気温が下がり、過ごしやすくなる秋はトレッキングなどアウトドアでの活動に適した季節です。そこで、森や山など、陸上にいる危険な生物について、数回に分けてご紹介していきます。2回目の今日は「クマ」です。
日本に生息するクマについて
世界には8種類のクマがおり、そのうち日本に生息しているのは「ヒグマ」と「ツキノワグマ」の2種です。
ヒグマは北海道の森林に生息しています。毛の色は茶が多いのですが、なかには黒い毛のヒグマもいます。日本で最も大きい哺乳類であり、体長は220~230cm、体重は150~250kgにもなります。
雑食性で木の実などの植物のほか、サケなどの魚や鹿なども食べます。肉食のイメージが強いかもしれませんが、北海道の開発が本格化した明治以降に植物などを食べる割合が増えたともいいます。
ツキノワグマは本州及び四国に生息しています。主にブナやミズナラといった落葉広葉樹林にいます。50年ほど前までは九州にもいたそうですが、現在は存在が確認されていません。体長は110~150cm、体重は80~120kgほどです。
植物を主とした雑食性で、黒い毛を持ち、首の周りに首飾りのように白い毛が生えているのが特徴です。本州、四国で聞くクマ被害はツキノワグマになります。
年によって異なりますが、クマに襲われる人は年間数十人、多い年には100人以上もおり、死亡事故もあります。北海道の約55%、本州の約45%の地域に生息していて、毎年夏から秋にかけて被害や目撃情報が多く寄せられます。
地元の静岡でも山に登りに行くと目撃があったことを知らせる注意書きを見かけます。先月下旬、山梨県で登山をした際には、下山して登山口に降りてくるとクマが目撃されたという話も聞きました。
まれではあるものの、山里に降りてくるケースもあるのでクマの基本的な習性などを知っておき、万が一に備えておいた方がいいと思います。
クマと遭遇しないために
クマは基本、人間を避けようとします。襲われるのは人の存在に気付かずに至近距離でばったり遭遇してしまったケースがほとんどと言われています。
そのため、クマと出会わないようにするには、十分に離れた距離で人間の存在を気付かせたり、クマを引き寄せる食べ物などをむやみに放置しないことなどが重要になります。
クマが持っている感覚器官は、視力があまり良くない代わりに嗅覚と聴覚が優れています。特に嗅覚は犬の数倍あるとも言われています。つい先日も福島県で車内に置いてあったオレンジジュースのペットボトルを狙ったと思われるひっかき傷が車にあったそうです。
そのため、人間の存在を知らせるには音やにおいが効果的です。クマ除けでよく利用されているものとして、登山者などが使っている「クマ鈴」があります。ザックなどにつけ、歩行中に出る鈴の音で人の存在を知らせるものです。その他にラジオをつけながら移動するのも同様の効果があると考えられています。
また、クマとばったり遭遇してしまう可能性が高いケースや場所もあります。例えば、悪天候時などは気づかれるのが遅くなりますし、人間が山の尾根をはさんで反対側にいる時や風下にいる時、川や沢の近くにいて音がかき消される時などは、気づかれずにいきなり出会ってしまう危険性が高まります。そのほかにも、山のピークとピークの間にある低くなった稜線上はクマの通り道になることが多いです。
クマを引き寄せるものとしては、食品や食べた後のゴミなどがあります。人間が美味しいと思うものはクマも同様に感じるようですが、思いもよらないものも好みます。
それは、ガソリンやオイルなどです。そのため、森や山里でのキャンプなどにおいて、ホワイトガソリンを燃料とするランタンや調理用バーナーなどを使用する時には、燃料がクマを引き寄せる可能性もあることを頭の片隅に入れておいた方がいいと思います。
また、あらかじめクマの糞や足跡などを調べておき、野山で見つけた時には引き返す(※足跡が向かっているのと反対方向へ)ようにします。
クマは秋になると冬ごもりに備えて木の実を多く食べます。クマによる被害件数は年によって大きく異なりますが、これはドングリなどの木の実のできに左右され、不作の年には多くなる傾向があります。あまり実が生らなかった年は、被害が10月に突出していますので、特に気を付けた方がいいと思います。また、明け方や夕方はクマが活発的に行動する時間帯です。
クマに出会ってしまった時の対応
万が一、クマに遭遇してしまった時の対応方法について、環境省が「クマ類出没対応マニュアル 」を公表しているのでご紹介します。
クマに遭遇した時の対応はクマとの距離により次の3つの行動パターンが推奨されています。
○遠くにクマがいた場合
もし、クマが人間の存在に気付いていないようでしたら、音などを出して存在を知らせ、様子を見ながらその場を立ち去ります。急な大声や動きはしないようにします。
○近くでクマに出会った場合
クマを見ながら静かに語りかけ、ゆっくり後退して距離を取るようにします。クマは逃げるものを追いかける傾向があるために背中を見せないようにします。
ザックなどの持ち物がある場合は置いて逃げるとクマがそれに気を取られることもあります。持っている食糧を捨てて関心を引かせ、逃げることができたという話を以前、聞いたことがあります。
○至近距離で突発的に遭遇にした場合
至近距離でばったり出会ってしまった場合は襲われる可能性が高くなります。クマの攻撃方法は鋭い爪を持った腕で払いのける、つかみかかる、抱え込む、噛みつくなどがあり、顔や頭を狙われることが多いそうです。
ただし、ツキノワグマの場合は一撃を加えた後に逃げるケースも多いとのことで、顔や頭部を両腕で覆って地面に伏せ、致命傷を避けるようにすることが推奨されています。
クマに対してこちらから攻撃するのは、クマ類出没対応マニュアルでは積極的な反撃を勧めていません。これは、遭遇条件、個人の反撃能力には差があり、場合によってはクマの攻撃性を高めて被害を大きくする可能性もあるからとのことです。
ちなみにツキノワグマに反撃して退けたという話は少ないながらも聞いたことがありますが、体の大きいヒグマに対しては、クマ撃退用スプレーの使用などを別にすれば、耳にしたことがありません。
クマは時速40km以上で走ることができるほか、木にも登れますし、泳ぐこともできるため、走って逃げるのは不可能と考えておいた方が良さそうです。
<「陸に生息する危険生物 Vol.3 ~ヘビ~」 へ続く>
参考WEBサイト
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紹介:sKenji
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