【火災防災】火災で最も怖いのは「炎」よりも「煙」

sKenji

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先日、火災予防について調べてみると、「煙」が考えていた以上に恐ろしいものであることを知りました。年によって異なりますが、火災の死亡原因の内訳をみると火傷と共に最も多いのが一酸化炭素中毒や窒息によるものです。

煙には一酸化炭素などの有毒なガスが含まれており、火災において最も怖いものは「煙」だとも言われています。そこで「火災の煙」に関することを調べてみました。

パニックを引き起こしやすい火災の煙

人は、火災で発生する煙によってパニック状態になりやすくなると言われています。「一般社団法人 日本照明工業会」のWEBサイトにある防災関連資料「生死を別ける避難の知恵」には、火災発生時の煙についての実験結果が記載されています。

実験は、煙を充満させた状態の廊下に入ってもらい、暗算に答えてもらうというものです。その結果によると、視界20mの極薄い煙の中でも一桁の足し算を間違える人がいるとのことです。正答率は煙の濃度が上がるに連れて下がり、視界が4~5mの状態では、ほとんどの人が正しく答えられなくなったそうです。

ちなみに火災警報器が煙を感知して警告音を発する際の視界が20m位と言われています。最も火事の勢いがある時には、実験時の20倍以上の煙濃度になると言われています。

心理的だけでなく身体的な影響もあります。火災時の煙によって、酸素不足や高熱状態になり、思考力や判断力が鈍くなると言われています。また煙に含まれる有害物質によって「目がチカチする」、「涙がでる」、「喉がひりひりする」などの症状がでて、冷静な判断能力の低下をまねきます。

通常の火災で発生する煙は、火災初期は白っぽく、時間が経つにつれて黒くなるそうです。逃げることができる可能性が高いのは初期の白い煙の時で、黒い煙に包まれてしまうと視界がほとんどなくなり、避難が大変難しくなるとのことです。

煙の速さと広がり方について

火災発生時の煙のスピードは横方向へは0.3m/s~1.0m/s、上方向へは3.0m/s~5.0m/sほどと言われています。水平方向へ移動する煙の速さは、人が歩く程度であり避難可能と言われています。しかし、上方向への煙からは逃げることができないと言われています。その例として、マンションでの火災について考えてみます。マンションの1階あたりの高さはだいたい3m前後と言われています。仮に10階建のマンションがあった場合、高さは30mになります。煙の上方向へスピードは遅くても1秒間あたり3mはあります。単純に考えると、1階で発生した煙がわずか10秒で最上階に達してしまうことになります。上方への煙の速さは駆け足程度と言われているものの、マンションの階段を1階から10階まで、10秒で駆け上がることはまず不可能に近いことかと思います。

一般的な煙の動きについて、京丹後市消防本部のWEBサイトなどに記載があります。それによると、熱せられて軽くなった煙はまず上昇し、天井までのぼると横に広がっていくそうです。煙が天井に溜まり、量が増えていくと今度は床の方へと下がってきます。廊下などを水平に広がる煙については、火元から遠ざかって冷えると下降してくるそうです。天井などに溜まっていた煙は、一斉に下降してくるとも言われているので注意が必要です。

煙からの避難について

火災発生時の避難について、先日のぽたるページにも書きました。

 【ぽたるページ】秋の全国火災予防運動が始まりました! ~後編・対処について~ - By sKenji - ぽたる
potaru.com

そのほかに煙から逃げる際のポイントなどを、京丹後市消防局のWEBサイトと「生死を別ける避難の知恵」からご紹介します。

まず最初に京丹後市消防局のWEBサイトに記載されていた避難のポイントとその補足事項です。

・煙で前が見えない場合は、壁に手を当て方向を確認しながら避難する。
・鼻から吸って口から吐くの呼吸を繰り返す。(※濃度の濃い有毒ガスを一気に吸うと意識を失う恐れがあるので、煙がある場所では静かに少しずつ息をした方がいいそうです)

次に「生死を別ける避難の知恵」からピックアップしたものです。

・避難経路はできるだけ非常口までの距離が短く、曲がる回数が少なく、床に段差のないのルートが良い。(※曲がる回数についての実験があります。それによると、足元しか見えない状態の迷路で歩行実験を行った際、3回曲がるとスタート地点に戻れる人は半数しかいなかったそうです。)
・非常口は防犯上の理由から鍵が掛かっている場合もあるので、鍵の開け方も確認しておいた方がいい。
・煙の中では決して走らない。走ると周りの煙を掻き乱すことになり、上も下も煙
の濃さが一様になり、視界が低下して避難経路がわからなくなる。

誘導灯は専用の電池が入っているために停電でも20分間は点灯するものの、煙の濃さによっては見えずらく(時に見えなく)なるそうです。

参考WEBサイト

 火災から身を守る(煙編)
www.city.kyotango.lg.jp  
 防災の知識 | JLMA 一般社団法人日本照明工業会
jlma.or.jp  
 生死を分ける避難の知恵
www.jlma.or.jp  

紹介:sKenji

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