金時神社の駐車場までは、国道138号線を歩いて15分ほどの距離である。
金時山の魅力について
金時山の魅力は多く人が言うように山頂からの展望にあると思う。広大な裾野を手前に、均整の取れたなだらかな富士がドンと鎮座している姿は見ているだけで心が洗われるようである。そのほかにも「箱根山と仙石原」、「カルデラ地形」、「駿河湾」なども一見の価値がある。このような素晴らしい眺望を1~2時間ほど登れば見ることができる金時山に魅力を感じる。
頂上からの景色の良さが有名であるものの、少なくとも今回登ったルートに関して言えば、気持ちの良い道で登っている途中も楽しむことができた。金時山は山頂、登山道ともに噂通りの絶景を楽しむことができる山であった。
金時山
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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