先日、北海道でスズメバチに襲われて人が亡くなる事故がありました。厚生労働省の人口動態調査によると、全国で年間20人前後の方がハチ類に刺されて死亡しているそうです。
秋は涼しくなり活動しやすくなる季節ですが、スズメバチやクマなどの危険生物による被害が増える時期でもあります。そこで、陸上に生息する危険生物について、数回にわけて紹介していきたいと思います。初回の今日は「スズメバチ」です。
スズメバチについて
スズメバチはスズメバチ科の昆虫の総称で、現在、日本には16種のスズメバチが生息していると言われています。おとなしい性格で人を襲う危険性が低いものがいる一方、攻撃的でテリトリーに近づくだけで襲ってくるものもいます。
日本にいるスズメバチのなかで最も大きく、そして攻撃性が強いために危険なのが、世界最強の蜂とも言われるオオスズメバチです。体長は女王バチの大きいものでは5cmほど、働きバチでも3~4cmにもなります。北海道から九州まで幅広く生息しています。
被害件数が最も多いのはキイロスズメバチです。オオスズメバチと同様に攻撃性が強い上に、人間の生活環境の近い場所に巣を作ることもあって、多くの方が被害にあっています。体長は女王バチで3cm弱、働きバチで2~2.5cmほどです。日本全土に生息しています。
スズメバチには卵を産む「女王バチ」、メスではあるものの産卵能力がない「働きバチ」、そして「オスバチ」がいます。越冬できるのは女王バチだけで、働きバチとオスバチの寿命は1年です。
ハチの毒針は卵を産む産卵管が変化したものであり、人を刺すのはメスである女王バチと働きバチだけで、オスバチが刺すことはありません。
また、ミツバチは毒針に返しがあるため、針を一度刺すと抜くことができず(※)に死んでしまいますが、スズメバチの毒針には返しがなく、何回も刺すことが可能です。
夏の後半から晩秋にかけては新しい女王バチやオスバチが生まれる季節で、敏感になっているために特に注意が必要です。
(※刺したミツバチは針をちぎって飛んでいきますが、この時に臓器の一部も失うためにすぐに死んでしまうそうです)
スズメバチに刺されないために
スズメバチに刺されないようにするには、巣に近づかないようにし、見かけても手出しをしないようにします。手や物で急に払いのけるような動作は、人間にはその意思がなくても、ハチには攻撃とみなされる可能性があるので注意が必要です。
スズメバチを頻繁に見かけるような場所では、近くに巣がある可能性が高いです。オオスズメバチは地中や木の根元付近の洞に、キイロスズメバチは樹木や家屋などの人の手が届かない高さに好んで巣を作ります。
スズメバチが一匹でゆっくりと飛んでいる時はエサを探しているケースが多いようですが、付近を飛び回ったり、「カチカチ」という警告音を発している時は、攻撃前の偵察や警告の可能性が高いので、すみやかにその場を離れるようにします。警告音については、実際に録音されたものが九州大学大学院の上野高敏准教授のWEBサイトにあります。
逃げる時は、あせらずに普段歩くのと同じくらいの速さで後ろに下がりながら離れるようにします。スズメバチが追いかけてくる距離は種によって異なるものの、だいたい10~50m程度と言われています。
スズメバチは黒などの暗い色を攻撃する習性があるために、服装は明るい色のものが良いと言われています。また、頭髪を隠すために帽子もあったほうがいいと思います。
ただし、色についてはコントラストの強いものを攻撃するという説もあり、夜になると逆に白など、明るい服装に刺激されるともいいます。
さらに色だけでなく匂いにも注意が必要です。果物やジュース、香りの強い香水などはスズメバチを引きよせたり、興奮させたりします。
ちなみに毒は刺した時だけでなく空中で噴射することもあります。噴射された毒には仲間を呼び寄せるにおい物質が含まれている上に、もし、目に入ってしまうと失明する恐れもあるそうです。
刺された時の症状と応急処置
スズメバチに刺されると激しい痛みとともに赤く腫れ上がります。その他に息苦しさ、頭痛、嘔吐、めまいを伴うこともあります。さらに症状が重いケースではけいれんや意識を失ったり、最悪に死に至ることもあります。
一度ハチに刺されている方は特に危険で、アナフィラキシーショックと呼ばれる呼吸困難や血圧低下などのショック症状が出ることがあります。症状は刺されてから数分~十数分であらわれます。
万が一、刺されてしまった時は巣が近くにある場合はまず最初に安全な場所まで離れます。
そして、傷口を流水で洗い流し、手で毒液を絞り出します。口で吸い出すのは口内に傷があると危険なために行わないようにします。毒の吸出しは、ポイズンリムーバーなど吸い出す器具も市販されている(※結構な吸引力があります)ので、携帯しておくのもいいと思います。
抗ヒスタミン軟膏やステロイド軟膏などの薬があれば塗り、傷口を濡れたタオルなどで冷やします。ちなみにアンモニアなどは効果がないそうです。
応急処置を施した後は速やかに病院へ行きます。
自宅でも注意が必要です!
スズメバチに刺される危険性があるのは、山や森のなかだけとは限りません。
3年ほど前ですが、自宅の軒下にスズメバチが巣を作ったことがありました。発見する前によく見かけるなあと思っていたら巣を作っていました。
家のまわりで頻繁に見かける場合には巣の存在も疑って、特に注意をして見ておいた方がいいと思います。巣は取り除く場合は危険ですので専門業者に頼みます。
スズメバチは最も危険な陸上生物のひとつです。例年11月くらいまでは被害が多いので注意が必要です。
<「陸に生息する危険生物 Vol.2 ~クマ~」 へ続く>
参考WEBサイト
紹介:sKenji
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