9月23日のNHK「NEWS WEB」が伝えました。
札幌市内の公園でヒグマの足跡などが見つかり、来場者が緊急避難したとのこと。
ニュースはこちら。
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自然公園にヒグマの足跡 臨時閉鎖に
9月23日 18時9分
3連休の最終日の23日、家族連れなどでにぎわっていた札幌市郊外の自然公園で、ヒグマの足跡が見つかり、公園は急きょ臨時閉鎖となり、多くの来場者が避難しました。
公園は、安全を確保するため、今月30日まで閉園することを決めました。
23日午後2時ごろ、札幌市南区にある自然公園「国営滝野すずらん丘陵公園」で、敷地内を巡回していた職員が、山沿いに設けられた通路の近くでヒグマのものとみられる足跡やふんを見つけました。
公園を管理する事務所では、近くにヒグマがいる可能性があるとして、公園を急きょ臨時閉鎖し、訪れていた人たちに避難を呼びかけました。
この公園はキャンプ場のほか宿泊施設なども備えた大規模な自然公園で、3連休最終日の23日は家族連れや若者のグループなどおよそ6000人が訪れ、にぎわっていたというこです。
このため公園では臨時閉鎖が知らされると、駐車場から出ようとする車などで一時混み合ったものの、大きな混乱はなかったということです。
公園では、足跡の確認を進めた結果、ヒグマのものと確認し、安全を確保するため、今月30日まで閉園することを決めました。
部活動の仲間と一緒に訪れていた女子大学生は、「クマが出たと聞いてびっくりしました。身近な場所なので怖いですね」と話していました。
滝野すずらん丘陵公園は札幌市の南にある自然豊かな公園。地下鉄真駒内駅からバスで30分ちょっとの距離にあり、サイクリングやハイキング、キャンプやスキーなど四季を通じて楽しめる札幌市民の憩いの場所(冬のクロスカントリースキーやチュービングは、北海道外からの観光客にも人気)。
そんな身近な自然公園でクマの足跡や糞が見つかったのだ。それも世界最強といわれるヒグマだ!
夏の天気とクマ出没
近年では山の環境が変化したのが原因か、クマと人の遭遇事件や、クマによる人的被害(死傷事件)が毎年のように伝えられる。しかし、本来人里離れた山奥に暮らすクマと人間が遭遇し、事件にまで発展する件数は年によって大きな変動がある。
最近では2010年、2006年、2004年にクマ関連の事件が多発した。
2010年には147人の被害者があり、そのうち2人が命を落としている。
2006年には145人が負傷し、うち3人が死亡。
2004年は109人の負傷者、うち2人の死者を出した。
(日本クマネットワークの資料より)
これらの年の共通項――。
それは夏が猛暑だったということだ。
2010年は「観測史上最も暑い夏」と呼ばれた。気象庁が異常気象として認定したほどの暑い夏、全国各地で最高気温のレコードが更新され、8月の平均気温を2.0℃も上回るという驚異的な気候だった。
7月には記録的豪雨、8月に入ると一転して記録的猛暑に襲われたのが2006年。たとえば大阪市では最高気温の月平均が35.0℃! 猛暑の原因は「偏西風の蛇行」のせいだと言われている。(おぉ、今年の猛暑も蛇行した偏西風のせいにされていた!)
2004年は、東京都心で39.5℃、甲府市で40.4℃という、人間の体温を超える最高気温が連続して記録された年。甲府市で40.4℃は当時の観測史上1位だった。
夏が暑いと里に下りてくるクマが増えるという確かな因果関係があるわけではない。
しかし、クマの被害が多い年には、山の中のドングリ(ブナやミズナラなどの実は冬眠を控えたクマの重要な食料といわれている)が不作になるという報告がある。環境省や前出の日本クマネットワークの発表がソースの報道でご存知の方も多いかもしれない。
困ったことに、夏が暑いとドングリの実りが減るという説があるのだ。
2010年のクマ出没事故多発時には、夏の暑さでドングリの木が枯れたり、みのる前に実が落ちてしまったりして山にはクマの食べ物が乏しくなった。クマが人間界に下りてくるのはそのせいだろうとの指摘もあった。
猛暑だった今年。クマ出没に要注意!
さて。数字としての記録では2010年に及ばないものの、
体感的な暑さとしては2010年に比肩する酷暑だった今年2013年。
例年にないような猛暑と局地的に激しい降雨によって、山の環境も荒れているだろう。
休日に6000人もが訪れる滝野すずらん丘陵公園のような場所で、クマの生活痕が見つかったのである。それと同様に、各地でクマが人間の生活圏に急接近している可能性は決して低いものではないだろう。
ヒグマに比べれば小型だし、くまもん人気もあってかわいいイメージが膨張しているツキノワグマでも、大型の個体になると体長180㎝、体重150㎏。下手に驚かせたりすると、強力なツメとキバで反撃してくる危険な生物だ。いわんやヒグマときたら、地上最強の格闘獣とも称される存在。大きな体の割に敏捷で、走れば時速50kmという話もある。
生身の人間が対抗できる相手ではない。
弱点、らしきものがあるとすれば、
下り坂が苦手だということ。
前足に比べて後足が長いので、斜面などを登るのは超人的(!)に素早いけれど、
逆に下りでは足がもつれて転がり落ちてしまうことがあるのだとか。
秋田の阿仁マタギの誰かの話として読んだ記憶がある。
うーん。とはいえ、ほかの能力の卓越具合を考えると、大した弱点とはいえないか。
ふつうの人間にできることは、クマに遭遇しないようにすることに尽きる。
山歩きをする時には、ラジオや鈴など自然界に存在しない音を出す。
念のためにクマよけスプレーを持ち歩く(唐辛子成分のスプレーだ)。
早朝と夕暮れに遭遇することが多いので、そのような時間帯の行動は避ける。
沢沿いや窪地などを移動することが多いというから、そのような場所を避ける。
これから秋のアウトドアが楽しくなる季節。
ハイキングやキノコ狩り、バードウォッチングやキャンプなど、
屋外で活動する時には、ご近所の信頼できる筋からクマ情報を入手して、ご注意を!
岩手県と福島県は全国的に見てもクマ被害が多い土地です。ボランティア活動などで山に入る時にも、くれぐれも十二分な準備とご用心を!
国営滝野すずらん丘陵公園
山の中といえばそれまでですが、航空写真で見ると意外なほど街に近い場所です。ご用心! ご用心!
追記(2013年9月25日)
記事をアップしたその日、クマ出没のニュースが報じられました。
NHKの「NEWS WEB」によると、函館市東部の女那川町(めながわちょう)で、ヤマブドウを取りに山に入った男性が、2頭のヒグマに遭遇、頭を噛まれるなどのけがをしたとのこと。
ニュース記事はこちら。
(タイトル)
函館 ヒグマに頭かまれ男性けが
9月24日 19時34分
24日午前、北海道函館市の山林で、ヤマブドウを採りに出かけていた62歳の男性がヒグマに襲われ、頭をかまれるなどしてけがをし、病院で手当てを受けています。
24日午前9時半ごろ、函館市女那川町の山林で、近くに住む62歳の男性が、親子とみられる2頭のヒグマに遭遇し、このうち親グマとみられる1頭に襲われました。
男性は頭をかまれたほか、肩や足を爪でひっかかれましたが、頭を低くしてヒグマのあごを片手で押し上げ、反対の手で持っていた枝切りばさみで熊の腹部を突き、追い払ったということです。
男性はその後、自分で車を運転して自宅まで戻り、病院で手当てを受けているということで、意識ははっきりしているということです。
警察によりますと、現場は国道から6~7キロほど山に入ったところで、男性はヤマブドウを採りに出かけていたということで、函館市では防災無線で周辺の住民に注意を呼びかけています。
北海道では、23日も札幌市郊外の自然公園でヒグマの足跡が見つかり、今月いっぱい臨時休園する措置が取られています。
「ヒグマのあごを片手で押し上げ、反対の手で持っていた枝切りばさみで熊の腹部を突き、追い払った」!!!
まさに奇跡的。間違っても、クマは追い払えるなどと甘く考えないでください。
怪我をされた方の回復を祈ります。
●TEXT:井上良太(ライター)
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