山登りのススメ Vol.20 ~神津島・天上山~

sKenji

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天上山(※登山をした日の翌日に撮影)
天上山(※登山をした日の翌日に撮影)

今月19日、東京都神津島村にある天上山に登ってきた。あいにくの天気ではあったものの、日本アルプスを思わせるよう光景など、天上山はいくつもの魅力を持った山であった。

天上山について

天上山は伊豆七島のひとつ神津島の最高峰である。神津島は東京から南に約180kmの所にあり、島の周囲は約22km。年間降水量が2,500~3,000mmと多く、水が豊富なために多くの植物が生育している。

山の標高は572m。838年、大規模な噴火によって生成された火山であり、全国に47ある常時観測火山のひとつである。

天上山は一年を通して花を楽しむことができ、「花の百名山」にも選ばれている。標高600mにも満たない低山ではあるものの、火山特有の土壌や強風が吹きつけるために山頂付近には高い樹木が生えておらず、さながら森林限界線を越えた北、南アルプスような光景が広がっている。広くなだらなか山頂には、池や表砂漠、裏砂漠と呼ばれる荒涼とした地帯が点在している。

山頂への登り口は黒島登山口と白島登山口の2ヶ所。十合目までの標高差が約300m~350mほどとそれほどないことから、多くの人が楽しむことのできる山である。

 神津島探勝ウォーキングMAP
vill.kouzushima.tokyo.jp  
 天上山頂上詳細ガイドMAP
vill.kouzushima.tokyo.jp  

今回、私は黒島登山口から登り始め、山頂に点在する池や砂地地帯を巡ったのち、白島登山口に下山した。

天上山登山レポート

海から出発し、黒島登山口を目指す。天上山の頂上付近は厚い雲に覆われている。雨が降っていないことを祈りつつ、登山口に向かう。

登山口までは舗装された道路を歩く。途中、登山道がある山腹が見える。急な斜面ではあるものの、山道はつづら折りに造られているので、見た目ほどの傾斜のきつさはなさそうだ。

黒島登山口に到着。入口には登山届を記入するノートや無料で借用できる木製の杖などが置かれている。山登りの届け出をして出発。登山口の標高はおよそ185m。

黒島登山道は登り始めから眼下に神津島の集落や海を見ることができ、気持ちのいいルートである。

わずか200mほどの標高にも関わらず、生えている草木の背丈は低く、森林限界線の上にいるかのような錯覚を覚える。天上山が持つ魅力に登山開始早々、驚いてしまう。

7合目あたりから、徐々にガス(※薄い雲)は濃くなってきたものの、これはこれで幻想的であった。

ガイドマップのコースタイムでは、登山口から歩き始めておよそ50分ほどで10合目の黒島山頂に着く。

登っている途中も風は強かったが、頂に出るとさらに強さが増し、場所によっては時々体がよろめくほどであった。

近くにある「黒島展望山」に登ってみたものの、視界は悪かった。晴れていれば広大な太平洋が見えるという。

展望山を後にすると、火口跡に雨水が溜まってできたという千代池へ。

渇水時には干上がるという池もこの日は少ないながらも水を湛えていた。霧が神秘的なムードを演出している。

池での雰囲気をしばらく楽しむと、裏砂漠と呼ばれる砂地地帯へ向かった。

ガイドマップの解説によると、「月のような世界が広がっている」とのことである。しかし、ガスでその全貌を見ることはできないので、自分勝手に広大な砂漠地帯を霧の先に夢想していた。イメージを膨らませ、あれこれ想像するもの悪くなかった。

裏砂漠には登山道を示す石が両脇に並べられている。この日のように視界が悪いときには特にありがたさを感じる。

ガスの一部が晴れて断崖と海が現れる。撮影のタイミングが遅れたために、写真では眺望がいまひとつに見えてしまう・・・
ガスの一部が晴れて断崖と海が現れる。撮影のタイミングが遅れたために、写真では眺望がいまひとつに見えてしまう・・・

昼食は太平洋や三宅島などを一望することができる裏砂漠展望地でとった。

この日、山頂付近は一日じゅう雲がかかっていたものの、お昼を食べている時に一瞬だけ、その一部が晴れて眼下に広がる断崖と大海原の絶景を見ることができた。

ほんのわずかな時間ではあったが、天上山のダイナミックな地形と見事な眺望に息を呑むと同時に山が持つ魅力の多様さを実感する。

お昼を食べ終わると天上山で最も大きいと言われる不動池へ。

池には龍神が祀られているという小さな中洲がある。霧と中洲、そして池の周りにあるコケが作りだす光景は今回の登山で一番幻想的なものであった。

不動池の後は、表砂漠を経由していよいよ最高地点へ。

展望は全くなかったけれども、それでも頂上に立った時の達成感は格別である。たとえ低い山であっても、山容や風景が素晴らしい山ならば、高峰に勝るとも劣らない充実感がある。

頂を踏むと白島下山口へ向かい、山を下り始める。

同じ山、しかもほぼ同程度の標高にあるにも関わらず、天上山の2つの登山道の趣は全く異なるものであった。

黒島登山口からのルートが急斜面に作られ、眺望の開けた開放的なものであるのに対し、白島登山口からのルートは比較的なだらかで、うっそうとした林の中の道である。

眺望を良さや日本アルプスの森林限界線の上のような風景が好きな方には、黒島登山ルートがおすすめである。

下山口から1時間ほど歩くと白島登山口にたどり着き、登山は終了。

天上山は大海原とダイナミックな地形を一望できたり、砂漠と呼ばれる荒涼としたエリアや池が点在するなど、その魅力は個性的で変化に富んでいることにびっくりする。

そして何より、児童から大人まで多くの人が日本アルプスにも劣らないような風景を比較的容易に楽しむことができることに驚嘆せずにはいられなかった。

離島であるために本州から登山口までのアクセスは大変ではある。しかし、それを差し引いても、登る価値が天上山にはあり、登山経験の長さに関わらず、全ての人が来てよかった、また登りたいと思ってしまう山だと思う。

誰でも日帰りで登れる山であることから、特に小さなお子さんや登山を始めてみたいと考えている方におすすめしたい名峰である。

神津島の島名は、伊豆の島々を作る際、神々が集って相談した島であったという言い伝えに由来するという。天上山の最高地点の近くには、伊豆七島の神々が集まり島の豊かな水の分配について話し合ったと言われる場所もある。

一瞬晴れた時に見えた眺望、霧の中の幻想的な池や砂漠などを目の当たりにすると、これらの伝説が生まれたのもわかるような気がしてしまう。神津島の最高峰はその名の通り天の上にある庭園のような場所であった。

今回は霧のかかった幻想的な光景であったが、次は晴れ上がった眺望を楽しみにこの山に登りたいと思う。

天上山

なだらなか山頂の登山道
なだらなか山頂の登山道
裏砂漠
裏砂漠
サクユリ
サクユリ
ノアザミ
ノアザミ
ネジバナ
ネジバナ
オオシマツツジ
オオシマツツジ
ガクアジサイ
ガクアジサイ
テチハノイバラ
テチハノイバラ
瑞々しく鮮やかなコケの緑が目に染み込んでくるようであった
瑞々しく鮮やかなコケの緑が目に染み込んでくるようであった

参考WEBサイト

 神津島村役場オフィシャルサイト
vill.kouzushima.tokyo.jp  
 神津島について(概要) | 神津島村役場オフィシャルサイト
vill.kouzushima.tokyo.jp  

Text & Photo:sKenji

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