先日、静岡県三島市の自宅から車で15分ほどの所にある海沿いの地区へ行った。その際、たまたまその地区に住んでいる方と少し話をする機会があった。
話をしたのは50代後半から60代前半くらいの女性で、近くでミカンなどを作っている方だった。最初はミカン栽培についての話をしていたものの、兼業農家であるために時間が限られ、畑の維持管理が十分にできない。そのため一部を近所の人に貸しているという話を端に、地区では農業の担い手や子供が減少し、お年寄りが増えている話に変わった。
話をしていた女性はその地区で生まれ育ったものの、結婚をして地元を離れていたそうである。しかし、実の親が亡くなったことがきっかけとなり、旦那さんと二人で実家に戻ってきたそうである。
女性から聞いた少子高齢化の話で驚いたことがあった。それは近所の学校が統合されたという話であった。
女性から聞いた話、そして後日調べたことによると、女性が住んでいる地区の周辺には以前、3つの小学校があった。しかし、3校は5年ほど前に1つに統合されている。役所の公式WEBサイトで公開されている資料によると、どうやら児童減少により2つの学年をひとつの学級にせざるを得ない状況になり、統合されたようである。
そして、1つになった小学校はその4年後、さらに中学校と統合されて「小中一貫学校」になったとのことであった。
少子化による小中一貫学校
私立の学校では昔から小中一貫校と呼ばれるものがあるのは知っていたものの、公立の小学校と中学校の統合は、離島など特別な地域を除いて聞いたことがなかった。
今回初めて知ったのだが、公立の小中一貫学校は、小学校から中学校に進学した際に学校生活の変化に適応できずに不登校が増える、いわゆる「中1ギャップ」の解消などの効果が期待されて、一部の学校で導入されているという。国は近い将来、小中一貫型の学校の制度化を目指しているそうである。
小中一貫学校は本来、「中一ギャップ」解消などの目的で導入とされるようである。しかし、地域では必ずしもそうとは言えず、少子化などの理由で統合されることもあるという。
ミカン農家の女性が住んでいる地区も児童及び生徒の減少により、小学校と中学校を統合している。
取り返しがつかなくなる前に
私が住んでいる場所のすぐ近くには田んぼが広がっており、少し行けば山もある。都市部でないことは間違いない。しかし、だからといってど田舎と言うほどの場所でもないと思っている。
これまで「複式学級」や「小学校と中学校の統合」は、離島や市街地から遠く離れた山奥などでの出来事だと思っていた。それだけに、自宅から近い地区で小中学校を統合せざるを得ない状況に陥っていたことは驚かずにはいられなかった。
若者や子供の減少が地域に与える影響は地域社会の維持という観点以外にも、昔から地域で受け継がれてきたお祭りなどの伝統行事が途絶えてしまう恐れがある。地域が持つ文化、慣習は、芸術や芸能などと同様に貴重な財産である。一度途切れた伝統を復活させるのはたやすいことではなく、場合によっては永遠に失われてしまう恐れもある。
少子化は国全体の流れではあるものの、地域の活力が減少することにより、人が三大都市圏に流れ、さらに地域の過疎化が進む悪循環が起こっている。
国は地方創生を掲げているが、国だけで根本的に解決できる問題ではない。取り返しがつかなくなる前に地域に目を向けたいと思う。
話をしていた女性が、
「もう子供を見かけなくなり、寂しくなった」
とつぶやいていたのが忘れられない。
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji
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